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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第五章 ルキソミュフィア救援
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第77話 ソラ・ルデ・ビアス

 レオルステイルが長考に入って皆が夕食を愉しんでいる頃、2階の扉のあるフロアから不穏な気配が漂うのをセレスは感じていた。

 最初は気の所為だと思っていたのだが、どうにも気配が強いので、これは何者かが扉を使って書架に侵入しようとしているのだろうと想像しながら食事を続けた。

 セレスの様子がオカシい事に最初に気付いたのがベルフォリスで、何かを気にする様にそわそわしているのでつい、

「何だセレス、もしかしてアレか?漏れる前に早く行った方がイイぞ?」

と、デリカシーの無い事を食事の席で言い放ったので、

「何言ってるんだ?ベル?お前の方こそ足元がお留守だぞ?」

少々イラっとしたセレスは、ベルフォリスの座る椅子の足に魔法を放って、ベルフォリスを椅子ごと後方に転倒させた。

 ガターーン!!と大きな音を立てて、ベルフォリスは食卓から強制離脱した。

 急に視界に入っていた食卓の光景が天井に変わったベルフォリスは、一瞬何が何だか分からない様子だったが、自分が椅子ごと転倒した事実を知ると、「やっちまった」と呟いて目をつむる。

 それを見ていたソフィアステイルは、

「二人とも、もう子供じゃないんだから悪ふざけは止めな!もう、30歳や40歳の子供の頃ならまだしも、数百歳を超える年齢になっても全く変わらないんだから・・・」

溜息混じりに昔の2人の子供時代を思い出しながら、愚痴る。

 赤い月の魔界の住人であったベルフォリスとセレスなので、数百歳と言う単位が蒼壁の大陸時間で計算されているのだが、実際に赤い月の時間で換算するとまだ160歳ちょっと・・・と言う説明を前に聞いていたコレットは、今現在確認されている他の皆の年齢も記憶の中で確かめていた。

 とは言え、記憶が徐々に戻ってきているコレット自身も相当な年齢になっている可能性があるので、自分だけが若いと言う錯覚はそろそろ無くなりそうだとも思っていた。

 コレットが、あれやこれや年齢について考えていると、不意にグレアラシルが立ち上がる。そして、

「姐さん、何か2階から人影が見えたんすけど、泥棒ですかね?」

 1階から吹き抜けている2階の書棚の方を見据えるグレアラシルは、何者かの影を見つけて凝視していた。

 続けてソフィアステイルと、ベルフォリスも椅子から起き上がって2階を見据える。

「この気配・・・僕の知っているあの人の気配に似てるんだけど・・・・」

何者かの気配を察知したベルフォリスが呟いた。

 今、書架で食事をしていた面々の中では、怪しい人影に対しての明確な答えを出せている人が一人も居なかった事に腹を立てたのか、それとも自分の存在意義を再確認して悲しくなったのかは分からないが、謎の人物の影は悲しそうな雰囲気を漂わせながら1階に下りる階段の方に姿を現した。

「ああ!!」

最初に声を上げたのはミカゲだった。

 そして、

「ああああああああああああああああーーーー!!!」

次に指をさしながら叫んだのはセレスだった。

 ソフィアステイルに至っては、かなり呆れた顔でその姿を視認する。

 ベルフォリスは?と言うと、尊敬する師匠を目の前にして感涙の嵐になっていたし、グレアラシルは、その気配と魔力の凄まじさに恐れ慄いて、満月でもないのに変幻しそうになっていた。

 ただ一人、コレットだけはキョトンとした状態でその人物を見つめている。

 その人物は、身長2m近くはある長身で、鍛え上げられた筋肉の巨躯(からだ)を礼服で包んでいるのだが、全くもって見苦しさが半端無い。

 そして特徴的なのが、燃えるような赤い髪と緑色の瞳が、セレスと同じ様に輝いていた。

 グレアラシルも結構な巨躯だが、それ以上に身体も魔力も相当に大きかった。

 ずっとキョトンとした状態で呆けていたコレットだったが、前に聞いた話を思い出す。

 確かセレスの父はこんな感じの風貌で・・・・・・

 皆が色んなスタイルで驚きを隠せなくなっている中、やっとその人物は口を開いた。

「や、やあ皆、初めましてとお久しぶり・・・・」

 食卓を囲む面々に睨まれる様に見つけられていた人物は、半分悲しそうな複雑な声で軽い挨拶をしたが、

「やあ?お久しぶり??一体何年経ってると思ってんだぁーーー!!!このボケオヤジ!!」

挨拶の言葉が終わるや否や、セレスは短時間で掌に仕込んだ火球を『ボケオヤジ』に炸裂させる。


 ドッカーーーン!!


