第30話 終わりは突然に
ようやく30話かなと思いきや何やら嫌なタイトルですね......
ミュリエルはトレースに問いかける。
「何してるの妖術師。トレースはどこ」
「何言ってるのさ。トレースだよ」
「あきらめろ妖術師、ばれた以上抗うことは無意味だ」
トレース......いや、妖術師?は深く深呼吸をした。
「はぁ~何でばれたかな。完璧じゃなかった?」
「いつから入れ替わってた」
「入れ替わってたわけじゃないよ。体を乗っ取ったんだよ」
「いつから?」
「質問が多いようじゃないかい?無力の街を出るちょっと前だからだよ」
もうかなり前の話だ。寧ろ今まで気づかなかったのがおかしいぐらいだ。
「おいティグリス、妖術師のアビリティ言ってみなよ」
「......知らん」
「だろうね。NPCには妖術師のアビリティは教えられていない。この世界で重要な役割のNPCでさえ教えられていない職業だ。水の神、お前ならわかるでしょ?ミュリエル」
「一度だけ他人に乗り移れる。乗っ取った体は死んだあと自分の体に戻る」
「それって......」
要は今トレースを殺しても妖術師自体は消えずまた自分の体に戻るという仕組み。
「今すぐトレースから出ていけ。自分から戻ることも可能だろ」
「ああ、可能だよ。だけど断る」
その瞬間ティグリスはトレースの首元ギリギリに剣を当てた。
「さっさと出ていけ。本気で切れるぞ」
「NPCが切れるなんて面白そうだから見てみたいもんだな。ねぇ」
「なんだ。さっさと出ろ」
「遠い。あと少し首元に近かったら避けてたかもな。だっけ?」
トレースと会った時にティグリスが言った言葉だ。記憶すら妖術師は乗っ取っている。
ティグリスは切れてそのまま剣を振る。妖術師はナイフでその剣を止める。ティグリスのアビリティは発動しなかった。
「今は止めたけど次は受けるよ。ましてや自分の体ではないしね」
「なぜトレースの体を乗っ取ったの?」
イラついているティグリスを抑えてミュリエルが冷静に質問する。
「やっぱ気になるよね。まぁこちらにも雇い主がいるもんでね」
「だれ?」
「言うと思う?ただもう既に会ってるよ。ミュリエル、君はもうわかってるんじゃない?」
ミュリエルは勘だけはいい。ただその勘が当たって欲しくない時に限って特に当たる。
ティグリスは誰か考えていたがその答えはすぐに出た。なぜか。こちらに近づいてくる足音が聞こえた。
その人こそがその犯人だった。
「どうもティグリスとミュリエル。無力の街でお会いしたバレロッグです」
ミュリエルは勘が当たったような顔をしティグリスは今にでも暴走しそうな感じがしていた。
「悪魔よくやった。ここじゃ寒いだろ。場所移動しようか」
バレロッグが指を鳴らした瞬間どこかの部屋に飛ばされた。
「ここは?」
「ティグリスなら一度見たことあるんじゃないか?」
「......」
「黙秘を許した覚えはないぞ?ティグリス」
「てめえには一生会いたくなかったよ」
ティグリスはここがどこかそして誰なのか全てを理解したようだった。トレースももう既に分かっているようで何も分かっていないのはミュリエルだけだった。
「ティグリス教えてやれ。ここがどこで私が誰か」
「神の街の最上階創造神の居間。バレロッグってのはただの仮名だ」
それをきいたミュリエルはやけに平然としていた。もう少し驚くのかと思っていたがそうでもなかった。
「なぜ驚かない?ミュリエル、お前を作ったのは私だぞ?」
「そうだね。じゃあ聞かせてよ。なんで妖術師にトレースを乗っ取るように言ったのか」
「そんなことか。トレースこそがこの世界を作った王だからだよ。王の姿は私だけが知っているんだ」
「やっぱり王だったんだね。全く納得いかないけど......でもさ」
少し笑うミュリエルに一緒になりティグリスも笑いそうになる。
「まさかこんな簡単に神の街、しかも創造神の居間まで来れるとはね。どう?ティグリス」
「確かにそうだな。これでお前の目標が叶っただろトレース」
