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異世界の記憶:冴えない愛・輝く愛  作者: 田舎乃 爺
第二章 そうだ首都、行こう
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32-3 二大怪獣+高校生VS世紀の大悪党(自称)③

 バンドゥーモのその一声が放たれたと同時に格納庫にある兵器群が稼働し始めた。幾多もの駆動音と排気音が重なり、格納庫内部は瞬く間に騒音で満たされていく。充満していた油や鉄の香りがより一層濃くなる中、バンドゥーモはサクを指さして声を跳ね上げた。



「目標設定! 攻撃開始ィ!!」



 轟いたバンドゥーモの指示に呼応した兵器群が、一斉に搭載された兵装による射撃攻撃を開始した。常人であれば直撃すれば木っ端微塵、或いは一瞬で血飛沫に変貌する火力がサクへと迫る。 

 その攻撃の雨が始まるのを察知していたサクは、既に始まる前に動き出していた。吸血鬼化によって強化された脚部に溜めた力を放出し、頑強な床面を割り砕きながら跳躍に近い形でバンドゥーモへと一気に距離を詰める。コンマ数秒前に自らが立っていた場所が着弾によって派手に崩壊する轟音を耳にしながら、バンドゥーモが死なない程度の力を溜めた拳をサクは突き出した。

 放つ一撃のイメージは『サクスペシャル』。扉を吹き飛ばすために一番最初にやってみた一撃だ。これで黙ってくれることを願うサクだったが、甘かった。



「『装甲緊急解放パージ!!』」


「ぶおっ!?」



 目と鼻の先にまで迫ったところでバンドゥーモの纏っていた鎧が四方八方へと弾け飛んだ。結構な威力の爆発にも匹敵する衝撃を地に足着けていない状態でくらってしまったサクは、勢いを相殺できずに後方へと飛ばされてしまうのだった。

 ぐるぐると回転しながら飛ばされるサクは体勢を立て直そうと試みるが、平衡感覚が失われてしまっているために対処できずにいた。無理矢理力を放出して止まることできるだろうが、勢い余って何処かへと激突する可能性もある。その激突で行動不能になった一瞬を狙い撃たれる危険性も十分に考えられた。

 もうこのまま流れに乗って行った先で頑張って受け身をとった方が得策ではないか。思考を放棄したサクは目を回しながらも全身に力を巡らせ、どこから着地してもどうにかなるように準備を始める。

 その矢先のことだった。



「あっっつ゛ぁ!?」



 先ほどの一斉射撃から遅れて放たれた榴弾がちょうどサクの真下辺りに着弾し、大爆発を引き起こしたのである。凄まじい熱量と衝撃波、そして広範囲に飛び散った破片がサクの全身に襲い掛かった。

 カーラが仕立てた衣服は至る所が破れ、炭化して焼け焦げた異臭を放つ。見るも無残な有様だが、サクそのものにはそれほどのダメージはない。吸血鬼状態によって上昇した耐久力は榴弾の破壊力を上回っていたようだった。

 天井へと吹き飛ばされながら、サクは身をもってあの『何か』の一撃が驚異的なものだったと思い知る。あの一個体が放つ一撃は、近代兵器の威力を遥かに上回っていたことになる。よく生き残れたものだと痛感しながら、サクは顔から天井に激突することとなった。



「ぶへっ」



 顔に続いて体も天井に叩き付けられ、大の字で張り付いているような構図が出来上がる。天井で叩き潰された蚊の気分を味わいながら、サクの体は重力に引かれて派手に崩壊した床面目がけて落下していった。

 衝撃で昏倒しかけるサクだが、何とか食いしばって意識を保つ。その揺らぐ視線でバンドゥーモを捉えようとしたが、格納庫の一角で煌めいた緑色の輝きが端の方に映りこんだ。



「やっば!?」



 身の危険を感じたサクは咄嗟に両腕から力を放出して強引に落下軌道を変更した。まだ比較的綺麗な床面に転がり落ち、すぐさま体勢を立て直したところで目にしたのは緑色の極太ビームだ。

 サクの予想落下位置に放たれたビームは外れ、その先にあった格納庫の壁面を赤々と溶解させていく。破格の熱量は吸血鬼状態であってもただでは済まないのは容易に想像できてしまう。息をのむサクの目に映っていたビームは収束していき、ちらほらと緑色の粒子を宙に残して消えていった。

