20話 水、それは脅威であり、必需品
拠点探しを始めてどのくらい経ったのかな。
歩くこと歩くこと、ずっと砂浜なんだけど。
その間、ネロはめちゃくちゃ大人しく私についてきていた。
今、私が探しているのは、雨と風が凌げる穴。
次の工程である、水の確保と火の確保をするために、砂浜沿いに見つけるのが効率いいと思ったんだけど、それがなかなか見つからない。
永遠の砂浜に、選択をミスったかと若干後悔する。
だって、水は最悪、海から確保できるし、火を起こすのに使う材料は後ろの森から確保できるから。
もう拠点、後回しにしちゃおうかな。
今日中にやるべきことは、他にあるし。
とにかく今日中に、火と水は絶対に必要だ。
確か、人間って水を飲まずに生きていける最大が3日。
ただ、それなら3日は平気かとはならず、ギリ生きていけるだけだから、3日水を確保できてないんだとしたら、4日目に見つかるわけないし、そもそも探す体力もないと思う。
生命維持のためには、いち早く水の確保はしておきたかった。
そして、火はいろいろと便利なのだ。
水を確保してもすぐ飲めるわけじゃなく、煮沸という作業が必要なわけで。
ここではどうか知らないが、元世界では、こういう場所の水には、色々いるから煮沸消毒は必ずしなくてはならないって、テレビで言ってた。
しないと、お腹を壊すからって。
他にも、暖をとったり、料理するために使ったり使い道はいろいろなのだ。
テレビの偉大さを改めて知る。
こういう場所に来てみて思うけど、テレビってちゃんと勉強になること、放送してくれていたんだな。
ネットとかがあまりに便利で、テレビ離れとか言ってごめんなさい。
元世界のことを思い出しながら、ひたすら砂浜を歩く。
砂浜は、地面が柔らかいため歩きにくい。
砂浜のおかげで体力も、結構削らていた。
うーん…困ったな
そう思っていた時、遠くの方に断崖絶壁が見えてきた。
近くまで行ってみると、自然の力で出来たであろう穴があった。
崖の側面にある穴は、海から距離も離れていて良い場所である。
「ネロ、このなか入ってみよ」
「お、おい!」
ネロの返事は聞かず、中へと入っていく。
結構広いかな
穴の中の石壁の色を確認する。
濡れてないし、色が変わっている様子もない。
穴の入り口の方も、波の影響を受けた感じもなかった。
水の脅威って、馬鹿にならないから、水に浸かった形跡がないかしっかりと確認をする。
ここまで潮が満ちるってことは、取り敢えずなさそうだし
うん、ここにしよう
「ネロ、ここにしよう」
「なにをだ?」
「え?寝床っていうか、拠点」
「こんなに時間かけて何やってるかと思えば、拠点探ししてたのか」
ん???
じゃあ、何してると思ってたのかな。
「いやぁ、見つかってよかった。見つからなかったら簡易ベッド作って、外に寝ることになっただろうし」
「そうか、そういうことか…」
私の言葉に、ネロは信じられないといった目で見てきた。
いやいや、どういうこと?
「他のやつらは、家づくりなんて、魔法の力でどうとでもなるんだよ」
「えぇ!ズルじゃん」
「ズルじゃねーよ。自分の生き抜く力を試されてるんだから、使えるものは使うだろ」
…確かに。
私のこの時間は、他の人にとっては一瞬ってことね。
別にいいし、ちゃんと楽しんでるし。
さて、寝る場所が見つかったし、水の確保でもしに行こうかな。
「次は何するんだ?」
「水の確保」
ネロにまた哀れな目で見られた。
はいはい、もう分かったって
他の人は、水も簡単に手に入るってことね。
だいたい、そんな簡単にホイホイやって、何を見ているというのだ。
「今回の研修が例外なんだからな」
なぜわかった?
私は思っていたことが顔に出ていたのだろうか?
ちょっと不貞腐れながら、外に目を向けたとき、穴の奥から水が落ちる音がした。
「あれ?今の音って」
「だから、待てって!」
音のする方に走って行ってみると、
滝のように水が流れてきている泉を発見した。
水の発見に、安心して力が抜けその場に座り込んでしまった。
ほんとに、時間かけて、この場所探し出してよかった。
水源の確保がこんなところでできるなんて。
しかも、嬉しいことに、寝床にしようとしていた場所のほうから、ここまで来るとき、下り坂になっていたため、寝床のほうが浸水することもない。
執念の成せる業というか、執念で引き寄せたというか。
ほんとによかった。
まだ力が入らないので、泉の方に這いながら近づいてみる。
泉の色は、結構透き通った色をしている。
このまま飲めそうだけど、こういう場所の水は気をつけろというテレビの言葉を信じて、
私は、ろ過装置を作ることにした。
私が、リュックサックから必要なものを取り出していると、不審な目で見られた。
「水をきれいにする装置をこれから作るの」
「もう、何も突っ込まないからな」
「もう、黙ってみてて」
やっぱり役に立った、カラのボトル達
使うものは、カラのボトル2つとナイフ、あと布。
カラのボトル2本って、もうろ過装置作ってくださいって言ってるようなものだよな。
人族に聞いたって言ってたけど、その人は、ほんとに分かってる。
今度会って、きっちりお礼を言わせてもらいたい。
あとは、小石と、砂利なんだけど。
せっかく水をきれいにするのに、きれいかどうか分からない材料を使うのは気が引ける。
煮沸消毒、やっぱり必要かな。
そうと決めると、先に火を起こすべく、森へ資材集めに向かうのである。
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