38話 一日の終わりに、ネロと
ベニエさんの好意により、私とネロは、本日の寝る場所を確保することが出来たのである。
案内してもらったのは、二階建ての一軒家。
もちろん、お菓子の家であり、いろんな形のビスケットとクッキーを組み合わせてできている。
「観光職員の方たちは、ご自身で宿をとられることも多いんですが、こちらをお貸しすることも、よくあるんですよ。」
そのおかげで、今回はホントに助かりました。
次回の旅行は、宿のことを第一に考えてやる。
「お部屋は一番奥を使ってください。夕飯はどうされますか?」
「ありがとうございます。えっと、いただいてもいいですか」
「はい!もちろんですよ。用意してきます。」
そういって、ベニエさんはキッチンの方へ駆け足で行ってしまった。
「ネロ、今日はどうだった?」
「興味深いものがあったな」
「魔力の宿った、飴や建物のこと?」
「あぁ、正直見たことがない。どういうことが起きると、あの飴細工の生物ができるのか。何か別の力が働いているのかもな。」
考え込むネロを私は、じっと見つめる。
まったく、観光とは、別の所に興味を持っていかれているじゃん。
でも、不思議な力は、私も気になったんだよな。
滞在中に何かわかるといいけど。
「お待たせしました」
ベニエさんがトレイを持って戻ってくる。
おぉおぉ!
トレイの上にのっていたのは、シロップたっぷりにアイスを添えたフレンチトースト。
さすが、お菓子の国って感じだ。
「いただきます!」
「どうぞ」
フレンチトーストにナイフを入れる。
ふんわりとしたパン。
切り分けて一口食べると、口の中でとろけるようだ。
「はい、ネロ」
「自分で食える」
「いいから」
私は小さめに切り分けたトーストをネロの口の中に入れた。
口いっぱいにして頬張るネロは、とてもかわいい。
そうして、甘い甘いフレンチトーストを私とネロは、平らげたのだった。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうございました」
ネロ、ちゃんとお礼言えるじゃん、なぜ私のときはないのか…
そもそも、ネロにお礼を言われるようなことをしてないや。
「今日は、おつかれでしょうから、ゆっくり休んでくださいね。」
「ありがとうございます」
部屋の奥の方へ行くと、扉がいくつかある。
ベニエさんは、一番奥の部屋と言っていたのでそのまま奥へ。
扉を開くと、ホテルの一室みたいになっていた。
シャワーも付いてる。
それにしても、この家の造りは、大分助かる。
他の人に気を遣わずに、シャワーを浴びることができるし。
「ネロ、シャワーは?」
「俺は後でいい」
「あぁ、そう?じゃあ、先に行ってくるね」
ネロに、断りを入れて、シャワーを浴びる、
つかれたぁ…
一日中歩いていたからかな。
仕事と言いつつも、思いっきり楽しんでしまった。
明日は、他のエリアに行って、引き続き観光をする。
今のままだと、リピーターが減っている直接的な原因が分からない。
明日何かわかればいいけど…。
シャワー室から出るとネロが窓の外を見ていた。
ネロは、良く窓の外を見ている気がする。
すごく遠くの方を見つめて。
「うわぁ」
「ネロ、早くシャワー浴びて」
ネロを抱き上げ、シャワー室に連れていき、優しくお湯をかける。
「おい!自分でやる」
「はいはい」
「聞いているのか!」
「そうだね」
ネロの言葉を聞き流し、ネロの体を洗っていく。
動物ってやっぱ癒しだよね。
そういえば、猫はお風呂が苦手ってどこかで聞いたような気がするけど、ネロは違うのかな?
まぁ、すごく暴れてはいるんだけど。
全て洗い流して、タオルで優しく全身を拭くと、タオルからモゾモゾと顔を出すネロ。
とても不機嫌そうに睨みつけてくるけど、それがいつものネロらしい。
ネロを腕に抱えて、ベッドに横になる。
もふもふの抱き枕みたいで温かい。
「おやすみ、ネロ」
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