10 つながる、記憶
セカンドオピニオン──と言うよりも、もし手術をするなら、という前提で紹介された病院に検査をしてもらう為に久しぶりに関東の土を踏む。
ついでに日本三大名園である水戸偕楽園まで足を伸ばすことにした。
「ついでに」と言うのは、あまりにも遠いという事を知ったのは、行こうとして電車の到着予定時刻を確認してから。慌てて特急に乗り込む羽目になったのだが、指定席の仕組みがセンサーを併用した非常に合理的なものだった事に感心する。
荷物棚にあるLEDランプが座席の状況を示しており、空いている席は赤、予約席は緑、もうすぐ人が乗る席は黄色が点灯するようになっている。車掌は赤と黄に座っている乗客の切符だけ確認すれば良いので、なるほど効率的だと思ったが、初見では分かりにくい。
水戸駅に降りてバスで偕楽園に向かう。梅が咲く頃には臨時駅ができるそうだが、その盛りの時期を過ぎており、少し残念な気がした。
園内は広く、別荘屋敷である好文亭も見物する。烈公と称されるほどの気性の持ち主だった徳川斉昭だが、伝わって来るのは、領民に対する細やかな気遣いの方だった。
園内をそぞろ歩き、土産物屋に寄る。パセリは興味津々で梅や芋のスイーツを手に取って眺めている。どうも納豆は苦手なようで、お店の人から勧められても「コレは要らない!」と言ってしかめっ面をしていた。
「ねえねえ、コレ梅干し?」
そんなパセリが、ある箱を指差して私に聞いてきた。
「んー?なんだこれ?……『水戸の梅』……いや、お菓子?紫蘇で求肥を包ん……で……」
「……どうかしたの?」
「いや……これは……どこかで……?」
何か強烈に記憶に引っかかるものがある。傍らに置いてある内容の写真を見て、その答えが湧き上がってきた。
「……これ、食べた事がある」
「え?そうなの?」
「小さい頃、親父がたまにお土産で買って帰ってきてたんだ。……もう何十年も思い出さなかったのに……覚えているもんだな」
小さい頃、時々紫蘇を引っ剥がして食べたりしてたっけ。今だったら、クッキーとか色々あるし、小さな子どもにあまり買ってこない菓子かもしれない。正直、少し別な物を買ってきて欲しいと思った事もあった。けれど、そのお陰でかえって鮮明に当時の事を思い出す。
同時に、「親より先に死ぬ」事については、考えていなかった事に思い至る。今の自分の状況は、まだ話していない。聞いたら、何と言うだろうか。自分の命だからといって、自分勝手に仕舞って良いのかどうか。この命は、いただいた命。助かるかもしれないなら、まだやれる事があるのなら───
私はまだこの命と付き合う「義務」があるのかもしれない。
いや、義務と言うのは失礼過ぎる。だが、他の言葉が浮かばない。私の本心は、長く苦しみたくない事に変わりは無いのだから。
後日、検査の結果が届く。思ったよりも進行しておらず、今なら集中治療と手術を合わせることで、保障こそできないが、僅かながらでも回復の可能性があるとのことだった。
選択の為の時間は……あまり残って無い。




