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*** 98 救済部門組織改革 ***

 


 翌日、3人の神界トップは最高神政務庁にて極秘裏に会合を持った。


「あのタケルは凄まじい努力の末にレベル700にまで到達していたとは聞いてはいたが、まさかあそこまで激しい鍛錬だったとはな……」


「あれが暴虐世界では日常の戦闘だというのですね……」


「確かに毎日アレを見せつけられていれば、天使たちも戦闘行為というものに耐性はついていくのでしょうな……」


「それにしても凄まじき男よのう……」


「我ら3人を前にしても全く動じない胆力は、あの鍛錬で培われたのでしょう……」


「E階梯も8.2とは。

 この数字は神界、いえ天界最高峰でしょう」



「ところであの映像やタケルの話は公開されるのですか?」


「いや、今しばらくの間を置こうではないか。

 少なくとも今の銀河出身の天使たちや神たちが過半数を超えるまで待とう。

 一部の部門トップたちには見せてもよかろうが」


「我らの方針が正しかったとわかってほっとしましたの」


「その通りだ、一気に体調も戻ったわい……」


「あのオーク族やAIたちに高度魔法使用権限を与えるのは如何いたしましょうか」


「それも今しばらく待つことにしようか。

 やはり銀河出身の神たちが十分に増えてからの方がよかろう。

 まあ我らも元を正せば銀河出身なのだがの、はは」


「はい」



「ところで、大切な高度魔法継承者となる土木部門は、予算も人員も大幅に増やすべきではありませんか?」


「本来業務を続けてくれている天地創造部門と知性付与部門もですな」


「そうだの、予算も出来たし土木部門は予算を5倍にして現在の5万人体制を10万人体制にしてもよかろうな。

 天地創造部門と知性付与部門も予算を5倍にして人員を倍増させるとするか」


「そして土木部門から救済部門への出向者も500人から3万人に増やすこととしましょう」


「タオルーク部門長や部門幹部には、秘密裏にあの映像を見せてやりましょうか」


「はは、タオルークやその部下たちも、さぞかし驚くだろうの」


「ははは、まあ我々があれほどまでに驚いたのですから」


「それに映像だけでなくあのタケルの話は実に衝撃的だったしのう……」


「3000万年近い生で最大の驚きでした……」


「あの男の考えの深さにも驚かされたわ」


「あれこそがまさに深謀遠慮、いや『神謀遠慮』と呼ぶべきものなのでしょう……」


「あの男を早く最高神、いや最高天使の座につけたいものよのぅ」


「「 そのとおりですな! 」」




 そして数日後、神界土木部門部門長タオルーク・ゲオルギーと幹部5人は、秘密裏に最高神政務庁に呼ばれたのである。


 何事かと思って緊張していた部門長たちは、にこやかに迎えてくれた最高神さまたちの顔を見て安心した。

 だがその後まずあの映像を見せられて生涯最大の驚愕に突き落とされたのである。

 猫人族系と犬人族系の神のしっぽは最大限に膨らんでいた。


 そんな土木部門幹部たちを見て、神界のトップ3人はドヤ顔にならぬよう必死で表情を取り繕っている。



 映像の後は休息に入ったが、やはり真っ青になった土木部門幹部たちは軽食も喉を通らなかったようだ。


 だが、その後タケルが懇々と語る映像が流され、自分たちの部門に話が及ぶと、全員が滂沱の涙を流し始めたのである。

 タオルーク部門長は漢泣きに号泣していた。



「というわけでタオルークよ。

 土木部門の予算は5倍にするので、人員を早急に倍増の10万人体制にして欲しいのだ。

 その上で救済部門の神石充填所への出向者を500人から3万人にしてくれ。

 なにしろそなたたちは、救済部門の者たちと並んで将来高度魔法技術の継承者となり、神界、いや天界の宝となる身だからの。

 よろしく頼むぞ」


 タオルーク部門長の返事は号泣のせいでよく聞き取れなかったが、それでも平伏していたので了承はしたのだろう……



 こうして救済部門の神石製造能力は飛躍的に拡大することになったのであった。


 タケルもドヤ顔にならぬよう必死で表情を取り繕っている……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 救済部門から銀河宇宙に発注されていた500キロ級セミ・リゾート天体が完成したために、タケルはエリザベートや最高神政務庁の了解を得て、新たに30万人の天使見習い心得を雇い入れた。

 E階梯が高く、学識も意欲も持つ銀河人たちが大量に救済部門所属となったのである。


 この措置に伴い、救済部門では2つの組織改革が行われた。

 一つ目は『脅威天体対応局』の人員大幅増である。

 当初は『脅威天体観測部』『単独白色矮星排除部』『連星系白色矮星排除部』『大質量恒星形成抑制部』『重金属資源回収部』は各部署2000人体制ほどで任務を行っていた。

 例えば『単独白色矮星排除部』は各100人体制の課が20課体制で稼働しており、年に40個ほどの白色矮星を銀河系外に排除している。


(3次元時間では3日で20個。

 この白色矮星排除はどうしても3次元空間での作業も必要になるため、これに2日が充てられ、3.5次元空間では60日の準備観測期間が用意されている)


