大江田先生のお願い
吉原の質問が終わった後、摩耶の授業が続いている。
目を閉じた生徒たちが一心不乱にブツブツ唱えている風景は、さながらどこかの宗教団体のようである。
「あ、目を手のひらでグリグリ押してたら、チカチカと星が見えて来た」
「私はマダラ模様が見えるわ」
「俺はなんか、幾何学模様がゆっくり回っているぞ」
「みんないいわね。それは網膜で見てるのではなく脳が見てるの。その模様を意識して球に近づけてね」
「「「了解」」」
個別に摩耶の的確な指示が飛ぶ。
※
授業が終わる頃に大江田先生が、教室の後ろで授業を眺めていたメグに近づいてきた。
「卯原さん、今日は久しぶりに、生徒の立場で授業を聞くことができてリフレッシュできたよ」
「あら、大江田先生にそう言ってもらったら嬉しいわ。先生も何か模様が見えるようになりましたか?」
「うん、僕の場合はモヤモヤとした紫の雲のようなものが見えるようになった」
「私はカミナリのような光が見えるがなぁ」
藤田校長が目をパチクリしながら言った。
「僕は深い宇宙の中に無数の星が見えるな」
中居先生がそれに続く。
「「私は空間に浮かんだリングが見えたわ」」
双子のマイとアミがステレオのように同じことを言った。
「そう。人によって見えるモノが違いますが皆さん頑張ってくださいね」
「ところで、卯原さん。ちょっと相談なんだけど」
大江田先生がメグに言った。
「何でしょうか?」
「実は私と体育の田森先生は、来年度の修学旅行の調査役を命じられているんだ」
「調査役ですか?ところで修学旅行はどこに行く予定ですか?」
「例年のように、長野県の黒姫山に行く予定だ。それで事前にホテルとの打ち合わせを兼ねてロケーションや、観光施設、諸々の付帯設備をチェックしたいので現地に行きたいのだが、瞬間移動装置を使って黒姫山に行く事は可能かな?」
「なんだ、そんなこと?それなら全然OKよ。それで、いつ行く予定なんですか?」
「そうだなぁ、時間が取れたら来月にでも行こうと思っている」
「じゃぁ、せっかくなので明日いきましょうよ!明日は土曜日だからちょうどいいじゃない!」
「え?そんな早くにか!田森先生の都合もあるし・・・」
「じゃあ今すぐメールで確認してください」
「わかった、少し待ってくれるかな?旅程は何泊かな?」
「もちろん瞬間移動だから日帰りよ」
「日帰りか!さすがに便利だな」
内ポケットこらスマホを出して田森にメールする大江田。
「ちょっと、星!黒姫山の近くの神社はどこ?」
「えーと、熊倉神社なんだナ」
「水晶ある?」
「もちろんあるんだナ。明日、行く前に用意しておくんだナ」
「さすがわが相棒!」
バンと星の背中を叩くメグ。
「ポロローン」
大江田のスマホにメールが着信したようだ。
「あ、田森先生も大丈夫だそうだ」
「了解!じゃぁ明日の10時に校門前で待ち合わせしましょう」
「分かった、ありがとう」
※
「と言うことで、今日の授業はこれで終わります。皆さんお疲れ様でした。必ず家でも練習してね」
「「「はーい」」」
摩耶の授業がどうやら終わったらしい。




