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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第四章 ソルフゲイルの謀略
53/100

第53話 メルヴィの男

 皆が赤い月でワイワイと弓の錬成に勤しんでいた頃、ソラ・ルデ・ビアスの書架に一人残っていたグレアラシルは、暇を持て余しながら書架の本棚から自分が読めそうな本を持って来て、出入り口付近のテーブル席に座って本を眺めていた。

 本のタイトルは『初めての魔法』と書かれており、どうやら初めて魔法を習う初心者かまたは子供向けの魔法の本と言った内容が書かれている様だった。

 グレアラシルは見開きのページを5分以上かけて読み、めくってまた5分~と言った具合にじっくりとその本を読んでいた。

「ああああーーーー!!」

 突然グレアラシルは、本をテーブルの上に置いて叫ぶ。

「無理だーーーー!!」

 どうやら、『初めての魔法』の本の様に優しい語り口の魔法の入門書でも、グレアラシルでは魔法を使えそうなイメージが湧かなかった様だった。

 叫んだ後、試しに両手でリンゴの様な果物を包み込んでいる様な形を作って、何やら呪文を唱えて行く。

『この先にある果物屋さんのリンゴは何色?赤色?それとも青色?この手の中にある世界はどこにある?この部屋?果物屋さん?それともテーブルの上?』

 簡単な召喚魔法で、限られた空間に置かれている物体を手の中に移動させると言うモノらしいのだが、その呪文がこの子供に問いかける様な文面の様だった。

 熟練して来ると、もう少し簡易呪文と言うか短縮した言葉に置き換えたり、何も言わずとも頭で考えるだけで実行出来たりするのだが、魔法を習い始めた初心者の場合はこんな感じの長い文面を言わなければならない事から、魔法を極めると言うことがかなり面倒で大変と言う事が分かるだろう。

 そんな魔法を初心者のグレアラシルは、急に思い立って魔法の勉強し始めたのだが、最初の難関である物体の移動魔法に挑んでいる、と言った所だった。

 グレアラシルは手の空間の中に、今台所にあるリンゴを召喚しようとしていたのだが、肝心の台所と言う文言が入っておらず、例文である果物屋さんをターゲットにして発動させている様だった。

 これでは、魔法初心者のグレアラシルには難易度が高すぎるので発動しない可能性が高かったが。

「おお!何か赤い切れ端が手に!」

と言い出したので、どこぞかの近所の果物屋さんから何か、リンゴの切れ端?皮の様なものの召喚に成功した様だった。

 赤い切れ端はリンゴの皮が干からびた状態のモノだったので、多分果物屋さんのゴミ箱の中から召喚された?と考えた方が良さそうだったが、『初めての魔法』の本を読んで初めて自分で発動させた魔法が成功?した事を、グレアラシルはかなり喜んだ。

「おっし!これで俺も魔法使いの仲間入り!」

 意気揚々と、腕を天井に突き上げる。

 そしてまた、本を開いて出来そうな魔法を物色し始めた。

 出来れば、もう1回~2回と召喚魔法の基礎魔法を練習して欲しい所なのだが、初心者の多くが早く上達しようと思ってどんどん新しい魔法に挑戦したがるのが悪い所だ。

 グレアラシルも多分に漏れず、二つ目の魔法で失敗して練習の大切さを思い知る事になるのだろう。


 しばらくそんな感じで、グレアラシルの初心者魔法の練習を続けていると、不意に入り口のドアを開けようとする者が現れた。

 そう言えば、今日は店を閉めて出かけて行ったな~とグレアラシルは思い出し、今日は閉店と言う札を押しのけてドアを開ける。

 この、ソラ・ルデ・ビアスの書架のドアには魔法がかけられているが、外から開けようとしても開かないが、内側から開けようとする力には反応して普通にドアは開く仕様になっていた。

 グレアラシルがドアを開けると、黒い帽子に紫色のスカーフをしてグレーの服を着たメルヴィの男性が入ってきた。

「こんにちは。」

 メルヴィの男はそう言って、グレアラシルが座っていたテーブル席とは別の席の前に立つ。そして、店内を少し見渡した。

「今日は店主の方は居られないのでしょうか?」

そうグレアラシルに問いかける。

「実は今、所用で出かけていまして、今は俺が店番と言うか留守番をしている感じですね。」

 グレアラシルは頭をかきながら苦笑いをして答えた。

 そんなグレアラシルを見た男は、

「ああ、申し遅れました、私はメルヴィレッジ行政府で行政官をしている『アルセア・ティアード』と申します。今日は、トトアトエ・テルニア真王であらせられるセレスフィル・アズワルド・トトアトエ・テルニア様に折り入ってご相談をさせて頂きたく馳せ参じた次第だったのですが・・・・。」

と自己紹介をしつつ目的を告げながら、少し意気消沈していた。

 残念そうに肩を落とす姿を見たグレアラシルは、

「本当、タイミングが悪かったとしか言えないけど、今日はいつ帰って来るか分からないから別の日にまた来た方がイイと思うぜ?」

ちょっと無礼な口ぶりでアルセア・ティアードと名乗った男を慰めた。

「そうですね、本当に。私は昔から間が悪いと言うか、抜けている所があるんですよね。本当にそうします。所で貴方のお名前をうかがっていませんでしたが、お聞きしてよろしいでしょうか?」

 アルセア・ティアードは、目の前に居る割と筋肉質な大柄の男の名を尋ねた。

「俺の名ですか?俺は、グレアラシル。グレアラシル・ハサットだ。」

 グレアラシルの名を聞いたアルセア・ティアードは、何やら記憶の引き出しで似たような名前を見たような気分になった様で、しばらく逡巡し始めた。

 グレアラシルは、まさか自分の名前が行政府で見た事があるとかあとで何か思いもしない事で呼び出しを喰らう事になるのか?と、別の方向で何かを思い出すのに必死になっていた。

 しばらく後、急にアルセア・ティアードは手を打って、

「そう言えばクレアラシルさん、貴方の故郷はクレモストナカではありませんか?」

「そ、そうだけど・・・・?」

と、訝し気に答えるグレアラシルを見ながら男は、にこやかな笑みを浮かべた。

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