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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第五章 ルキソミュフィア救援
75/100

第75話 古の記憶

 隻眼のメルヴィの正体が、実はソフィアステイルの良く知る人物だったと言う事実には、グレアラシルとレオルステイルが驚いていた。

 もし、その話が本当なら、

「どうしてあの時雇われ傭兵に指示を出す役なんてやってたんすかね?」

と、グレアラシルは素朴な疑問を口にする。

 すぐさまソフィアステイルは、

「何、簡単な事だよ。彼の名はウィルムント・ラガド。彼に荷物の運搬を依頼している者からはウィルって呼ばれていると思うよ。彼はアルメイレとメルヴィレッジの間だけではなく、この蒼壁の大陸中を行き来している巨大流通業を営んでいるからね。だから色んな地域で彼の事を目にしている人は多いし、雇われ傭兵ともなると各地に荷物を運搬する時に彼に荷物を運ぶ依頼をする者も多いだろう。だから、彼は指示役として雇われたって言うのが私の見解なんだがね。」

そう言った後、ちょっと新しいコーヒー淹れてくるわと言って台所に向かった。

 ソフィアステイルの見解を聞いたレオルステイルは、

「な、なるほど。確かにソフィアの言う通り・・・なのじゃろう。ただ。そのウィルとやらは多分あヤツに命じられている事は間違いないと!儂は思っているぞよ。」

 自身の発言が的を得なかったことによる羞恥心からか、レオルステイルは手元近くのパンとコーヒーを慌てて食べて飲んだ。

 今までのコレットとグレアラシルとソフィアステイルの話を総合的にまとめてみると、やっぱりセレスやレオルステイルが懸念していた通り、アルセア・ティアードが一枚噛んでいる事は間違いなさそうだった。

 アルセア・ティアードがコレットの『アリ・エルシア』の力を得るためにコレットを嗅ぎまわっていたのだとしたら、一体その事をどこで知ったのか?と言う情報の出所を知らなくてはならなかったが。

「問題の、『アリ・エルシア』のあの弓が、本物だって言う情報をヤツがいつ掴んだのか?と言う所が一番知りたい所なのじゃが・・・」

 パンを食べている筈なのに苦虫を食べている様な顔でレオルステイルが呟く。

「それと、俺の事はだいぶ前から知っていた筈なのに、さっき来た時はまるで初対面の人と会う様な、そんな雰囲気を感じたっすね・・・・」

 グレアラシルも、日中会ったアルセア・ティアードの様子を思い出しながら、これまでの話を照らし合わせていた。

 それぞれがモヤモヤと考えても何も進まない。

 何だか(らち)が明かないってこの事かな?と思ったミカゲは、

「もう結構夜になったのにパンしか食べていないのはちょっと不健康だち。あちしちょっとご飯作ってくるちよ。みんなはしばらく考えるの止め!ライカンスロープ君の魔法の練習に付き合ってあげるちよ。」

と言って、グレアラシルの座るテーブル席の片隅に置かれた、子供用の魔法の練習本を指差した。

 日中、誰も居ない書架でコッソリ練習していた簡単な魔法が載っている本が数冊、皆の目に留まった。

「あ!いや~、俺も、何か魔法の勉強してみたいかな~~と・・・・」

グレアラシルはかなり真っ赤になって、練習本を本棚に戻そうと席を立つ。

 所が、その動きをベルフォリスが制した。

「おっと待ちな!魔法の練習したいんだろ?今がかなりチャンスだと思うぜ?何せ稀代の名魔導士とも言われた2人が目の前に居るんだからな!」

そう言って、ステイル姉妹を指差す。

 それを見たソフィアステイルは、

「おいおいベル、私は稀代の~とは言われた事は無いのだがな。もっぱら、慟哭の魔女とか神出鬼没の魔導士とか言われているのを知らないとは言わせないぞ?」

と言いながら、

「稀代の魔導士はむしろ姉さんの方だろう。セレスの前はかなり長い間世界樹の守護者をやっていた訳だし。当時は世界樹の袂でクレモストナカの民衆から崇められていたのを、私は結構見てきたんだけどな。」

レオルステイルの方をジっと見つめた。

「まぁ、確かにあの頃は儂も稀代の魔導士などと謳われてイイ気になっていた時代もあったがの、あの頃は若かったのじゃ。蒼壁の大陸側の年数では1000年近く世界樹に囚われていた儂だったが、クレモストナカの民衆が神の如く崇め奉られてくれたお陰で、長きに渡る守護者をやって来れたと言っても過言では無いじゃろう。」

ソフィアステイルの視線を真っ向から見据えながら、レオルステイルは昔の世界樹の守護者をやっていた頃の話をする。

「長年囚われ続けていたのをセレスに移譲する方法を知った儂は、世界旅行をしたい願望を叶えたいが為に、今度はセレスに重責を負わせる事となった。それは母としてはやってはならぬ事じゃったと、今は後悔しきりじゃがの。」

 自責の念を話し終えると、レオルステイルはセレスの方を見た。

 セレスは、

「まぁまぁまぁまぁ、とりあえずミカゲの方が世界樹の守護者に向いてた!って事が分かって、アタシもミカゲに役割を代わってもらった訳で、今は身軽な身体に戻ったから!もう~この話は無し!ナシナシ!」

と言って、レオルステイルが作った重苦しい雰囲気を霧散させた。

「今は、そんな昔の話に付き合っているヒマは無いんだよ?母さん。もっとこれから先の話をしていくんだよ?」

 セレスは若干意気消沈気味のレオルステイルを、軽く説得する様な口調で諭した。

 そんな母娘のやりとりを見ていたグレアラシルは、ふと昔の記憶を思い出す。

 昔、まだ少年時代のグレアラシルはよく、世界樹の根っこの近くで仲間たちと遊んでいた記憶だ。

 根っこと言ってもかなりの大きさで、何せ世界樹自体がそこそこ標高の高い山位の高さがあったのだから、当然その根っこの末端部分でも相当の太さがあった。

 遊んでいる時、時々近くでグレアラシル達の様な子供の遊んでいる姿を見ていた女性の事を思い出す。

 黒いの長い小柄な感じで、耳はエルフの様に長かった様な・・・・

 え?

 ふと、目の前の席に座る人物をじっくりと凝視した。

 今、目の前に座る人物レオルステイルが、正にグレアラシルの記憶の中の世界樹の近くに居た、あの女性そっくりだった。

「俺・・・・やっぱりもしかすると、時空間移動ってのをさせられてるかも知れないっす。」

記憶の海の中で、自身の記憶が最近の事では無かった可能性がある事をグレアラシルは告げる。

 この言葉に、ミカゲとソフィアステイルの台所メンバー以外は言葉を失った。

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