日本史と世界史の違い
「なるほど、『富はみんなの共有物』か。非常に面白い考え方だな」
吉原が大学ノートにメモを取る。
「そうなの。そういう考え方だから縄文時代は争いもなく何千年もの間、平和が続いたのよ。あ、日本史を教えるちょうどいい機会だからみんなも手を休めて聞いてね」
目をつぶってカタカムナウタヒを熱心に唱えている生徒たちをメグは誘った。
「しかし現代で本気でそれをやろうとなると、既に巨万の富を持ってる連中や、ひいては各国の政府と対戦することになるなあ」
「あらやだ、対戦なんて言う言葉は戦力が同等の相手に使う言葉よ。私たちが本気出したら、戦いにすらならないわ」
「戦いにすらならないか・・・たいした自信だな。もう一つ尋ねたい、なぜその絶対的なパワーをこの日本で広めようとしているんだ?」
「いい質問ね。そもそも私たちは縄文人に対して争わないこと、つまり『和』の心の大切さを徹底して教えたの。だから最初の政権は『大いなる和』と言う意味で大和政権という名前になったのよ」
「なるほど。大和にはそういう意味があったのか」
最前列の桐山が関心したように呟いた。
「でも今の世の中は全てが『欲望』の発露で、毎日が奪い合いや戦いの中にあるの。つまり限られた富の争奪戦ね。例えば株式市場でも誰かが勝ったなら誰かが負けるよね」
「そうだな、株式市場がゼロサムということは『勝ち組』と『負け組』の総和だよな」
「でも、その国家間の争いを無くすために国連があるのじゃあない?」
小動物・坂本が尋ねる。
「偉そうなこと言ってる国連なんかも、結局は第二次世界大戦に勝った国が決済権を持ってるから『勝者』の世界よね。分担金をたくさん払ってる日本は『大戦に負けた』と言う理由でお金は払っているけど常任理事にすら入れていないわね」
「そうだな、これは不公平だな」
ゴジラ・渡辺が答えた。
「でも長い世界史の中で、唯一『争わなかった』が故に一番長い歴史を持つ国が日本なの」
「でも日本はドンパチの戦国時代があったじゃあないか?」
リーゼント・広川が聞いた。
「あったけど、信長にしても秀吉にしても決してトップの天皇を殺めようとは考えなかったでしょう?」
「たしかに・・・」
「私たちは『天皇家』に民衆を武力で押さえて統治することは教えなかったの。むしろ家族でいう『家長』として民衆の健康と平和を常に祈る存在になるよう指導したの」
「なるほどな、それで長い歴史が維持されたのか」
「もっと言うと、西洋の文化は『統治する側』と『される側』にハッキリ区分されていたの。つまり利害が一致しない関係ね」
「だから西洋は民衆の反乱が多かったのか」
「そう、戦いに勝った『統治する側』は『統治される側』の人間の反乱を常に恐れて背が高いお城をつくったの」
「なるほどな」
「でも日本は違うよね。京都の御所なんて深い堀もないし、塀なんて2メートル位の高さよね。仮に塀を乗り越えて家の中に入ってしまえば、後は紙を2枚ほど突破したら簡単に寝所まで入ってしまう。そんな民衆に対して無用心な国は日本だけなの」
「そうよね。西洋のお城はたしかに攻められることを前提とした要塞のようよね」
ラスカル・堀が反応した。
「いや、ありがとう。君たちの考え方がよくわかった。また日本を選んでくれたことを心から感謝したいな」
全て納得した吉原が大学ノートをしまった。




