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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第三章 世界樹の守護者
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第22話 新しい部屋

 ニーアーライルはその後、最初に現れた書架の入り口付近に立つと、

「じゃ、セレス。次また会える時は出来れば、今日みたいな穏やかな日だと良いね。」

と言って、まるで空気に溶けるかの様に消えた。

 そう、消えたのだ。

 この技こそが疾風の技と呼ばれる瞬間移動の御業(みわざ)だった。

 術者が一度訪れた場所に魔法のマーキングを施せば、あとは何度でもいつでもどこからでも、どんなに遠く離れていてもその場所に行けると言う技なので、ソルフゲイル辺りに知れたらもうタダでは済まないと言うか、世界中の疾風の技を使える銀狼族が全て狩りつくされる可能性すらあるのだ。

 ただ、そんな技なので逃げるのは得意だろうし、どんなにこの蒼壁の大陸の中で追いかけっこをしていても、一瞬で別の場所に移動してしまう技の前では、馬車と黒竜に乗る事でしか移動が出来ないソルフゲイルでもかなり難しい所業だろう。

 とりあえずセレスは、そろそろ荷物を持って戻って来るであろうグレアラシルの為に、ダイニングキッチンの隣の物置にしていた場所の隣に、ちょっと位なら空間をいじっても大丈夫そうな隙間を見つけたので、そこをグレアラシルの部屋にする事にした。

 どうやら炊事等々家事が得意らしいので、台所の近くに部屋が合ったら結構楽しんでくれそうな気もしつつ、こんな所に部屋がある事に不満を持たれるだろうか?などの一抹の不安も抱いたが、この場所しか今は空いて無いんだ!と自分に言い聞かせて部屋を作って行った。

 最初は苦戦すると思われていた部屋の形成だったが、意外とすんなり部屋程度の空間を作ることが出来たので、セレスは額に滲んでいた汗を拭った。

 家具などは無く、これから色々と準備しなければならないけど何とかなるだろうと思った。一つ不満が出そうだと思ったのが、現段階ではその部屋には窓が一切無い事だった。

 窓があれば、今だいたい何時頃で、天気は晴れているのか?それとも雨が降っているのか分かるだろう~と言う事で、これまた少し部屋の壁の空間を(ねじ)って窓を作る。

 この窓は実際はこの建物の屋上に出来ている窓なので、ちょっと角度がオカシイと言うか垂直な壁にある窓とは違った光景が目に入るかも知れないが、それでもまぁ面白い趣向なのでグレアラシルも納得してくれるだろう?と、自分を先に納得させた。

 部屋に対して色々とやっているうちに、書架の呼び鈴が鳴る。

 今度こそソルフゲイルの魔導士云々か?!と思ってセレスは書架の入り口にやってくると、そこに居たのは荷物をかかえたグレアラシルの姿だった。

「姐さん!酷いっすよ・・・・書架の入り口に鍵をかけるなんて・・・・」

と、寂しそうな声で言うグレアラシルに、

「あ、悪い悪い!実はいつもこの時間になるとソルフゲイルの魔導士共が書架に嫌がらせをしに来るんでね。鍵をかけて入って来れ無くしているのさ。」

と、鍵をかけていた理由を説明した。

 グレアラシルは。

「何だ~、そうだったんですね!なら良かったっす!」

と、それ以上の事は聞かずに書架の中に入って行った。


 セレスは、グレアラシルにさっき作ったばかりの部屋を見せると、グレアラシルはいたく感動していた。

 荷物を取りに行った部屋~今まで住んでいたアパートの部屋よりも良い!と言うのだ。

「一体どんなボロ家に住んでいたんだか・・・?」

とセレスが問うと、

「賞金稼ぎギルドのギルド長が運営するアパートなんす。独り身の男性ギルドメンバー専用の言わば独身寮みたいな所なんですが、家賃が恐ろしく安かったんで稼げない時は非常に助かってたんすよね~・・・ただ」

「ただ?」

「恐ろしく安いので変な虫が出たり、時々レイス系(心霊系モンスター)が出たり、部屋の壁が薄い所為で隣の部屋からの騒音は絶えないし、夏は暑いし冬は寒いし~で、普段はあまりあの部屋で過ごす事は無かったっすね~。」

そう言って、かつての部屋が最悪だった状況を話した。

 セレスは、それは大変だったな~と思いながら、

「この部屋はちょっと窓から見える風景の角度がオカシイ以外は、割と普通だと思うぞ?あと、シャワールームはダイニングルームと客間の間にあるから、そこを使ってくれ。」

 そう言いながらシャワールームの場所まで連れて行と、更にグレアラシルは感動していた。

「本当、この建物は凄いと言うか、魔法の技術の粋を集めていると言うか。俺の住んでたあのアパートは風呂関係は一切無かったんで、水魔法が得意なヤツに水ぶっかけてもらったり、銭湯に行くしか無かったんすよね~!」

と言いながら泣いていた。

「って!どんだけ貧相な?いや、大変な生活をしていたんだお前は!?」

 セレスはグレアラシルの今までの生活環境があまりにも酷かった事に、かなり驚いていたのは事実だった。

 また、今のこの自分の暮らしがいかに恵まれていると言うか、魔法の扱いに長けると言う事は生活水準をこうも上げてくれるものだったのか?と、自身の魔道の心得や技術力が実は相当高かった事を改めて実感したのだった。

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