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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第四章 ソルフゲイルの謀略
63/100

第63話 100年前

 それにしても・・・・

 墓所で一通りの作業を終えて、その場でへたり込んでいるベルフォリスは、ふと思い出した事があった。

 コレットの家に施されていた結界の事だった。

 あんなに巧妙に、この蒼壁の大陸随一とも言われる術者が総揃いしている面々の目の前と言っても過言では無い状況かで、全く気付かれること無く一家を惨殺する魔道をしかける程の術者は・・・・もしかすると・・・・。

と、思考を巡らせる。

 ベルフォリスには少し、こんな結界術を仕掛けられる人物に心当たりがあった。

 100年前のトトアトエ・テルニアでの銀狼族を巡る一連の戦で、ある術者の事を思い出していた。

 当時は、ベルフォリス自身はあの戦に加担してはいなかったのだが、トトアトエ・テルニアから脱出して来る避難民の話を聞く限りでは、非道い戦争だったことは(うかがい)い知り得ていた。

 あの戦は本当に一方的に国土を蹂躙され、蒼壁の大陸では数を減らしていた銀狼族を根こそぎと言っても良い程に攫われた。

 でも、あんなに警戒していたセレスだったのに、メルヴィの皆も総出で、そして当の銀狼族の面々もかなり警戒していたのに何故?トトアトエ・テルニアの国から銀狼族がゴッソリと居なくならなければならない様な状況に(おとし)めたのには理由があった。

 裏切者が居たのだ。

 その裏切者こそ、今回のコレットの家惨殺事件の真犯人だとベルフォリスは踏んでいる。

 多分、ソフィアステイルも同様の考えを巡らせているだろう。

 彼女もまた真犯人に出し抜かれた一人なので、当然腸煮えくり返っている精神状態になっているのは間違い無さそうな空気を(かも)し出していた。

「あれは、相当に怒り心頭って感じだよな~。」

 ベルフォリスは、声にならない呟きを漏らす。

 ただ、その呟きはソフィアステイルの耳に入っていなくても、心の奥底には響いていた。

「ああ、そうとも。私は出し抜かれたんだ、ヤツに!」

 ベルフォリスの呟きを心の中で感知したソフィアステイルは、当時の事をまざまざと思い出していた。

 当時、まだメルヴィ・メルヴィレッジがトトアトエ・テルニアとして機能していた時代。

 今から約100年前の事だった。

 あの頃は、割と近隣諸国との関係は良く、まだソルフゲイルとの関係も今ほど険悪なものではなかったと記憶している。

 それが、ある時一変してしまった。

 ソルフゲイルが侵攻してきたのだ。

 侵攻3日前までは、何もその兆候が見られない程に行動を隠蔽され続けて、メルヴィの民は気づけなかった。

 しかも当時、世界樹の守り人になっていたセレスには、特有の力であった未来予知が3日前からしか視えず、気付いた頃にはほぼ手遅れの状況だった。

 あんなにも手際良く事を運べるのは、裏切者の存在と頭の切れる軍師や指南役の存在が大きいと考えられるだろう。

 ソフィアステイルはそのセンしか無いと考えていた。

「更に間の悪い事に、当時はソラ殿もレオルも近くに居なかった事が、セレスを更に苦しめた事だな。かく言う私も、トトアトエ・テルニアの中に入れず、助力をするのも難しかった。」

 と言って、ソフィアステイルは一つの疑問の壁に当たる。

 何故?あの時、自分はトトアトエ・テルニアに入れなかったのだろうか?と。

 結界に当たった様な記憶が無かった。

 何と言うか、トトアトエ・テルニアに向かっていた所までの記憶はあるのだけど、国境付近で何かに遭遇したあたりからの記憶が欠損していることに気が付いた。

 もしかすると、そこで何かと対峙し、その時に記憶を奪われたかもしくは策略に嵌められた可能性があったのだ。

「もう、100年前からしてやられてたって事か!」

 苦々しい気持ちで吐き捨てる言葉は、空しかった。

 当時に気付いてさえいれば、今回の様な事は起こらなかった可能性もあったのだ。

「姉さんは気付いているのだろうか・・・・」

 今、世界樹の(ふところ)でコレットの回復に努めているであろうレオルステイルの心理に思いを馳せるが、その真理は当の本人の口から語られる機会が無ければ、知ることは叶わないだろう。

 それと、裏切者の存在。

 多分、その存在は元々、自分達に近しい存在だった可能性が高かったと、ソフィアステイルは感じていた。

 そんなに近しい存在だったら、今の今までどうして思い出せずに居たのか?と考えが及んでも良かった筈なのに、まったくと言って良い程その考えに至る事のない時間を過ごしてきたのだ。

「ソフィア、多分そいつはあの時、結界にブチ当たった時に僕らの記憶も封印した可能性が高いよ。」

 立ち止まったままの姿勢で考え込んでいたソフィアステイルの横には、ベルフォリスが来ていた。

「ベル・・・・お前当時の記憶が?」

言われたベルフォリスは、コクリと頷く。

「僕は、その時ソフィアの近くに居たからね、当然結界の事もそれなりに覚えているし、何よりソフィアが結界を破ろうとしている時に僕は何もしていなかったから、ソフィアよりも結界からの術をあまり浴びてなかったりするんだよ、」

そう言って、両手を見つめる。

 当時、トトアトエ戦役のあったその時、2人はセレスに助力するためにトトアトエ・テルニアに向かっていた。しかし、謎の結界に阻まれて、トトアトエ・テルニアの領内には入れなかったのだ。

 その、謎の結界を作ったと思われる(やから)が、今回のコレットの家族惨殺事件の犯人だと思って間違いないだろうと2人は確信していた。

 そして、その犯人はかつてトトアトエ・テルニアの中でもセレスに近しい存在だった可能性がある人物なのだ。

 今の今まで忘れていたのは、結界の術や裏切り行為をするにあたって、入念に準備してきた術式を使って徐々にセレスや近しい存在から自身の記憶を消して行ったのだろう。

 それはある意味、彼らつまりベルフォリスやソフィアステイル、ミカゲやセレスやレオルステイル、そしてソラ・ルデ・ビアスに対して一定以上の感情を持っていた事に他ならなかった。

 裏切者には、セレスやソフィアステイル達の感情を、出来る限り波立たせる事なく裏切って、記憶に残らない様に配慮したのだ。

 そうして100年が過ぎ、奪われた記憶が偶然とも言えるタイミングで戻ってきた。

それが、コレットの家にかけられた結界だった。

 封印されていたのかまたは、忘却の彼方に飛ばされていたのか分からないが、かつての仲間で、100年よりちょっと前までは共にトトアトエ・テルニアを盛り立てていた仲間の存在を、ソフィアステイルとベルフォリスは思い出していた。

 裏切者はメルヴィ人だった。

 いつでも周囲を気遣って、少し儚げだけど朗らかな笑顔を見せていた彼の存在を、2人は思い出していた。

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