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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第四章 ソルフゲイルの謀略
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第69話 目覚め

 「と言う事じゃ。分かったかセレス。と言っても、おぬしの頭では理解するまでにかなり時間がかかろう」

 一通り説明を終えたレオルステイルが、大きくため息をついた。

 セレスは案の定と言うかいつもの通りに、頭の中も外もグルグルしている状態だった。色々な事実を一気に知ってしまったので、しばらく頭を使わない作業をしたいとセレスは本気で思っていた。

 そんな中、横たわるミカゲとコレットに変化が見られた。

「う、うう~~ん。」

 ミカゲが眉間にシワを寄せながら、大きく伸びをしたのだ。

 それまで、喧々諤々(けんけんがくがく)と母娘で話し合っていた空気をレオルステイルは一蹴(いっしゅう)してミカゲに近寄る。

 そして、

「ミカゲ!」

と、その名を呼んだ。




 薄暗い靄の中のような空間を進んでいたミカゲとコレットだったが、光の中に入ってからはつないでいた手がほどけて単独行動になっていた。

 ミカゲは一瞬おや?っと思ったのだが、この状況は自分の身体の目覚めが近いのだろうと悟ってコレットを探す事はしなかった。

 真っ白い光が身体全体を包み込むと、自然と自分の身体の中にミカゲの精神は戻って行く。

 眩しい光が瞼に差し込んで目を開けると、セレスとレオルステイルが心配そうにミカゲの顔を覗き込んでいた。

「ミカゲ!!」

 今度はセレスの方がミカゲの名を叫んだ、そしてやたらアワアワと慌てた様子になっている。

「おはよーだち。任務完了なのだお。」

 敬礼のポーズをとってニッカりと笑うミカゲを見たレオルステイルは、

「ご苦労じゃったの、コレットの心は大丈夫じゃったか?」

言いながら、まだ横に眠っていると思わるコレットの方を見ると、既に起き上がって座り込んでいた。「コレット!!」

 セレスはまた、寝起きの人にはちょっとアレなんじゃないですかね?と言った音量でコレットの名を呼ぶ。

 するとコレットは、今まで見せたことが無い様な笑みを返した。

 雰囲気が変わっていた。

 天真爛漫で好奇心旺盛の人間の少女、と言う感じでは無かった。

 セレスは気付いていたかどうか分からなかったが、レオルステイルはすぐに気づいていた。コレットが、もう、以前のコレットではない状態になっている事を。

 レオルステイルが既にその事に勘付いているらしい事に気付いたミカゲは、

「実はコレットが『アリ・エルシア』だったんだち。」

と、申し訳なさそうに答えた。

 そして、

「コレットの心の中で過去の風景を見たち。昔の魔王城の頃だち。レオルとソフィアが『アリ・エルシア』に弓を習っていた頃だち。覚えているだちか?あの時の『アリ・エルシア』が今あちしらの目の前に居るコレットなんだったんだち。」

と、複雑な笑みを浮かべながら説明した。

 レオルステイルは完全には状況は飲み込めていなかったが、おおよその予測はついて居た様で、更なる混乱状態になっているセレスを横目にミカゲに提案する。

「とりあえずコレットは正常な状態で回復してきた、と言う事なのじゃろう?だったら、まずは全ての状況を整理するためにも一旦書架に戻るのじゃ。先ほど儂もこやつにある仮定の話をした所なのじゃが、他の皆にも聞いてもらいたい内容なのでな。」

言いながら、ミカゲの両腕を持って立たせる。

 横に座っていたコレットにも、

「と言う訳じゃ。セレスの事は既に知っておると思うが、色んな情報が過多になってくると混乱する体質なのでな、話をスッキリとまとめて理解させるためにも書架に戻らねばならぬのじゃ。」

レオルステイルは説明しながら手を取って、ミカゲの隣に立たせた。

 その様子をぼんやりと見ていたセレスはようやく我に返って、

「すまんすまん、本当鳥頭で申し訳ない!と言う事らしいので、ミカゲ、悪いんだけどまた竜になって街の方まで飛んでくれるか?母さんはオバさんに連絡しておいてくれよ?向こうは向こうで書架に戻れるだろうからさ。」

 鳥頭を自称する割には流石リーダーと言った様子でセレスは、テキパキとこれからの事を指示する。

 何だかんだで要所で頼りになるのはセレスかも知れないと、ミカゲは思っていた。

「なんか、いつも通りのセレス見てたら、あちし元気が出てきたお!」

 ミカゲは、ヤル気が出たぞ!的に腕をブンブンと回しながら、

「みんな!下がるんだち!あちしは今から竜になる!!」

と言い終わらぬうちに、3人が乗りやすそうなサイズ感で竜に変幻した。

 それを見てレオルステイルは、


「おお?なんぞミカゲ、ちょっと成長したんじゃないかの?コレットの心の中に入っている時に、何か刺激された事でもあったのじゃな?」

 ミカゲが見たと言う過去の記憶の中に、何かしらの成長のヒントがあったのかも知れないとレオルステイルは推察する。

「へへ!その辺はあとで教えるち!」

ミカゲは照れくさそうに笑いながら、セレスとコレットとレオルステイルを背に乗せた。

 それ以前は、ミカゲは竜になると完全に巨大な竜にしか変幻できなかったので、セレスがミカゲの背に乗るとちょっとした広い地面が空を飛んでる?様な状態になっていたのだが、今回の変幻では竜騎士と竜と言った感じの大きさで、乗っている人とミカゲの大きさのバランスがとても良い感じになっていた。

「本当!ミカゲ、変幻の大きさのコントロール出来るようになったんだな~。これならアタシも頻繁にミカゲに乗りやすくなったかも!」

セレスは完全に今後はミカゲを乗り物として使う気満々になっていたが、

「あちしは便利な乗り物じゃないちよ?」

と、早速ミカゲに釘を刺された。

「とりあえず、書架の近くの広場にでも降りてくれ。この大きさならアズワルド商店街の皆もそんなに驚かないと思うんだ。」

 セレスの指示でミカゲの身体がフワリと浮上する。

 世界樹の大きな枝と葉が、そよ風に揺れているのが足元に見えた。

 コレットは少し不安そうな顔をしながらセレスに掴まっていたが、後ろから支えるレオルステイルに頭を撫でられて安堵した。

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