第44話 動き出す世界
スッキリと爽快な顔をしているセレスの顔を見たレオルステイルは、ミカゲの拘束具の事について話をしなければと思っていた。
今までミカゲの巨体や膨大な魔力を封印するために、いくつもの重い拘束具を付けていたのは皆の知る所だったが、その拘束具がこれ以降必要無くなるのだ。
「皆に聞いて欲しい事がある。ミカゲの拘束具の話じゃ。ミカゲは今日から世界樹の守護者になった訳じゃが、世界樹が拘束具の役割を果たしてくれるからの、今後は拘束具無しでいつもの角亜人で居られる様になった。変幻のする・しないはミカゲの意思次第と言う事になろう。」
レオルステイルがそう言うと、
「本当!?あちしもう亜人に戻る時拘束具付けなくてもイイんだち?!」
大きな体を揺らしながらミカゲが喜んだ。
「おやおや、そんな巨体ではしゃぐとあの街が崩れてしまうやも知れないぞ?ミカゲ。せっかくだから姉さんの言う通り、自分の意思であの亜人の姿に戻ってみてはどうかな?」
ソフィアステイルは、このまま竜の姿で居続けた場合の被害をさりげなく警告しつつ、ミカゲにいつもの姿への変幻をすることを促した。
ミカゲは、
「うん!やってみるち!あちしは自分であちしに戻るんだち!」
と言って、自分のあの元の姿を頭の中にイメージした。
どうやって戻るのか?の方法を何も伝授してはいないけれども、ミカゲは感覚的にそれを読み取って、実行に移した。
ミカゲが頭で年次念じ初めて数分後、ミカゲの竜の巨体が光り始め、みるみるうちに小さい竜の姿になっていく。
最終的には小さな光となった後、光の強さが落ち着くとあの、いつもの角っ子亜人の姿に戻っていた。
ただ、服はどうしても元の通りに戻らなかった様で、全身素っ裸で戻った。
「あちゃ~、これは駄目だお。いや、あちしは全然かまわないけど世間様が許さないって、昔オヤジさんに言われたち。」
そう言って、ソフィアステイルに向かって手を伸ばす。
「そうだね、確かに私は布地を持っているよ、何かで必要になるかも?と思って持っていたのだが、今の為に必要なモノだったのか。」
ソフィアステイルはミカゲに当てられたことに少し驚いたが、焦ることなく腰に常時括りつけているカバンから布地を取り出した。そして、素っ裸なミカゲに被せながら、何かの呪文を唱えた。
すると、今まではただの一枚の布地だったのに、いつの間にかミカゲがよく着ている様な服装になった。
「うわ~い!やっぱりソフィアは凄いんだち!ありがとうなんだち!」
ミカゲは大層喜んで、ソフィアステイルに礼を言った。
この、ミカゲが角っ子亜人に戻るまでの一部始終を見ていたセレスは、
「これで、あの置いて来た拘束具は必要なくなった訳だけど、向こうに戻ったら回収しないとな。何せミカゲの超魔力を常時封印していられるような代物だからな。あのソルフゲイルが目を付けない訳が無い。」
と、ため息交じりにこれからやる事の面倒くささを嘆いた。
かれこれ100年以上前からソルフゲイルに目を付けられて、安心して過ごせない日々を送り続けているこの現状を打開して、平穏で平和で静かな暮らしをしたいとセレスは毎日思っているのだが、いかんせん奴らの方がしつこくネチこくやってくるので、流石に辟易しまくっていた。
「ああ、そう言えばセレス、『門』で移動中にチラりと見えたんだが、お前の仲間とやら、これから非常に危険な目に遭いそうだ。なので、ベルフォリスが到着するのと同じ時間に『門』で移動しようと私は思っているのだが、レオルもそれで良いかな?」
ソフィアステイルが何かを思い出したように提案する。
セレスの仲間、つまりコレットとグレアラシルの事を言っているのだろう。
「多分・・・アタシが留守の間に総務大臣の陰謀位暴いておけって言ったのを、まともに捜査して何か危うい状態に陥っている可能性も・・・・あるかも知れない。」
セレスは頭を抱えて、また自問自答の状態に入りそうになった。
「これセレス、お前の悪い癖じゃぞ?それは。自分の中だけで悶々としていても解決する訳無かろう。幸い、今はこの様に儂やソフィアやミカゲも居る。皆で案を出し合ったら解決策を見出す事も可能だと思うぞ?」
レオルステイルは、現在進行形で悪い癖を実行中のセレスの背中を叩いて喝を入れた。
セレスは一瞬驚いて目を白黒させたが、久しぶりの母の愛に触れ、涙が出そうになった。
「わ、分かってるさ、そんな事。でもアタシが押し付けた事なんだ。アイツらに何かあったらアタシは・・・・」
「はい!終わりだち!セレス!だったら早くみんなの所に戻るんだち!」
セレスが煮え切らない事にしびれを切らしたミカゲが、セレスに更なる喝を入れた。
「そうそう、そうだよ。善は急げさ。まずは『門』を開いて~皆乗るんだよ。そしたらもう、瞬きの時間であの書架に入ろうとしているベルフォリスの背後に到着するからね。」
ソフィアステイルが早速『門』をひらく。
そこにセレスやレオルステイル、ミカゲも乗り込んだ。
「あちし、エルフじゃないけど大丈夫なんだち?」
乗る時ミカゲはソフィアステイルに尋ねたが、
「な~に、ミカゲ程の魔力を持っている人は、むしろ『門』の方が怯える位だから大丈夫さ。」
とソフィアステイルは答えて笑った。
『門』が閉じ、世界樹の傍らから消える。
今頃もう、あのソラ・ルデ・ビアスの書架に着いている頃だろう。




