19話 就職のための研修は、サバイバルでした
ここは、一体どこなのでしょうか
私の目の前には、広い海。
後ろには、木々が生い茂る森。
左右には、目に見える範囲で続く砂浜。
遡るは、今朝のこと
快適な布団でグッスリ寝ていた私は、大きく揺さぶられて、目を覚ます。
ゆっくり目を開くと、フェリシアさんと、大人しく首をつかまれたネロがいた。
ネロはグッタリしており、ひとしきり暴れて、疲れた後なのだとわかる。
「起きて。研修先に行くわよ」
にっこり笑うフェリシアさんを見た後に、時計を見て時間を確認する。
4時…
早い…早いよ
こう言っちゃなんだが、私は寝起きがいいほうではない。
朝は、目を覚ましてから、完全に起き上がるまでに30分は必要とする。
そんなことお構いなしに、私を起こしにかかるフェリシアさんに負け、しぶしぶ起き上がる。
こんな早くにどこへ向かうというのだろうか。
ちなみになのだが、時間の概念は、元居た世界と一緒であり、1日24時間。
部屋に設置してあった、カレンダーを見たのだが、1年も365日っぽい。
ベッドに後ろ髪をひかれるような思いで、ゆっくりと立ち上がる。
あぁ、オフトン
オフトンの上で生活したいよ
「さぁ、行きますよ!」
「ふぁい…」
フェリシアさんに急かされ、何も持たず慌てて部屋を出る。
なんども欠伸をしながら向かった先は、転送装置。
こんな朝早くに向かう研修先ってなんだろう。
そんなことを思いながら、転送装置に乗り、今に至る。
「えっと、ここは?」
「ここが、チヒロちゃんの研修先よ」
ここ?
見る限り何もないんですけど…
旅行して感想書くのが試験なんじゃないの??
「研修内容は、ここで生活すること。試験内容は、ここでの研修が終わったら、コスモスに帰って、感想を書いて提出すること。何か分からないことは、あるかしら」
分からないことと言っても、何が分からないのか分からないので質問の仕様がない。
「ネロを置いていくから、途中で分からなくなったら、ネロに聞いてね。あと、人族から、人がこうゆう場所に行って生き残るためには、ある程度の道具を渡した方がいいって聞いて、話聞きながら、こっちで選んで、このかばんに入れてあるから使ってみて。じゃあ、私は仕事あるから、オフィスに帰るけど、二人とも頑張って」
フェリシアさんは、言いたいことを早口で言って消えていった。
この後、仕事詰まってるんだろうな。
相変わらずの人員不足、おつかれ様です。
さて、この何もない場所に置いて行かれたわけなのだが…
取り敢えず、鞄の中を確認してみるため、砂浜の上に座り、中の物を取り出してみようか。
鞄の中身
ナイフ×2、頑丈なヒモ、鍋、布、水の入ったボトル、カラのボトル×2、上着。
この場所と、鞄の中身を見て確信した。
えっと、ここで生活というのは、サバイバル生活ということかな
先ほどまで寝てたということもあり、全然頭働いてなかったんだけど、重要なことを聞くのを忘れていたことに気づく。
「ねぇ、ネロ、これって、いつまでここで生活するの?」
「お前次第だな。そもそも、こういう場所を研修先に選んでる理由は、その人物が見知らぬ土地に行ったとき、ちゃんと生き残るすべを身に着けているかどうかの確認だからな。こういう環境が無理だと判断されて、意外に早く打ち切られることもあるし、ずっと放置される可能性もあるし」
「いつまでここにいればいいか、分からないってことね」
「一般の観光者ライセンスは、こうじゃないが、観光部の観光者ライセンスの取得の条件に、そういうのがあるんだよ。」
期間が分からないサバイバル生活。
要は救助がいつ来るか分からない遭難者ってことだよね。
観光者ライセンス
簡単には取得させてくれないらしい。
職業にかかわる免許なのだから、そりゃ当然か。
元の世界でも、その職に就くための免許取得はどれも大変だし。
医者とか弁護士とか
なるほど
今置かれている、状況は理解した。
そうして、もう一度カバンの中身を確認する。
えっと…
ナイフ2本、頑丈そうなヒモ、鍋、布、水の入ったボトル、カラのボトル2本、上着。
水の入ったボトルが入っているのは優しさなんだろうな。
でも、いつまでここで生活するのか分からないから、これじゃ絶対に足りない。
サバイバルする上で、ナイフがあるのは大分、楽なんじゃないかな
資材とか集めやすいし。
ヒモ、鍋、布も使うときありそうだし、上着も寒さを凌ぐために、あったほうがいい。
最低限あってほしいものは、ちゃんと用意してくれたみたいだな。
何もなく島に漂着してしまった人よりは、好待遇なのではないか
必要グッズを鞄の中に戻そうとして、鞄の中の背中ポケットに何かあるのが見えた。
紙?
表にすると、文字が書かれている。
チヒロちゃんへ
突然のことで、驚いたと思いますが、そこが今回の研修先です。
研修や試験のことを深く考え込みすぎて、ふさぎ込まないように気を付けて
追記
同行者の管理もチヒロちゃんの仕事のうちなので、よろしく。
その代わり、分からないことがあったら、どんどん聞いていいからね
それでは、また生きてお会いしましょう
企画宣伝課 フェリシア
ずいぶん不穏な手紙を残していったな、フェリシアさんめ。
この研修、ふさぎ込む人が出るほど、過酷なわけね。
そして何よりも気になるのが、“同行者の管理も私の仕事のうち”ということ。
この場合、衣食住のうち、食住は私が見るってことかな。
なんかネロは、自分でいろいろやりそうなものだけど。
自分のこともままならないのに、やれるのかと思うが、この場合やるしかないのだろうな。
それにしても、最後の一文。
不穏すぎる…。
手紙と荷物をしまい、頭を切り替える。
私1人で、1日にできることなんて、そんなに多くないわけだから、優先順位をつけてやっていこうかな。
こういう場所に来て、まずやるべきこと、
拠点確保、水の確保、火の確保、食糧確保
って、昔見たテレビのサバイバル番組が言ってた。
まずは、安全をある程度確保できる拠点を探そう。
見つからなかったら、作らないといけないし。
拠点を見つけるのは、優先順位高いけど、拠点を作るとなると、私の中で優先順位ちょっと下がるんだよな。
水とか、火のほうが欲しい。
見つからなかったら、取り敢えずその辺に、どうにか寝られるようにすればいいかな。
「よし、ネロ行こうか」
やること決まったし、早速、拠点探し行こうかな
こうして、私の研修という名のサバイバル生活が始まったのである。
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