「本当にありがとうミュリエル。『幻影解除』」
するとミュリエルの姿が段々と溶けていき最終的にはトレースになりトレースだった方がミュリエルの姿になった。
「まさか成功するなんて思わなかったよね。早くミュリエルから出て行ってくれる妖術師」
すぐさま妖術師はミュリエルの体から出ていきミュリエルに意識が戻る。妖術師はすぐさま自分の体でこちらに戻ってくる。
そしてトレースはナイフを創造神に向けて質問した。
「最初はなんでこんな世界を作ったのって聞きたかったんだけど。今となっては自分がこの世界を作ったと聞いて微妙な気持ちだな」
「その手をおろせトレース。いや、王よ」
「昔は王だったかも知れないけど今は違う」
「そうか。なら遠慮なく殺せる。妖術師頼んだ。そしてティグリスとミュリエルもやれ」
創造神はNPCや神を作り上げその言葉には逆らえない。妖術師は言われる前に戦闘態勢に入っていた。だがミュリエルとティグリスは一切動く気はない。しかも妖術師の方を向いて戦う気でいる。
「なぜ逆らう?」
「創造神が王より上だと思ってるの?これも王の技の一つだったような。『王命』。信頼度が高い相手のみ効果が発揮される技。立場が上の人から何を言われても私が言った事を優先する」
「まさかトレースがここまでやるとはな」
「ついてきて正解だったわ」
今の状況だとトレースと創造神、ミュリエルとティグリスと妖術師のような勝負になりそうだ。
「私を殺したらこの世界は消えるぞ?」
「創造神が消えたらそりゃそうだろうね。なに?王に勝負挑まれて怖いの?」
「まさか元の世界に戻れるとでも思ってるのか?」
「私の場合どっちが元の世界なんだろうね。ただもう向こうのほうでは死んでるんでしょ?」
「ああ、この世界に来る条件は死ぬことだ。だからこの世界で死ぬと本当の死だ」
「なら怖くないや」
トレースは深呼吸し冷静になる。ついさっきまでは楽しく冒険していたのに急にラスボスのステージへと移動した。もう戻ることもできないし戻りたくても戻れない。ここが最後だとトレースは察した。
「ティグリス、ミュリエルやるよ。すごい急だけど最後の勝負」
「おう。本当に急だけどな」
「負けるわけには行かないよね」
勝機は微妙なところ。妖術師の強さはこの世界でプレイヤー1位。それに対しティグリスとミュリエルNPCと神のコンビ。こっちは強さ不明の創造神に対しスキルはほぼ皆無な冒険者。
勝機が微妙なのはティグリス達であってトレースはほぼ不可能。ただ立ち位置的には勝っている存在。
負ければこの世界はこのまま続くし勝てばこの世界が消える。
どちらも好ましくないがどちらかになる勝負
「やるよ」
「おう!」
「来い!冒険者でありながら王である者よ。其方を殺しこの世界を維持する」
急な最後の戦いが始まった。
おまけコーナー第11回
作「お疲れ」
ト・テ・ミ「......」
作「どうかした?」
ト「本当に急すぎない?」
テ「ネタ切れとかじゃなくて?」
作「あーネタ切れではないよ。そこは安心して」
ミ「でももうそろ終わらない?」
作「終わるかもね。正直終わりは近いと思います」
ト「もう終わるのか」
テ「何だかんだでもう5か月だしな」
作「もうそんなに経ったか。でもまだあと数話あるから安心して。それでも今年中には終わるかな」
ト「さすがに悲しい」
作「急にクライマックスに入っていますがこの後もお楽しみください!」
見ていただきありがとうございます。
本当にネタ切れでは無く本当に急な展開にしたかっただけなのでそこは誤解しないでください!
かと言って本当に急に最後の勝負になりましたね。流石に驚き......トレースが王であることもサラッと言っていましたが結構重要なことですよね。
この先もお楽しみください
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次回投稿は11月30日17時です
次回もお楽しみに!




