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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十一章 永遠の村と『あの日』の償い【第二部2】

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11-76 フェイスレスへのシンパシー

 戦場から音が消え、キガンドウジだったものの岩の皮膚はパラパラと零れ落ちる。校舎の屋根上にいたゲスミは少しおびえつつ飛び降り、足を痛そうにしながら亡骸に近付いた。


「……やったのか? やったのか!?」


 長きに渡り惨劇を生み出した因縁の相手を討ち取りゲスミは痛みを忘れ歓喜しそうになる。だけど僕は、


「いやまだだ、下がって!」

「ッ!?」

「??唖縷~縷繧繧◆繧ヶ?◆繧ッッ!!」


 すぐに敵の異変に気が付きゲスミを遠ざけさせる。なんと倒したはずのキガンドウジは再び立ち上がり歪な雄叫びをあげ復活してしまったのだ!


「あれでも倒れないの!?」

「マジかよ!?」

「そ、そんな~!?」

「う、嘘……」


 苦労して戦いが終わったかと思いきやさらに次のフォルムに移行……ゲームならゲーマー魂が燃え上がるだろうけど生憎これは現実、皆は絶望してしまった。


 キガンドウジの見た目はさらにバグってしまい、傷を負った部位を埋める様に歪んだ画像が侵食する。しかし見ようによっては一番強い最終形態に見えなくもない。こんな不気味な見た目じゃ七作目のラスボスみたいに外伝作品に呼ばれないよ?


「どうしよう、もう弾はないよ!」

「だよねー。参ったなあ」


 紗幸は全ての弾を撃ち尽くしたので最早戦力としては期待出来ない。一応ガトリングは鈍器として使える程度に頑丈で重さもあるけど……人間やゾンビならまだしも防御力の高いこいつには無意味だろうな。


「ンな事言ってもやるしかねーだろうがチクショー!」


 ただゲスミはこんな状況でも戦う意志を失わずヤケクソ気味に矢を装填する。よし、親友のために勇猛果敢に戦う彼女のためにも僕も手伝ってあげるか。


 ……いや、その必要は無いかな。何やら妙な乱入者が現れるみたいだし。


「その男は二つの世界が交わる事によって生まれた世界の歪みそのもの。何をやっても決して倒す事は出来ないのです」

「えッ?」


 そして三秒後、そいつは時空の歪みと共に戦場に出現した。道化師の様な出で立ちに中性的な人間とは思えない妖しい美しさ。こいつの素性を知らない人間が見たとしても一目で人間ではないと理解出来るだろう。


「フェイスレス!?」

「また会いましたね、ヒューマンよ。このような場所で会うとは縁を感じます」

「ああ、間違いなく腐れ縁はあるだろうね」


 その人物は白き帝の軍勢のナンバー2であるフェイスレスだった。直接会うのは久々だけど相変わらず独特な雰囲気を醸し出している。


「なんだ、こいつお前の知り合いか? でもどうやってこっちに……」

「あなたどこかで……」


 紗幸は強く警戒していたけど突然の乱入者に初対面の皆は混乱してしまう。だがフミだけは顔見知りだったのか一切怯えの感情を抱いている様には見えなかった。


「そうだ、あなたもしかしてユイちゃんの友達の!」

「ユイって」

「いけませんよ、僕の秘密を安易に話しては。僕はミステリアスキャラで売っているのですから」


 ユイはフミを庇って過酷な虐めを加えられ植物状態になった少女の名前だ。まさかフェイスレスは彼女と友人だったというのだろうか。


「ひみつひmちう、金気かねかねkwんか冥絵夢家無尾名誉ッッ1 全部俺ノン者ッッ!!」

「久しぶりですね、ユキシモ。ようやく見た目が貴様の狡猾で醜悪な精神に追いついたようですね。僕もずっとお前に会いたかったのです」


 キガンドウジ(ユキシモ)もまたフェイスレスの事を知っていたのか、先ほどまでご執心だったフミには目もくれずフェイスレスに襲い掛かる。


 だけどサードマンモードを使って未来を見なくてもその勝負の結果は誰でも予想する事が出来た。


「貴様はこの世界から、いえ全ての世界から消滅しなくてはなりません。永遠に狂気と混沌の闇の中を彷徨うといいのです」

「ああb巣にあぶあなあっっ!?」


 フェイスレスはステッキを振り上げるとキガンドウジの身体がふわりと浮き、歪んだ空間の中に吸い込まれてしまう。


「え? これ勝ったの?」


 そして僕の知らない所で因縁のあった圧倒的な力を持つ第三者の介入によって戦いはようやく終結し、そのあまりにも呆気なくやや無粋な幕引きに全員がポカンとしてしまったんだ。


「どういうつもりだ、フェイスレス。僕たちを助けるだなんて」

「君を助けたというよりも個人的な恨みを晴らしたかったという意味合いのほうが強いですね」

「ふーん。邪神でも復讐とか人間らしい事はするんだ」


 フェイスレスは不敵な笑みを浮かべて僕の質問に答える。こいつはかなり自由な性格だから実際これに組織の意向は介在していないのだろう。


「まあ一番の理由はフミにもう一度会ってみたかっただけなのです。ユイが自分の人生と引き換えに救った人間がどうなったのか気になっただけなのです」

「私を……そっか、ありがとう」


 僕はまだ信じ切れていなかったけれどフミからすれば自分の恩人の友人だ。当然彼女は疑う事無くその善意を信用してしまった。


「さて、ヒューマンよ。お互い立場がありますしあまり仲良くするのもよろしくありません。この事がばれて我が君の機嫌を損ねてもいけませんので僕はこの辺でオサラバさせていただきます。要石を壊しても構いませんが、未練を解消した今なら電車も走っているので好きな方法で脱出するとよいでしょう」


 用事が済んだフェイスレスは僕らに背を向け去っていく。けれど最後にポツリと、


「それと今ヒューマンは邪神でも人間らしい事をするのかと言いましたが……僕は他の外宇宙の邪神よりも人間に近しい思考回路を持っているのです。だからこそ生き辛いのです。邪神にも人間にも馴染めず、美しい絵画に垂れた一滴の絵の具の様に場違いなものとしてそこに存在する事しか出来ないのです」


 フェイスレスは寂しげにそう語り、悪役らしからぬ弱々しい後姿を見せたんだ。


「……フェイスレス」

「話しすぎましたね。ユキシモがもう現れる事はありませんがこの世界はもうじき何もしなくても崩壊します。せいぜい悔いのないよう残された時間を過ごすがいいのです」


 彼は最後にそう言い残して空間の歪みの中に消えていく。まるで逃げ出す様に。


 僕はどういうわけか孤独な彼にシンパシーの様なものを感じてしまった。サイコパスの僕が人間社会に馴染めない様に、フェイスレスもまた邪神にも人間にもなれず苦しんでいるのかもしれない。


 借りも出来たし今度会う機会があったらじっくり腹を割って話し合ってもいいかもしれないな。


 紗幸とゲスミが和解した様に……僕もあいつの事をもっと理解したいと思ったんだ。

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