11-48 ゲスミとの対決(二回目)
ゲスミは僕から目をそらさずボウガンに矢を装填する。リロード中に攻撃しても良かったけど今回の目的はあくまでも話し合いなので控えておこう。
「っ」
紗幸はその敵意に満ちた眼差しに怯えてしまう。何故なら今のゲスミはかつて自分を虐めた時とは比べ物にならない程強い憎悪の感情を抱いていたのだから。
だけど彼女は逃げなかった。過去を乗り越え弱い自分と決別するために戦う事を選んだんだ。
「……確認したい事があるんだけど、サクタロウさんたちを殺したのは弓削さんなの?」
紗幸はまっすぐな瞳で問いただす。帰ってくる言葉が真実かどうかはわからないけどまずは相手の目的を確かめるために。
「……ぷぷぷ」
しかしゲスミは下品な笑みを浮かべ吹き出してしまう。その人を絶妙にイラつかせる笑い声に僕は思わず銃をぶっ放したくなってしまったけどどうにかぐっと堪えた。
「私の左目を吹き飛ばしたのはそいつだ。いや、知ってるよなそりゃ。どうせお前が大嫌いなお兄ちゃんに自分を虐めるあいつらを殺してくれって泣きついたんだろうからな!」
「ち、違うよッ!」
けれど話し合いをする前からゲスミは盛大な誤解をしており紗幸は慌てて否定をする。でも状況的にはそう考えるのが自然だし、僕がゲスミを殺そうとしたのは事実だし……参ったな、まさかペイルライダー事件の過ちが今になって尾を引いているだなんて。
「けど皆は関係ねぇだろうがッ! 殺すなら私だけ殺せばいいだろうがッ! どんだけしつこいんだよッ! お前らは恵まれてるのに何で今更私につきまとうんだよッ!」
「弓削さん……」
ただ誤解ついでに彼女は聞いてもいない事までべらべら話し始めた。その敵意はとても人間味があって美しく、僕らは殺意を向けられているというのにとても暖かな気持ちになったんだ。恵まれているっていうのがどういう意味なのか気にはなるけど。
発言から推測するとゲスミは僕たちが復讐するためにやってきて彼女やその友人を殺していると思っているらしい。向こうに悪意がなく犯人ではない事がわかったのは大きな進展だけど、それは大きな勘違いだからまずはその誤解を解かなければ。
「僕らは犯人じゃないって言ったら信じるかい?」
「ぷぷぷ! 馬鹿言ってんじゃねえ殺すぞ! 昨日会った時のお前の目は私の眼球を吹っ飛ばした時とまるで同じ人殺しの目だったからすぐにわかったよ、ペイルライダーさんよぉッ! 品行方正に生きている人間が拳銃なんて持ってるわけねぇだろうがッ!」
「ですよねー」
うむむ、それに関しては何も言い返せない。というかこれもしかして問題がこじれているのは全部僕のせいだったりするのかな。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「わかってるよ」
紗幸は困りつつも幸せそうに笑う。誤解されてしまったのは残念だけどゲスミは友達を護るため恐怖を押し殺し命懸けで殺人犯と対決する事を選んだわけで、それは性悪な彼女が生まれ変わった何よりの証拠だったのだから。
もちろん僕としてはまだ過去の事を根に持っているから素直に喜べないけど……けどそっか、人間って変わるものなんだね。




