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ほのぼの21! むじんとうでつり③!


 あれから1時間。子供たちが魚を釣るたびに、俺はあっちへ行ったり、こっちへ来たりと大変だった。


 というか、この潮溜りは実は海と繋がっているんじゃないか? と思うほどに、子供たちの良く釣ること。釣ること。水槽がいっぱいになったので、レンブラントさんに新しい水槽を出してもらうことにまでなった。ホント何匹釣っとんねん。これは絶対に今日のラッキーさんがいるとは思う。ほとんど、お菓子の魚なのが残念だが…。


「おじさん! お願い!」

 と、シュル君に呼ばれ、俺は向かう。


 シュル君が釣りあげたのは、銀色の目も何も付いてない魚だ。というか、こいつもお菓子である。だって、身体が銀色の包み紙で覆われているのだ。絶対に中身はチョコである。


 俺は、ルアーの針をこのお菓子魚から外し、シュル君にオッケーとルアーを返す。


「おう! ユウ交代しようか」

 と、俺の背中に声がかかる。


 振り返ると、ブラックさんが立っていた。


「ブラックさん…素潜りは終わったんですか?」


「ああ。身体が冷えるからあまり長くは出来ないしな」

 なるほど……確かに、テレビでも海女さんが焚き火を囲んで、冷え対策をしているのを見たことがあるな。


「それで、成果は…?」


「おう! ばっちりだ! あとで驚くぞ!」

 と、親指を立てるブラックさん。あれ?……親指…。


 子供たちをブラックさんに預けて、俺は再び釣りのリベンジへと向かう。


 竿は、レンブラントさんがもう1つ出してくれた。


「見てーユウ君!」

 と、ハナが笑顔で釣り上げてきたものを見せてきた。


 立派なタイである。


 「焼き」はついていない。妻にも負けるとは……。



 頑張らねば…と、釣り糸を垂らす俺の竿にも当たりが。


 来た来た来た来た!


 俺は、逃げられないように、慎重にかつ素早くリールを巻いていく。


 ただ、先程のタイ焼きよりは、竿の引きが弱い。だが、この際タイ焼きじゃなければ、何でもいい。あと、お菓子類じゃなければ。


 よし。そろそろ上がってくるぞ。


――――チャポン。


 そして、水面から上がって来たのは、ランチャーム……いわゆる、醤油が入った魚の形をした入れ物である。


「もう何でだよ!!!」

 思わず、竿ごと海に投げそうな衝動に駆られる。流石に、借り物なので、本当に投げたりはしないが。


「また、ユウゴはレアなもの釣ってんなぁ」

 とは、一部始終を見ていたレンブラントさんの言葉である。


「この入ってる醤油美味しいんですよね」

 と、ベラスケスさんも追随してくる。


 いや、俺は魚が釣りたいんだ!




 あれから帰るまで、俺はことごとく変な魚を釣り上げ、帰り間際にようやく、タカサゴを1匹釣った。このまま釣れなかったら、俺1人でも無人島に残るところだったぜ。最後釣られてくれたタカサゴにはホント感謝だ。美味しく頂くからね。


 ちなみにだが、ハナちゃんはタカサゴ8匹に、カサゴ2匹、イワシ2匹に、タイ3匹と絶好調だった。レンブラントも言っていたが、おそらく今日の釣りのラッキーさんは間違いなくハナちゃんだったらしい。


「あぁ。ありました。おそらく今日のユウゴさんの、ラッキーさんはこれでしょう」

 と、帰りの船の中、ベラスケスさんが見せて来たのは、ラッキーさんの種類が沢山書いてあるという本だ。


「何々……魚以外が釣れるラッキーさん……半年に1度、村の住人に授けられるかなりレアなラッキーさん…だと」

 と、ベラスケスさんの本を覗いて言ったブラックさん。


「そんな、ラッキーは要らないわい!」




 港に着いた俺たちは、そのまま砂浜に移動し、海鮮バーベキューをすることになった。今日釣った魚たちを美味しくいただくのである。もちろん、ブラックさんの奥さんであるミロさんや、レンブラントさんの家族といった釣りに行ってない人たちも参加である。