 粒子が空気中の魔力と同化して消えていく間に、サクはバンドゥーモの姿を捉えた。上手くいかなかったことに腹を立てているようで、非常に不機嫌そうな顔をしている。このまま一直線に向かっていくことは無謀だと判断したサクは、無茶苦茶でありながらも効果的な戦法を取ることにした。



「そぉら、そら、そら、そら、そらぁ!」



 狙いを定めることなく、『サクスペシャル2』を格納庫のありとあらゆる方向に放ち始めたのだ。兵器群の分厚い装甲をぶち抜いた衝撃波は、その先の兵器、またその先にある兵器へと貫通してスクラップに変えていく。綺麗に陳列されていたことがあだとなってしまっていた。

 負荷限界を超えた兵器の数々が次々と爆散し、轟音と共に爆煙を上げる。大規模花火大会をも超える爆音で格納庫が満たされる中、それすら超える声量の怒号が響き渡った。



「てめえゴラぁ!! 派手にやり過ぎだろうが!!」



 我慢の限界を超えて本気のマジ切れといった様相の真っ赤っ赤になったバンドゥーモは、自前の収納方陣から取り出した大型ライフルを手に取って構える。装備されているスコープをのぞき込んで確実に照準を合わせて狙い打とうとしたが、僅かに遅かった。



「ぬぐおっ!?」



 威力を抑えめの『サクスペシャル2』がバンドゥーモに直撃した。銃身が衝撃で湾曲した大型ライフルはその手から離れて宙を舞い、バンドゥーモ自身も壁際まで吹き飛ばされる。

 何度も転がった末にようやく止まったバンドゥーモは若干ふらつきながらもその場に立ち上がる。収納方陣から独自開発した片手ほどの大きさの携帯端末を取り出し、液状画面に表示された内容と目に映る光景を目にしてさらに怒りを増幅させていく。



「損耗率60……、いや70%……! 俺様の作り上げた堅牢な兵器があんな小僧1人に……!」



 予想を遥かに凌駕する損害状況に苛立つバンドゥーモは力み過ぎて携帯端末を握りつぶしてしまう。使い物にならなくなった携帯端末を投げ捨てたバンドゥーモは、少々メタボ気味な体で駆けだした。

 その行き先はサクではなく、格納庫の一角。数体の機械の巨人が並ぶ最奥。つい先ほど遠隔操作でビームを放った巨人が結界を展開してサクからの攻撃を防ぎ続けている場所だった。

 炎上する兵器群の熱とモクモクと上がる黒煙の中、運動不足な体に鞭打って走るバンドゥーモに気づいたサクは、その足を止めるべく放ち続けていた『サクスペシャル2』の一撃の標的をバンドゥーモへと定める。自らへと注意が逸れたのを横目で確認したバンドゥーモは、残存兵器群に最終命令を下した。



「全機突撃! 動けない奴はその場から駄目になるまでぶっ放し続けろ!」



 どうせ終わってしまうのであれば、派手に終わろう。もう届かなくなった世紀の大悪党への道を諦めたバンドゥーモの指示を受け、兵器群は製造者ちちおやである彼の最後を後押しするようにサクへと突撃していくのだった。



「うおっとぉ!? マジか、マジかぁ!?」



 大破することを恐れずに突っ込んでくる兵器群にサクは驚愕の声を上げてしまう。爆散した機体の向こう側から新たな機影が絶えなく迫り続ける光景は、中々に恐ろしいモノであった。

 飛来する銃弾や弾頭を弾き飛ばす防御も兼ねた攻撃でもある『サクスペシャル2』だが、流石に数が多すぎて対処しきれなくなり始める。有する力もかなり消耗してきており、爆発炎上によって吸引できる酸素量が減少していることもあってサクは窮地に立たされていた。

 このままではまずいと判断したサクは、一旦攻撃を止めてまだ綺麗な空気が残っていそうな場所目がけて全速力で走り出した。残る兵器群の砲口は駆けていくサクを追いながら、火を噴いていく。