 その『単独白色矮星排除部』は、その人員を一気に5倍の1万人体制にされた。

 これによって、3次元時間3日につき100個もの白色矮星排除が可能になった。

『連星系白色矮星排除部』も同様の拡充を行ったために、救済部門全体では3次元時間3日につき200個、年間で2万4000個もの排除体制になっている。


 これらの白色矮星もすべて銀河系から5000光年以上離れた深宇宙で衝突されられており、『重金属資源回収部』がやはり1万人体制で重金属回収を行い、年間1万2000もの極超新星爆発ハイパーノヴァが発生するようになった。


(銀河系から250万光年離れたアンドロメダ銀河では、250万年後にさぞや驚くことだろう。

 なにしろ同じ局所銀河群に含まれる天の川銀河周辺部に於いて、年間1万2000回もの極超新星爆発が毎日ほぼ規則正しく観測されるのである)


 因みに『重金属資源回収部』の活躍により、重金属の塊である溶融小惑星も年に120万個得られるようになったが、タケルはこれを放置していた。

 もちろん、100年後にレベル600に至った高度魔法能力継承部隊に丸投げしようと思ってのことである……



 また、救済部門には『一般自然災害対応局』も創られた。

 この局は『各恒星系観測部』、『神界認定世界災害対応部』、『神界未認定世界災害対応部』に分かれており、それぞれ1000人、2000人、1万人が配属されている。


『神界認定世界災害部』は、各恒星系から銀河連盟への救済要請に基づいて出動し、寒冷化、火山噴火、飢饉、小惑星衝突危機、海水面上昇や下降などについて救済を行う。

『神界未認定世界災害対応部』は『各恒星系観測部』の観測とトリアージに基づいて未認定世界の自然災害救済を行うことになっていた。


 だが……

 銀河連盟経由で『神界認定世界災害対応部』に救済を要請してくる恒星系は全くいなかったのである。

 これは、銀河技術をもってすればいかなる恒星系政府も災害対策は可能であり、よほど突発的に発生した激甚災害でない限り対応は可能だったからと思われた。


(または、銀河連盟報道部の配信により、自分たちで対処出来ずに神界救済部門に救済を要請したことが銀河全域に知られることになるのを躊躇したか、超新星対策に忙しい救済部門に遠慮したかのどちらかと思われる)



 これに対し、タケルは連盟報道部の配信番組に出演して銀河世界に訴えた。


「銀河宇宙のみなさま、日頃は神界並びに神界救済部門へのご支援誠にありがとうございます。

 さて、神界救済部門ではこのたび『神界認定世界災害対応部』を発足させ、超新星災害以外のあらゆる自然災害を救済させて頂く体制を整えました。

 ですが、発足以来1か月が経過したにも関わらず、銀河連盟を通じた出動要請が1件も入っていないのであります。

 察するところ、これは皆さまがご遠慮なされているということなのでしょう。


 ですが皆さま、資源と労力の節約という観点からもお考え願えませんでしょうか。

 たとえば皆さまの母惑星が小氷期を迎えて寒冷化対策が必要になられたとします。

 その際には、皆さまは小型の人工太陽を5基ほど製造されるか購入されて対策されるでしょうが、それはかなりのコストと労力を伴うことと思われます。


 ですが、神界救済部門には、恒星間転移能力を備えた人工太陽が既に1000基備蓄されております。

 また温暖化により海面上昇に悩む恒星系の皆さまのために、深海に沈めて海水を吸収して重層次元倉庫に蓄える転移装置は5000基用意されています。

 その重層次元海水倉庫では、抽出の魔法により海水から微生物、塩化ナトリウムを分離して飲用に適した水資源を得ることも出来ます。

 この水は、旱魃や山火事に苦しむ世界を救うものにもなるでしょう。


 ところが今、皆さまがご遠慮為さっておられるせいで、これらすべての機器が倉庫で埃を被っているのですよ。

 救済部門の人員もあらゆる訓練を終えて、実践の場を待ち望んでおります。

 ですので、どうかこれら既に存在する機器をご活用願えませんでしょうか。


 銀河連盟を通じた神界救済部門への出動要請をお待ち申し上げております……」



 こうして間もなく、銀河の神界認定世界300か所から出動要請が入るようになったのであった。


 もちろんこれは救済部門の人員にとって、得難い実践訓練の場となったのである。


 彼らの救済活動は、救済終了後に諮問委員会などで徹底的に検証され、その後の救済に生かされていく態勢も整えられている。




 また、『神界未認定世界災害対応部』も活動を開始した。

 この部はヒト族惑星の紛争停止は後回しにしてタケルの特別部隊に任せることになっており、当面は他種族の自然災害救済に注力することとなっていた。





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