 釣りに行った帰りにそのままバーベキューとは、なかなか贅沢な暮らしある。


「あらーいっぱい釣ったわねー」

 と、レンブラントが水槽を取り出すと感想をもらすレンブラントさんの奥さんであるフェルメールさん。


「おもしろい魚がいますね」

 というのは、レンブラントさんの長男で獣医見習いだというミケラン君だ。

 それと、次男のジェロ君がバーベキューの手伝いをしてくれている。


 2人とは、初対面なので、俺たち家族は挨拶しておいた。ミケラン君が20歳のイノシシさんで、ジェロ君が18歳のおサルさんだ。


「あれ? フェルメールさんは人間だよね?」

 と、息子さん2人を見て気になったので、ミケラン君に聞いてみると。


「母は普段人間の姿をしていますが、実はキツネなんですよ」

 との答えが。気付かなかった……食堂のマティスさんと同じパターンか。キツネだし変身ぐらい出来るのだろう。




 出来上がり次第食べてねーと、料理上手であるというミロさんがバーベキューを仕切りつつも、交代で食べながら、魚を焼きながら、バーベキューパーティーは進んでいく。


「サザエのつぼ焼きができましたよー」

 と、いうのは、ベラスケスさんだ。

 ブラックさんとベラスケスさんの素潜りの成果は凄かった。サザエにホタテに、イセエビ、タコと大量である。


「うまっ!」

 俺は串で刺したサザエを口に入れる。このコリコリとした独特な食感がたまらない。


「プハー! やっぱビールに合うな」

 と隣でビールを飲みながら、サザエを食べているのはレンブラントさんだ。


「イセエビとタイのお刺身できたわよー」

 と今度は、フェルメールさんの声が。

 俺はさっそく取りに向かい。皿ごと男性陣の座っているテーブルへ。


「美味しいですね」

 と刺身を一つまみして食べるミケラン君。


「うまっ!」

 と、言って食べるジェロ君


 それを見て、俺もさっそく醤油に付けて一口いただく。まずはイセエビから…。


「美味しい……」

 柔らかい食感に、エビの特有の甘みが口の中に広がる。それに俺が釣ったこの醤油もマッチして美味い。そして、ハナが釣ったタイのお刺身。


「これまた美味い!」

 うん。もうホント贅沢だ。


 それからも、続々と出来上がる魚料理。焼き魚を始め、魚のフライに、ムニエル、タカサゴのから揚げに、ホタテのバター焼き、タコときゅうりの和え物など、バーベキューでも魔法のカバンがあることで、色んな具材や道具を持ってこれるこの村ならではな料理も多い。もうバーベキューではなく、普通に野外で食べる晩ご飯である。流石に、タコ飯とタイ飯が出てきたときは吹いたが。いや、どっちかにしろよと。ただ、美味しかったけどな。



「うまうま!」

「びみ……!」

「サクサク!」

「うまうま!」

 と、子供たちも大満足で食べている。


「よし! じゃあ最後はユウゴが釣り上げたタイ焼きでも食べるか!」

 と言ったのは、レンブラントさんだ。


 まぁ、食後のデザートとしては悪くないかもな。


 レンブラントさんは、未だに水槽の中を泳いでいるタイ焼きを1匹捕まえると、そのままバーベキューの網の上に乗っけた。


 すると、掴まれて暴れていたタイ焼きがすっかり大人しくなる。うん。ファンタジーな光景ではあるが、これがタイ焼きの本来の姿だ。レンブラントさんは次々とタイ焼きを網に乗せて焼いていく。


 その数全部で15匹。


 俺……頑張ったなぁ…。


「私これ好きなのよねー」

 と、フェルメールさんが言って焼きあがったタイ焼きを口の中に頬張る。


「この中のあんこがなんとも……」

「普通に美味しい…」

「俺も実はこれ好きなんだよな!」


 と、焼きあがったタイ焼きを食べては、みんな口々に感想を言う。


「フタバもタイ焼きすきー!」

「ミツバも…!」

「イチも!」

「シュルも…!」

 と、子供たちも美味しそうに頬張る。


 みんながそう言ってくれるなら、釣ったかいはあったのかもな…と、俺も一口。


「うん。美味い!」

「美味しいね!」

 と、隣でハナもタイ焼きを食べながら微笑んだ。




 あぁ。今日も月は綺麗だ。





この村で魚釣りをすると、醤油も一緒に釣れることがあります。ランチャームで検索!(笑)

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