表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『老いの入口』  作者: 髙山志行
PR
10/10

第十章 「躁と鬱の狂想曲」 ー晩秋ー

 やがて迎えた母の三回忌。10月も半ばを過ぎた、晴天の土曜日。

(「晴」の字を名に持つ母は「晴れ女」。そんなところは、しっかり受け継いでいる。それに『共時性(シンクロニシティー)』? 偶然の一致ではあるが、先に挙げた「うつ病」がテーマの日本映画の主人公の妻。母のフルネームとは一文字違い)。

 父の車で、一人暮らしの伯母を迎えに行って、そのままお寺へ。

(父は「盛り(カゴ)」などの準備があるため、弟と車で別に出る)。

 我が家から徒歩で数分の場所なのに、こういう機会でもなければ、めったに顔を出さない。人生がいっこうに上向かないのは、先祖の霊を大切にしないからだろうか? もっとも、三代以前になると、「どこの馬の骨」かもわからない家系。かえって気楽で良い。

(「家柄が古い」などというのは、「それだけ因縁が深い」ことだと思っている)。

 気候も良くなった季節。お寺での…実子である自分と弟以外…兄弟・義兄弟のみの「法事」の後は、先の「フランス料理」の店へ。

 六人兄弟・姉妹だった父方は、末っ子の父と上の伯母だけになってしまったが…母は「満州」から引き揚げてきた五人兄弟・姉妹の三番目。母と、『日中戦争』時、砲兵隊に所属し、遺骨も戻らぬ戦死を遂げた長兄以外は、いまだ存命だが…母が他界してからは疎遠気味。こういった事でもなければ、会う理由も無いが…。

『みんな、歳をとってしまった』

 もう70を越えた老人ばかりなので、素材も量も、控え目にオーダーしてあったのだが…しかし、みんな意外に良く食べる。なんでも、食べる量も個人個人で、一生に食べる量が決まっているという。

(ボケたおばあちゃんが、ある日突然食欲旺盛になり、満足気に「ごちそうさま」と手を合わせた翌日に冷たくなっていた…といった話を耳にした事がある)。

「最後に(シメ)のあいさつをしなさい」

 父に(うなが)されて語ったのは、まさに本日「10月20日(ハツカ)」は、三年前の母の『命日』当日だという事。誰も忘れていたようだが…。

「もう三年」

 ゆっくりとだが確実に時は過ぎ、この世に生を受けてから半世紀が過ぎた。母の享年からすれば、すでに人生の三分の二が過ぎた事になる。

(それに気づくと、「無常感」もひとしおだ)。

 人生いよいよ後半戦。あと10年も経てば「初老」と呼ばれる年代に達する。

(無駄に歳ばかりをくってきたような、若い者に何ひとつ語って聞かせる事がない奴もいるが…歳をとれば、体力的には低下していくのは当然。()びるのではなく、同情を買うのでもなく、「また同じ話してるぜ」と笑われるのでもなく、皆に認められるには、知識と経験が大切だろう。それも「耳学問」でなく、自分の意見や実体験がともなったものだ)。

 その後、老境を過ごし、死を迎える。

(生きていられればの話ではあるが、「心の準備」以上に、用意しておかなくてはならない事も、多々あるはずだ)。

『できれば穏やかな死でありたい』

 それまでに、そんな境地に達する事ができるだろうか?


 父は伯母を送り届けるので、弟の白い軽自動車に同乗し、自分の家近くで降ろしてもらう。

(「年子(としご)」だが、生まれたタイミングで学年が二つ違う弟は、多数の趣味と仕事を経験してきたが、いまだに不安定な状態。それに、おそらくこの先も独身だろうから、お互い「独居老人」そして「孤独死」予備軍。色々な意味で心配だが…計画的に、気楽に考えて行く事にしょう)。

 そろそろ「老いの入口」を迎えるものの…「人生の価値」とは『どれだけ大きな感動を・どれだけたくさん経験できたか』だと思っている。それに、「不整脈」が出て以降にフル・マラソンを走ったように、調子が良くなれば、辛かった事を忘れてしまうタイプでもあり、またぞろ「好奇心」の虫が動き出すやもしれぬ。

(当面の目標は、『世界の歴史』全巻読破だ)。

 どちらにしろ、少子化や年金問題、これから高齢者になる人間がゆっくりさせてもらえる事など、今回のようにせいぜい二か月が限度だろう。


「さて!」

 今回は感動的なオチも何も無く…。

(平凡な日常の現実なんて、案外そんなものだ)。

 週明けのあさってから、二ヶ月ぶりで仕事に復帰する予定だが…。

『ところで今日は…』

 ノンアル・ワインしか飲んでいないのに、妙に饒舌で…。

(そう)」状態なのでは?』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