*** 97 救済のための訓練 ***
「また、わたくしはその総合レベルを上げるために、『魔法生命体創造』という高度魔法を使ってオーク族のオーキーを創造して彼と鍛錬をしています。
そうしてオーキーがリポップする際には、常にわたくしと同じE階梯6.3、同じ総合レベル738で創出されるのです。
つまり、オーキーに魔法マクロと許可を与えれば、彼もすぐに高度魔法技術継承者になれるのですよ」
「「「 !!!! 」」」
「だ、だが、天族は天使たちに高度魔法技術を継承するように言っていたのだろう……」
「彼らは天使ではあるまい……」
「もしも今、天族が再び降臨されたならば、100億年前と同様マリアーヌとオーキーを心正しき高度魔法継承者として天使に任命されるかもしれませんよ。
彼らには十分にその資格があると思います」
「「「 !!!!!! 」」」
『 !!!!!! 』
「さらに、ご指示に従わずに高度魔法のための鍛錬もせず、神を僭称して何もしてこなかった天使たちを解任して天界から追放するかもしれませんし」
「「「 !!!!!!!!!!!! 」」」
「わ、我らも魔法能力を上げるための鍛錬をすべきだと言うのか……」
タケルが微笑んだ。
「いえ、ゼウサーナさまは既に鍛錬を始められておられます」
「なに?」
「いつも神石充填所で神石に神力を充填して下さっているではないですか」
「「「 !!!! 」」」
「さらにその際には曾孫さんたちを連れて来られて『お前たちも早く大きく強くなって、こうして神力を使えるようになるといいの』と仰られていらっしゃいました。
あれは素晴らしい幼児魔法教育ですね」
((( ………… )))
「最近ではわたしの神域幼稚園では、園児たちに初歩の体術訓練や魔法訓練も始めています。
ということでですね、これからは皆さんも休暇でリゾートを訪れる度に、ほんの少しずつでも神力の充填を行われてみられたらいかがでしょうか。
もちろん部下の方々にも推奨されて。
天族も努力されている方々を蔑ろにはされないと思います。
そのために神族の方々用の『高級リゾート天体』にも神石充填所を作っておきましょうかね。
もちろんあのアルバイト所や土木部門の方々と同様に、充填率に応じて報酬も出すように致しましょう」
「そ、そうか……」
エリザベートが微笑んだ。
「それでは妾も子供たちを連れて神石充填所に赴くとしようか。
ところでタケルよ、そなた最近自分のE階梯をチェックしたかの」
「いえ?」
「そなた、E階梯が8.2にまでも上がっておるぞ」
「ええええええっ!」
「どうもE階梯は他者を幸福にさせたときにも上がるようだの。
まあ銀河連盟の配信を通じてあれだけ銀河宇宙の民を喜ばせたのだから、当然のことだろうの♪」
「は、はぁ……」
ゼウサーナがタケルに向き直った。
「ところでタケルや……
そなたは銀河の自然災害世界を救済した後には、紛争世界も救おうと考えているのかの……」
「はい」
「そ、それでそなたや救済部門の職員たちの精神状態は大丈夫なのか?
