11-72 岡山編のラストバトルステージへ
決戦前にゲスミと和解し、最後の未練を断ち切り前に進むために僕らは再び学校を訪れた。
相変わらずのどかな光景だけど不気味な程静かだ。ユキシモと遭遇する可能性もあるけどまずはフミを探さなくてはならない。もちろん敵のほうから来てくれたほうが楽っちゃ楽なんだけど。
ほい、サードマンモードに集中してと。うん、ちゃんと校舎の中で出会えるっぽいね。
「見慣れた場所のはずなのにドキドキするね。肝試しの時以来かも」
「ああ、あれか。オバケ役のフミがビビッてカスミに襲い掛かってたっけ」
「あったなあ、そんな事」
カヤたちはかつての幸せな日々を思い出して顔をほころばせる。どんな事をしたのか知らないけど何となく楽しかった事はわかるよ。
「やっぱりさ、全部が嘘だったとは思えないんだよね。フミちゃんはきっとカスミちゃんの事がそこまで嫌いじゃなかったとは思うよ。人間の感情なんて好きか嫌いかの二択でそう簡単に言い表せるものじゃないし」
「だといいんだけどな」
寂しげに言ったカヤの分析にゲスミは淡い期待を抱いてしまう。そりゃ仲直りが出来れば一番いいけど……出来るのかな。
「ねえ、弓削さんはフミさんに会ったらどうする? また拒絶されるかもしれないけど」
「そうだなあ」
つい先ほど仲直りした紗幸はゲスミにそう尋ねた。必要に迫られてとはいえもう普通に話せるなんて。僕はそれを見てどこか感慨深くなってしまった。
「まずは悲しませた事を謝るよ。お前が私にそうしたみたいに」
「そっか」
ゲスミはフミやユイの虐めに加担したわけではないので別に謝る必要はないけれど、それでは気が済まないのだろう。卑怯な事に定評があった彼女もまた紗幸に感化されて勇気を出す決心がついた様だ。
「それよりもおなかの怪我大丈夫?」
「大丈夫じゃないに決まってるだろ。気合と根性でどうにかしているだけだ」
それとは別にやはりゲスミの怪我も気になる。彼女は動いた事で傷口が開いてしまったのか服からは漏れ出た血がにじんでいた。
ぶっちゃけ安静にしていなければ死ぬ程度の大怪我で痛いなんてレベルじゃないし、元々戦力としてはカウントしていないからここまで無茶しなくてもいいだろうに……本当にこの精神力は凄まじいよ。だけどそれだけフミを助けたいって事なんだろうな。
「向こうの教室にフミがいる。ゲスミ、覚悟を決めて」
「わかった」
とりあえずユキシモと遭遇する事無く僕らは目的地に到着するけど、彼女に話しかけるというそのミッションはゲスミにとって強敵と戦うより困難な任務のはずだ。
だけど彼女は震える手で教室のドアを開け、過去の償いをするために迷わずフミと対面したんだ。
「カスミちゃん」
「フミちゃん」
同じく警戒をしていたフミは侵入者の存在にすぐに気が付く。ただフミは頭が冷えて落ち着いていた様だけどその間自分の言動を顧みたのだろう、かなり気まずそうに眼をそらしていた。
「ほら」
「っ! あのっ」
まごまごしていたゲスミはカヤに小突かれ強引に言葉を引き出そうとした。その調子だ、ちゃんと謝るんだ、ほら、君なら出来る!
僕は心の中でいつの間にかゲスミを応援していた。彼女の眼を撃ち抜いた僕が人生をやり直そうとしている彼女にエールを送るだなんて、本当にこのあり得ない変化が不思議で仕方がなかったよ。
バキィッ!
「きゃあああ!?」
「うわっ!」
ただそこに空気の読めない乱入者が現れる。その人物は教室の窓側の壁を岩の腕で破壊し青春チックな空気を見るも無残に破壊したのだ。
「まあそうなるよね。紗幸」
「わかってる!」
紗幸は友を救い、その新たな人生の門出を護るためにガトリングを構え銃身を高速回転させる。
その爽快な銃声は祝砲が如く。その真っすぐな弾丸にはもう一切の迷いは存在しなかった。