「休憩してる暇は無しかっ――」



 背後すれすれを弾丸が過ぎ去る音が絶え間なく聞こえ、跳び箱の要領で飛び越えた瓦礫に徹甲弾が結構な大きさの風穴を開ける。止まることが死に直結する恐怖を感じながら、サクは一心不乱に走り続けた。



「駄目か。なら本命を……!」



 息が上がってしまっているサクだが、休憩をすることなくバンドゥーモに向かった方がいいと超短期脳内会議で結論付けてその行き先を格納庫の一角へと変更した。急制動で直前にまで進んでいた方向へと引っ張られる体を力の放出で立て直し、倒れてしまいそうな横斜めな状態になりながらもその足を止めなかった。

 垂直状態に戻り、確実にバンドゥーモへと距離を縮めていくサク。その背中へと兵器群は狙いを定める。確実に当てるための軌道予測が完了した兵器群が各々に砲口を稼働させていく中、続く戦闘とはまったく別方向から破壊音が轟いた。

 その破壊音の発生源は兵器群直上。地上へと繋がる経路を塞いでいた隔壁が破られたのだ。落下してくる隔壁の一部と、その向こう側から現れた二つ分の巨体が兵器群を次々に押しつぶしていった。



(着いた!)


(邪魔をするなら容赦せんぞ)


「お。ハクとゴウも追い付いたのか。なら勝ったも同然ってまたヤベぇ!?」



 駆けつけてくれたハクとゴウに気を取られて前方への警戒が薄れていたサクの視界の端に、またも緑色の輝きが入り込む。急いで前へと向きなおった時には、巨人がビーム発射の準備を完了させてしまっていた。

 自分が展開できる結界で防げるとは思えず、サクの顔から血の気が引いていく。照射の邪魔になる結界を解除した巨人の狙いは、真っ直ぐサクへと向けられていた。万事休すかと恐れから目を閉じようとした刹那、緑色の輝きすら霞むほどの金色の煌めきが格納庫を照らしあげた。



(口からドォーン!!)



 心越しに響いたハクの声。それと同時に放たれた金色の熱線はサクの頭上を通り過ぎ、進行先の巨人を穿った。胸部辺りが一瞬にして蒸発した巨人は動力源を失ったようで、全身の至る所から火花を上げて仰向けに崩れ去っていった。



「た、助かった、ハク! ありがとう!」


(どういたしまして!)



 安堵の声を漏らしたサクが足を止めて振り返った時には、ハクは間近まで近づいてきていた。その手でサクを抱き上げ、大きな舌で無事を確認するように舐めまわす。



(大丈夫? 痛いところはない?)


「だ、大丈夫っぷ。大丈夫だから、下ろしてくれっっぷぁ」



 本心から心配しているのが心越しに分かるのでその行為自体をサクは煩わしくは思わなかった。それでもまだ戦闘中ということもあり、とりあえずその手の中から下してもらうのだった。

 温かな唾液まみれなサクはアイリスのやり方を真似て風の魔法で水気を吹き飛ばす。その後体に傷を負っていないか改めて確認をしていると、落下先にあった兵器群を鎮圧したゴウがゆっくりとした足取りで合流した。

 体温が感じられるほど近くまで接近したゴウの雄大さに思わずビビるサク。対してハクは全く緊張しておらず、まるで友人といるような非常にリラックスした様子でゴウと並んでいる。怪獣2体が眼前に佇む光景は味方であると分かっていても竦んでしまいそうな迫力があった。

 そうであっても、まずは助力してくれたことに礼を言おう。そう考えて体の震えを抑えるためにサクが深呼吸した直後、やかましい声が響き渡った。



『っしゃおらぁ! 間に合ったぜ!』



 拘束具を引き千切った巨人の内の一体が重々しい一歩を踏み出した。その丸みを帯びた体はつぎはぎなどではない。どうやら、地上でハクとゴウを押しとどめていた巨人の完成形といえる機体のようだった。

 塗装が施されておらず、本来の鈍い鉄色のままの機体は傷1つついていない。今回の稼働が初めてのようで、各部が問題がないかを動きながら最終確認をしている。そしてその全てが終了した後、両腕に搭載された特大コアを糧に完全稼働状態となった新型巨人の外部スピーカーからこれまで以上のやかましい声が発せられた。



『さぁ~、最後の抵抗をおっぱじめさせてもらおうかねぇ!!』

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