40話 穴を抜けると、そこは
外壁の穴を抜けて、私の目に映ったのは、
「どこ、ここ?」
とてもとても、のどかな風景でした。
あたりが緑の草原で、その広い草原の所々に建物が建っている。
右手側には、水辺が広がっていて、船付き場には、小型の船が停められている。
そして、草原の奥の方には、緑色の木々が生い茂っていた。
驚きなのは、いままで何から何まで、お菓子で出来ていたのに、穴を通ってきたら、お菓子で作られたものが何もない。
家も、草も、木も全て。
外壁の中とは違い、とても自然豊かな場所である。
もちろん、甘いお菓子のにおいもしてこない。
いやいや、ほんとに、ここどこ?
さっきまでテーマパークだったのに、全く違う雰囲気の場所に出たし。
なんだか、テーマパークの裏側を見てしまったみたいな気分。
「お菓子の国にも、こんな落ち着いた場所があったんだな」
「そもそもここって、観光客が入っていいところなの?」
「駄目、だろうな」
だよね!
そうだと思った!
観光マップにも、こんな場所があるなんて、書かれてなかった。
ということは、観光地ではない場所ってことになるよね。
隠しスポットかなって、ワクワクしてたけど、ここまで雰囲気というか、空気感が違うとそうではないことが分かる。
絶対入っちゃダメな所じゃん。
もしかして、これって不法侵入になる?
「ねぇ、戻った方がよくない?」
「そうだな…、問題を起こすのは、得策じゃない」
完全に違う場所に迷い込んだ、私とネロは、問題を起こすのはまずいと思い、
誰にも見つからないように、先ほど入ってきた外壁の穴へ戻ろうとする。
「こんなところに人なんて、珍しいわね」
…見つかってしまった。
あぁ、仕方ない。
「すみませんでしたぁぁ!!」
私は、声のする方に振り返り、勢いよく頭を下げた。
私の声と動きに、声の主と、ネロがビクッとする気配を感じたが、そんなの知ったことか。
それに、ネロは謝る側でしょうが。
「ほんとにすみませんでした。チョコレートの森の外壁に、穴が開いていて、反対側に光が見えたので、なにかの隠しスポットかなって思って、こっち側に来てしまったんです。あの、ほんとに、悪いことしようとか、そういう訳ではなくてですね。間違えてきてしまったというか…。いえ、来たくて来たんですけど。えっと、あの、はい。すみません。」
私は、何を言っているのだろうか。
言えば言うほど、怪しく見えてくる。
この状況、デジャブだ…
あぁ、パーソナルカード取得の圧迫面接を思い出すなぁ。
あのときは、ほんとに怖かった。
不法入界で犯罪者になるところだったし。
そして今回も、不法侵入になってしまうのか…
こんなこと、ばっかり。
「ぷっ…」。
ん?
頭の上から笑い声?
いままで下げっぱなしだった頭を上げる。
「そんな必死に謝らなくても、大丈夫なのに。」
声の主は、ふんわりと甘そうに、そして美しく笑っていた。
蜂蜜のような金色の長い髪を、上の方で一つに括っており、その髪の毛がさらさらと風になびく。
光が当たると、より一層キラキラしてきれいだ。
そして、金の瞳は、優しく細められている。
服装は、動きやすそうな、白いインナー、薄い青色の短パンオーバーオール。
腰の所に金色の太めのベルトをしている。
あぁ、異世界にきて、何度この感覚に陥ったのだろうか。
めちゃくちゃ、美人でお人形さんみたいな女の人。
うわぁ……。
「切り株がずれていたのは、私のミス。ごめんね。私が、あの抜け道を使って、お菓子のエリアによく入るの。それにしても、まさか、森エリアの外壁まで、歩き切る人がいるとは思わなかった。ずいぶん歩いたんじゃない?」
確かに、大分歩いた気がする。
景色があまり変わらないから、どれだけ歩いたか、正直分からないんだけど。
「ここは、どんな場所なんだ?」
「雰囲気は全然違うかもしれないけど、ここもミシュティよ。」
「入っちゃいけない場所でしたか?」
「そういうルールはないよ。そうは言っても、この場所に来られるルートも、実はあの森エリアの外壁の穴しかないのだけどね。」
それは、この場所へ観光客が入ることは、想定されてないってことじゃないの?
つまり、入ってはダメなのでは?
「大丈夫、大丈夫!私もこの場所に、外部の人がいるのに興奮しちゃっただけだし、お菓子の国が観光地になって、今まで指摘されなかった決まりを、ちょっとだけ、つついちゃっただけだから」
だから、それつついちゃダメなやつなのでは??
お人形さんの言葉は、何も安心できる要素なくないか?
そしてネロは、いつも通り、我関せずといった様子。
おいおい…。
ハチの巣穴だったら、どうしよう。
さされる未来しか見えないんだけど。
私は、つついてしまった決まりが安全なことを願うしかなかった。
読んでいただき、ありがとうございます
よろしければ、
評価、ブックマーク、感想等いただけると
嬉しいです!
よろしくお願いします!