暴虐世界に触れてPTSDを患ったりはしないのか?」
「現在は自然災害世界の救済に注力していますが、これは人員と資金と資源と生産力と技術さえあれば容易なことだと考えます」
((( ……あれが容易なことだと言い切るのか…… )))
「ですから、自然災害救済に目途がつけば、より困難な暴虐世界救済を始めたいと思っています。
そのために、職員の教育と訓練も開始していますので」
「そ、それはどのような教育や訓練なのだ?」
「みなさまは、わたくしとオーク族、救済部門の全職員たちの戦闘訓練を御覧になられたことは無いと思います。
あの場では『総合レベルを上げるためには格上の相手を攻撃するとよい』という趣旨のもとに、多くの人員が遥かな強者を殴りつけて攻撃しています。
もちろん強者たちは強者であるが故にほとんど痛みは感じていないのですが。
そして……
彼らは、今までの生涯に於いて、『誰かを殴って攻撃する』などという経験は一切持っていない者ばかりなのですよ」
「「「 !!!!! 」」」
「それだけではありません。
彼らにはわたくしとオーク族の族長との戦闘訓練も見学させています。
あの訓練ではわたくしか族長のHPがゼロになるまで、言い換えればどちらかが死亡するまで戦い続けているのです。
いえ、死亡してもすぐに復活してまた戦い続けています。
わたしも平均1日に3回は『死んで』いますしね」
「「「 !!!!!!!! 」」」
「そうした戦闘を毎日見ているおかげで、職員たちもかなりの暴力耐性がついてきていると思われます。
さらに暴虐世界では実際に戦闘になることもあるでしょう。
その際に敵を殺さずに無力化するには、隔絶した戦闘能力と魔法能力が必要になります。
レベル差が10や20ではこれは難しいでしょう。
最低でも200、出来れば300近いレベル差が必要になります。
こうした戦闘の担い手として期待されているのがまずあのオーク族なのですよ。
彼らはわたくしが創った神力生命体ですので、決して死にませんし。
もちろん救済部門職員の中からも戦闘員は出るかもしれませんが、たぶん職員10万人の内1000人も出ればいい方でしょうね」
「そ、そこまで考えて行動しておったのか……」
「はい」
((( ………………… )))
「そこで2つほどお願いがございます」
「聞かせてくれ……」
「わたくしの秘書AIであるマリアーヌは既に上級の魔法使用権限を頂いています。
そして現在、マリアーヌの部下となる中級AIのハードウエアを銀河宇宙に1億体ほど発注しているのです」
「「「 !!! 」」」
「新造のAIハードウエアにソフトウエアや初期設定を授けるのは、本来最高神政務庁の主任上級AIの仕事と聞いているのですが、これをマリアーヌが出来るようご許可を頂戴出来ませんでしょうか」
「そ、そなたはその1億体ものAIを救済任務に投入しようと言うのか……」
「ええ、なにしろ未認定世界は9000万もありますからね。
将来的には彼女たちを個別惑星の総督もしくは副総督として、各世界に派遣したいと考えています」
「「「 !!!!! 」」」
『!!!!!』
「救済部門の天使たちをこの任務を就けるとなると、交代要員も含めれば数億の人員が必要になりますからね。
それにAIならば不眠不休で働けますので。
ですので、その中級AIたちにも中級魔法使用権限を与えることも、ご許可願えませんでしょうか。
救済に当たって、現地の避難所建設や治水工事などの作業を行わせたいと思います」
「そ、そうか……」
最高神閣下が前最高神閣下と主席補佐官を見た。
2人とも頷いている。
「わかった、許可しよう……」
「ありがとうございます。
それから、2つめのお願いですが、あの『未認定世界に於いて現地人との接触も銀河技術を見せることも禁止する』というルールを破棄して頂けませんでしょうか」
((( ………………… )))
「いえ、公式に破棄を宣言する必要までは無いかもしれません。
『救済部門が未認定世界の救済を行う際には、厳重な監視と監督の下、例外的にこれを認める』という措置でけっこうです。
わたくしどもには能力も智慧も勇気もございますので」
「そ、そうか……」
「まあ当初は黙認という形でも構いませんが」
「わ、わかった……
当初は黙認として、そのうちに通達を出すこととしよう。
このことは神界監査部門と調査部門にも伝えておく」
「ありがとうございます。
ところで、念のため銀河の高等教育機関で使われている『初期銀河系史』のテキストも20時間ほどにまとめてあります。
その中には、『銀河人との過剰な関りを禁ずる』『未認定世界に於いて現地人との接触も銀河技術を見せることも禁止する』という神界慣習が何故成立したのかを考察する論文も含まれています。
よろしければ皆さまのAIに転送いたしますけど、如何されますか?」
「是非頼む……」
「マリアーヌ、よろしくな」
『畏まりました』
「そ、それでのタケルや、あの土木部門から救済部門への出向者たちを増やしてもよいかの……」
「高度魔法能力継承者育成になる上に、救済任務にも役立ちますので何万人でも大歓迎です」
((( ………… )))
神界のトップ3人は、その日タケル神域のホテルに泊まり、翌朝タケルたちの戦闘訓練を見学することにした。
もちろん彼らは天使たちが戦う姿など見たことはなく、ましてやタケルがボロボロになって命の加護まで発動させている姿などは見たことがない。
そうして、またも蒼白な顔をしたまま慄いていたのである……




