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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-83 久我とビッキーのデンジャラスなマジックショー

 神渡の街を護るために世界最強の傭兵組織アロウレスを束ねる久我さんと、その副官のビッキーさんと戦う事になった私たち。


 人数の上ではこちらのほうが有利だけど相手は後世に語り継がれる七大派閥の英雄だ。無論かなりの強敵なので決して油断してはならないだろう。


「まずは空中散歩をご覧あれ!」

「チィッ! ハエみたいにちょこまかとッ!」


 久我さんの戦闘スタイルはかなり独特で、彼は空中を浮遊しながら炎や雷魔法による遠距離攻撃を仕掛けてくる。かと思えば急接近して上空から大鎌で強襲してくるので黒鬼さんは苦戦している様だった。


「なんですかこれは。これも手品なんですか?」


 人が空を飛び、魔法を使って攻撃してくる。その現実ではあり得ない光景にフィリアさんはただただ困惑し、敵の出方がわからずどう反撃すべきか悩んでいる様だった。そりゃそうだ、SPの訓練ではこんな敵への対処法は学ばなかっただろうし。


「俺のこれは種も仕掛けもございませ~ん! 独学で習得した正真正銘の魔法だよ! よく俺の手品は種が全然わからなくて魔法みたいだって称賛されるけどほとんどその通りなんだよね~。それでなんか有名な大会で優勝していつの間にか世界一のマジシャンになったんだけど皆には秘密にしてね?」

「心配しなくても誰も信じないでしょう。ですがその攻撃は見切りました!」

「おお?」


 しばらくしてフィリアさんは盾で光弾を弾き返して攻略法を見つける。ただこれが某ラスボスなら恒例のラリーが始まるけど特にそういう事はなく、久我さんはひらりと空中を舞って回避してしまう。


「ちょおい! うちを無視せんといてぇな!」

「うおっと!」


 言うまでもなくビッキーさんにも注意しなければならない。彼女の武器は現実世界では実用には堪えないけど、フィクションの世界では大人気ないわゆるガンブレードと呼ばれる拳銃と剣が合体した武器だ。


 ガンブレードは某RPGの主人公みたいな奴じゃなく拳銃の上にそのまま剣を付けたタイプのほうで、現実では日本軍が実際に作ったらしいけど見ての通りどっちつかずで剣としても銃としても使えない。鍔迫り合いをしている最中ならその間に銃で攻撃出来るので多少は活かせるだろうけど。


「あだっ」


 もちろん私も彼女以外にそんなへんてこな武器を使っている人間は知らないから見事にかく乱されてしまい、私とギバさんは数発被弾してしまう。


 耐久性が低い代わりに強力な魔法を使える久我さんがダメージソースとなり、地上でビッキーさんがかく乱して久我さんへの攻撃を阻止する。うむ、長年事実婚状態で連れ添った老夫婦みたいに息の合った見事な連係プレーだね。これが味方として戦ってくれていたのなら心の底から喜べたのになあ。


「まったく、変な武器を使って。もっといい戦闘スタイルがあるでしょうに」

「ガンブレードはカッコええ! それ以上に理由は必要ないんやで!」


 律子さんは鎖を伸ばしてどうにか動きを封じようとするけどビッキーさんは簡単に回避してしまう。どっちもかなり回避力が高いから攻撃が全然当たらなくてイライラするなあ。


「どうしますか、ギバさん!」


 困った私はギバさんに相談する。弾は小さく殺傷能力は低いけどもちろん当たれば滅茶苦茶痛い。急所に命中しない限りは死なないとはいえ出来るだけ食らわないようにしないと。


「決まってる、こうすりゃいいんだよ!」

「へッ!?」


 でも私はそう助言をしようとしたけど、ギバさんは一切何も考えず大きな包丁を振り回しビッキーさんに接近戦を挑んだ。


 それはゲームとかでは割と有効だけど確実に反撃を食らうので現実世界で採用するにはなかなか勇気のいる戦法、秘儀ゴリ押しである。私もよく使うから人の事は言えないけども随分と命知らずだなあ。


「オラアアアッ!」

「にょわああ!?」


 その命を顧みない攻撃にギバさんは当然カウンターを食らって負傷してしまうけど、ビッキーさんをざっくりと袈裟斬りにして撃破した。


「すみません、律子さん」


 ビッキーさんはおびただしい血を流しピクリとも動かないので、誰から見ても絶命しているのは明らかだった。直接手を下したわけではないとはいえフィリアさんは身内を殺してしまった事を謝罪するけど、


「何を謝っているのかしら。これくらいじゃ死なないわよ、ビッキーは」

「痛たあ~、ちょっとは手加減してぇや」

「ッ!?」


 ビッキーさんはむくりと体を持ち起こして復活したのでフィリアさんは驚愕してしまう。もちろん律子さんはこうなる事を知っていたのでずっとポーカーフェイスのままだった。


「びっくりした? うちはちょいと特殊でな、殺したくらいじゃ死なへんのや。せやからどんな手段つこうてもええんやで!」

「くっ、化け物がッ!」


 戸惑う彼女に突撃したビッキーさんを、フィリアさんは言われた通り捕らえてカウンターに首折りを発動した。だけど倒れてすぐにビッキーさんは自分の手で首をゴキ、と元に戻してやはり復活してしまう。


「ビッキーを殺すのは基本無理だよ。まあ種明かしをすれば俺を殺せば一緒に死ぬんじゃないかな。というわけでいっきまーす!」

「うひゃあ!?」


 さらに久我さんは攻撃が届かないほどの高さに移動し右手を天に掲げ魔力を集約、それを勢いよく私たちのいる場所へ投げつけた。


 そう、彼はやろうと思えば最初からこうする事も出来た。なら何故そうしなかったのか。


 それは簡単な話だ。彼はただ単にビッキーさんの見せ場を作りたかったがためにこんな回りくどい事をしたんだ。彼の舞台は基本全て自分で構成を考えているらしいけど、なるほど確かにこれは小憎らしい演出である。


 そして私たちは膨大なエネルギーに飲み込まれ、意識を失ってしまった。

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