と、かなり派手な音を立てて『ボケオヤジ』にぶつかったが、当の当てられた本人は全くの無傷で、書架の建物にも傷一つ付いていなかった。

「ああ、もうセレスは乱暴だな~。そんなに父さんが憎いのか・・・いや、憎まれても仕方が無いな。」

 『ボケオヤジ』と言われた人物は、観念した様子で1階まで降りてきた。そして、

「初めましての人にちゃんと挨拶をしなければね。拙者はソラ・ルデ・ビアス。正式名称はもっと長いんだけど、聞いていると皆眠くなっちゃうから、これで。この書架の主をやっているよ。」

意外と、割とちゃんとした挨拶をした。

「え?ええ?セレスさんのお父さん??」

 コレットは、良く分からないものを見たような顔で、ソラ・ルデ・ビアスと名乗った男を凝視した。

「そうそう、それがアタシの親父でこの書架の本当の店長。」

セレスは、手をひらひらと動かしながら、半ば呆れ気味にコレットに説明する。

 当のソラ・ルデ・ビアス本人はその光景を見て、微笑ましそうな笑顔を見せた。




 それにしても・・・・

 セレスはそう言いそうになって口ごもる。

 もっと先に言いたい事があっただろう?と自分を戒めたのだ。

 セレスが口ごもって何も言わないのを確認したソフィアステイルが、先にソラ・ルデ・ビアスに畳みかける。

「あらあらお久しぶりですね、お義兄(にい)さん。今まで、この120年間どこをほっつき歩いていたんでしょうね?」

「120年?!」

 ソフィアステイルの言葉に驚いたコレットとグレアラシルは、同時に叫ぶ。

「確かに120年は人間の寿命を考えると長いよね。」

ベルフォリスがその年数に更に追い打ちをかけた。

「あ、あああ~本当長い間だよね、申し訳ない。説明すると凄く長くなるけど、結構大変な目に遭ってたんだよね~。」

と言って、ソラ・ルデ・ビアスは頭をポリポリと掻く。

 それを見たセレスは、


「本当に・・・・特にこの100年間は!と言うか100年前のソルフゲイル侵攻の時に帰って来てくれれば!!銀狼族は攫われなかったし!!あと!!もう本当に色々あって!!トトアトエ・テルニアを維持できなくなってて!!」

 セレスは、100年前からここに至るまでの積年の恨みつらみをぶつける様に、久しぶりに帰宅した父親に叫ぶ。

「そうだち!ソラ!!あちしが付いていたからセレスは結構頑張ってこれたんだち!!あちしも結構堪忍袋の緒ってのが切れまくってて、何個目の堪忍袋か分からないんだち!!」

続けてミカゲもセレスの父親に畳みかけた。

「ミカゲ、本当ありがとうね~セレスの事面倒見ててくれて。魔王の御影だったお前を引き取ってからは、ずっとお世話になりっぱなしだったよね~・・・・」

 まるで孫でも見るかのような眼差しでミカゲの言葉に返答するセレスの父親は、まったくもって腑抜けた親父の様にセレスの目には映った。

 そんな中、3日は長考しているであろうと予測されていたレオルステイルが長考から覚める。

 周囲の賑やかしい声を五月蠅く感じたのかまたは、夫であるソラ・ルデ・ビアスの帰還を察知したのかは分からないが、とにかく覚醒したレオルステイルが最初に放った一言は、

「こんの、やかましいわ!!」

だった。

 周囲が五月蠅くて長考が不可能になった様だった。

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