指先は罪に染まる
時は足音もたてずに過ぎ行く。
そしてもうすぐ、修行という時は終わりリルたちは一人前の魔法使いとなる日が近づいていた。
すっかり慣れた後宮をリルは歩いていた。
「シオン、私少し用事が…。先に帰ってて」
「大丈夫?一緒に行こうか?」
「ううん、少しだけフェンナ様と話がしたくて」
シオンは近頃、リルが年頃の近い彼女たちとよく話しているのであっさりとわかったと言った。
菫の宮にたどり着いたリルは、そこにフェンナとカイルが座っているのを見つけた。
「フェンナ様、カイル様…」
「あら、どうしたの?リル。今日はもう終わりじゃないの?」
「ええ、終わりました…」
リルはそっと二人に一歩ずつ近付く。
「カイル様、フェンナ様…お伺いしたいことがあります」
「どうしたの?改まって」
小首を傾げてフェンナは聞き、リルに近づいてくる。
「お二人は…もしも、アラン王子に会えたなら…どうしますか?」
「リル?」
「仮にです」
そのリルの言葉に反応したのは、カイルだった。
「アランと会えたら、アランが戻れば…そうすれば、本当の意味で次の王位を争うことが出来る」
その顔は、リルの知るカイルらしくなくて…瞳は、この間会ったアラシと似ていた。とても…
「そちらが…本来の、カイル様ですか?」
「…アランを知ってるんだな?」
「兄弟が揃うために…女装なんて事を?」
リルはカイルを睨み付けた。
「アランはどこに?」
「貴方たちが、ふさわしからぬ行動をしていれば…アラン王子が戻ってくると?」
リルはとっさに思い付いた事を静かにいい放った。
「リル…約束する。アランが戻れば…アランと会わせてくれれば…後は俺たちは王子らしくする。そして、国を支えるべく改める」
「貴方たちの…わがままで…周りを振り回して?ふざけてるわ」
「俺たちは、実例を作りたかった。魔法使いになっても、成人すれば、また会えると、兄弟としていられるという!かつての王のように!君たち魔法使いだって、親や兄弟に会いたいと、そう思うだろう?」
「思いません…。私たちは…亡き人も同然…」
リルは頬に涙を感じた…。
「アラン王子の事は知りません」
「リル…!」
「幼馴染みに…強くて…とても綺麗な魔法を使う人が、います。私は、アラン王子は知りません…。その、幼馴染みは黒い髪で紫の瞳で…ぶっきらぼうで…優しい、人です」
リルは心臓が破裂しそうだと思った。
「その人に会いたいと思いますか?カイル様」
「思う」
「会えば…例え王子という立場の貴方でも、罰せられるかも知れませんよ?」
「構わない。トウハもクオンもルルドも、そしてアランがもどるならば」
「アラン王子が戻るかはわかりませんよ」
「それでも、構わない」
「貴方が、罪に問われれば、フェンナ様も第二王妃様も罰せられるかも知れません。それでも?」
「私は構わないわ、リル。もちろん、お母様もそうだと思うわ」
「カイル様は、後宮から出られますか?」
「やってみせる」
「…次の…休日。街の外れでお会いしましょう」
「わかった」
「シオンたち、他の魔法使いはこの事を知りません。くれぐれも内密にしてください」
「必ず、そうする」
リルはお辞儀をして、百合の宮を後にした。
自分は…いったい何をしようとしているのだろう…。
声をあげて、叫びそうだった…。




