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【百合】最推しが同級生だった挙句、弱みを握られ抵抗虚しく性的にタコ殴りにされるまでのお話。  作者: 中毒のRemi
第二章 文化祭編

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第39話 なんでこの人、家にいるの?

「…………あげる」

「え……あ、あの?」


 いまだに帰ってなかった月宮さんに、少し驚いた。

 そして『あげる』ってなに?

 

 困惑する私に、彼女は吐き捨てるように繰り返した。


「対価をあげればいいんでしょ!!じゃああげる!!!!」

「いや、別に学校を二日間休ませてもらe――」


 言いかけた言葉は、強引に密着した彼女の体温に掻き消された。

 

 力強いハグ。

 だが、驚く暇さえ与えられなかった。


「ひゃっ?!」


 熱い吐息が首筋を撫でたと思った瞬間、彼女は私の首元に顔を埋め、そこへ容赦なく唇を落とした。

 一発目の接吻で私の膝は冗談みたいに笑い、地面へと砕け落ちた。

 無様な正座の格好で、必死に彼女を押し戻そうと腕に力を込める。


「な……んで…………」

「うるさい。あと抵抗しないで」

 

 ……おかしい。

 いつもの私なら、力負けするはずなんてないのに。

 首筋を吸い上げられる感覚が、私の神経を、骨の髄までドロドロに溶かしていく。

 全身のスイッチを勝手に切られたみたいに、指先一つ動かせない。

 

 月宮さんは止まってくれなかった。

 私が抵抗を諦め腕をだらりと垂らし、口端からしまりのない涎をこぼすまで……彼女は執拗に私の肌を蹂躙し続けた。

 

 唯一の救いは、このバス停に誰もいなかったこと。

 ただそれだけだ。


「あう……ぁぁ…………あい」


 月宮さんは私の口元を、ハンカチで丁寧に拭った。

 

「珍しいね。最近の茜ちゃんは結構冷めてる感じだったのに、そんな顔しちゃうんだ」


 最近は月宮さんからこういった攻めをされる事がなかったせいで、突然の猛攻に脳の処理が追いつかなかった。

 今私は、これまでされてこなかったスキンシップの遥か上の行為をされている。

 

 …………どうにか旅行初日の時みたいに1分でも良いから時間を稼いで、脳内反省会を開かねばならない。

 そして今すぐに頭の警戒レベルを更に引き上げないといけない!

 

「みないで……ください。ちょっと……はぁ……はしたなすぎます」


 私は思考の破片を必死に繋ぎ合わせ、両腕で顔を隠そうとする。

 けれど、彼女はその腕を易々と引き剥がし、逃げ場を奪うように私の鎖骨辺りを強く掴んだ。


 鋭い爪が食い込む。


「はぁはぁ…………1分――や、2分で良いので時間を下さい……!!」

「そんな事言ってバスがくるまで時間を稼ぐつもりでしょ」

「違います!……違いますからぁ……!!」

「それと話戻すんだけどさ、これ……前払いだから。旅行の時言われたみたいに体で払うとかは無理。私の限界はここまで」

「…………い」

「でもここまでしたんだから、一緒に文化祭を楽しんでくれるよね?」

「……やです。絶対に嫌です!!」

「まだ足りないっていうの?……強欲すぎるよ茜ちゃん……」


 そう言って月宮さんは私の頬を両手で固定した。

 そして月宮さんは本当に嫌そうな顔をして、言葉を口にする。


「じゃあこれで最後。無理やり押しつける形になるけど、旅行の時に傷つけちゃったから、それのお返しをしてあげる」


 まさか……


 彼女の言葉を理解した瞬間、全身の毛穴が総立ちになった。


「待ってください、月宮さん! 本当に1分!……せめて30秒で良いので下さい!!!」

「だめ。いいから受け取って」


 彼女がゆっくりと目を閉じ、顔を近づけてくる。

 その数センチの距離が、永遠のように引き延ばされる。

 耐え難いほどの理性と本能のせめぎ合い。肺が焼けるような過呼吸が私を襲った。


「あ、茜ちゃん?! ど、どうしたの?」

「もう許してください…………行きますから!ちゃんと文化祭行きますから!!…………私の頭をこれ以上おかしくしないでください!!!」


 気づけば、涙が溢れていた。

 

