恋の終わり
リルは、いつものようにジルの家を訪ねていた。
「リル、疲れてる?大丈夫?」
いつものように優しく労ってくれるジルに、リルはうん、と頷いた。
家に入ろうとしないリルに、ジルは怪訝そうに覗きこむ。
「どうした?」
「ジル…、こうして…二人で会うのはもう、終わりにしたいの」
「え…?」
「もう…会わない」
「…訳がわからない。リル、ちゃんと説明してほしい」
「理由なんて、ないの。ただ会いたくないのもう」
「嘘だろ?昨日だって…リルはいつも通りだった。何かあったんだろ?」
優しくあくまで聞いてくれようとする、ジル。
「…王子に…口説かれてるの…だから、それを受けようと思うの」
騙されてたんだから、これくらい口実に利用させてもらおう。とリルはそう言った。
「じゃあね、ジル。ジルは…頑張って、立派な魔法使いになって」
リルは呆然として言葉をなくしているジルはを置いて、シェリに
浮遊してその背に乗った。
「さよなら」
リルはそのまま、シェリの背に乗って夜空に飛び立った。
シェリに頼んだのは、思い出のラヴェンダーの花畑。
夜の帳の中、リルは苦しかった…とても。
息が、本当に止まるほどのそんな気持ちが、リルの身体中を駆け巡る。
竜の飛行はとても早くて、瞬く間に思う場所についてしまう…。
虹の橋はなく、むせ変えるようなラヴェンダーの香りだけがリルを迎える。
ラヴェンダーの花に触れたとき、耳朶のピアスが、風に揺れて小さなその存在を伝えた。
ジルとリルの積み重ねた思い出は…。積もり積もって、その存在が無かったことにするには大きすぎて…
しばらく花畑に身を、横たえて星空を眺めた。
(なんて、ちっぽけな…私…)
泣くことは…私には許されない…。
「ジル…今まで…ありがとう。恋人になってくれて、ありがとう…」
そっと声に出して呟いた。