 必死に自分を保とうとしていた世界が、彼女の無自覚な攻撃によって粉々に粉砕されようとしている。

 それが受けいられなくて、情けなくて、怖くて、愛しくて…………私はただ子供のように泣きじゃくりながら懇願するしかなかった。


「え、あ…………その、ごめん。まさか泣くとは思ってなくて」


 彼女がたじろぎ、謝罪を口にする。

 私の過呼吸はまだ収まらない。

 

 そこへ空気を読んだのか、最高のタイミングでバスが滑り込んできてくれた。


 …………だけど、その前にこのまま別れるのもアレだった。


 私は最後の力を振り絞って、彼女を力一杯抱きしめ返した。


「大好きです」


 私は耳元でそれだけ言って、月宮さんをつきとばし、私はバスに向かって全力で駆け込んだ。


「ちょ――」




 ---




 私はその後、バスの中でもずっと泣き続けていた。


「あぁもう……私の好きな人、本当に最悪すぎます……ひぐ……ぐすっ……」


 もっと雰囲気があって『この後こうなるんだろうな……』みたいな感じならともかく、今回は不意打ちだったせいで、私が適応しきれなかった。

 というか、最近は私から仕掛けることが多かったのも、理由に挙げられる。

 

 いや……うん。

 私が文化祭を休もうなんて考えたのが、全部悪いんだけど。

 でも学校行事くらい休ませてくれてもいいんじゃないかって思ってしまう。

 そう考えると、今回の月宮さんの強攻にイライラしてくる。


 それでどうせ月宮さんの頭では、私が泣いていた理由を理解出来ないから、弦巻さんに相談してしまうのだ。

 

『茜ちゃんはどうして泣いちゃったんだろう?』

 

 って。

 それで事情を見透かした弦巻さんは、現状が変わらない程度に濁して、こう返すに決まってる。


『それはしおっちの事が好きだからこそ、そうなったんだと思うよ。好きすぎて常人には理解できないとこに行き着いちゃってるんだね』

『私、悪いことしちゃったかな』

『全〜然。どうせまた会った時にはケロってしてるんじゃない?』

『そうだと言いけど』


 私の脳内シミュレーションが、あまりにも鮮明に最悪の光景を叩き出す。


「うわああああああああっっっ!!!」


 もう嫌すぎて思わずバスの中で叫んでしまった。

 すると……


 ――他のお客様のご迷惑になりますので、車内で会話はお控えください――


 と、機械的な車内アナウンスが降ってくる。

 思わず『他のお客様なんて殆どいないんだから、別にいいでしょ。死ね』という悪態が喉まで出かかったが、辛うじて飲み込んだ。


 ……本当に厄日だ。

 人生最悪の日とまで言わないけど、かなり嫌な日として記憶に残った。

 

 この後の夜の通話……一体どんな顔をして、どんな声で話せばいいのか。


 


 ---




「ただいま〜」


 私はそう言って玄関の扉を開けると、知らない靴が二足あった。

 

 ……珍しい。

 お母さんや明日菜は私に気を遣って、家にあまり人をあげたりしないから、二人もお客さんが来ていることに驚きである。

 だとすると、リビングにまで招き入れてそうで憂鬱だ。

 

 嫌だなぁ、金曜日なんだからゆっくりさせて欲しいのに。

 ……厄日って0時過ぎるまで終わらないのだろうか?


 私は廊下を歩き、リビングの扉の前に立つ。

 そしてドアに手を掛けようとした瞬間だった。

 中からテレビでyou◯ubeで動画を観ている音が聞こえる。


『今日は魔◯村耐久をやっていこうと思います。私はどれくらいでクリアできるかな〜?」


 それもシスター・サニーの声だった。


 私はその聞こえてきた音に、何故か突然全身に鳥肌と悪寒を感じた。


「ヤバいです、これ。…………絶対にヤバいやつですよこれ……」


 厄災はまだまだ降りかかる。

 私はそれでも何とか意を決して、ゆっくりと扉を開いた。




 ---




「マキさんもVtuberなんだ! お姉ちゃんって凄い人ばっかと友達なんだね!」

「そうだよー。まぁでもすっちー(明日菜)のお姉ちゃんも、私に負けず劣らず凄い人だと思うけどね。ねー、()()()?」

 

 扉を開けた先では明日菜と弦巻さんが、ボディーガードの男の腕に座り、ソファに座りながら三人でテレビを眺めながら雑談していた。


「…………」


 私はこの狂った光景に10秒ほど思考が停止した後、現実逃避をするようにそっと扉を閉じ、2階の自室に向かった。

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