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第二部 サキュバスでなくなった私と推しの恋 一話 淡い初恋との再会

キャスト

日向カイル28:182センチ。美鈴の遠縁で戸籍上は他人だが、幼い頃から美鈴を可愛がっていた。美鈴の淡い初恋の相手。純血のインキュバスなので、食事をあまり必要としない。俳優やモデル業をしながら適度に若い女性と交わることで精気を食らっている。インキュバスらしく恋多き人生を生きている。

和希さんの仕事は俳優がメインだからか、出勤時間がバラバラだ。今日のように昼間は休みを貰えたかと思えば、丸一日忙しい日もある。反対に私は和食屋さんの仕事に絞ったせいで時間と体力に余裕ができつつある。


「美鈴、俺は行くけど気を付けて。絶対に俺以外の男を家に入れたりしないように」


「分かってるってば。そもそも他に誰も来るわけないよ」


そんなことを言うと、ばっちりメイクをしたせいでキスできないからだろう。そっと額を重ね合わせて、


「分かんないでしょ。マスコミにあとつけられてたりしたらどうしよう」


と少し心配そうな声で言った。私はそんな和希さんの首に腕を絡めて、


「人気が出てきたのは知ってる。努力してるのも。でも、もう少しだけ気軽にデートしたりできる関係でいたいのにな」


偽りのない本音を明かす。和希さんは急にじゃないけれど、売れるようになってきて、テレビや雑誌で見ることが増えてきた。


本人曰く、それでもまだまだ上を目指したいらしい。もっとたくさんの人にイケメンである俺を見てほしいとか、そんなことをよく言っている。


「あー、もう! 今すぐに抱きたくなったでしょ? 仕方ないから行くけど、マジ気を付けてね。このところ穏やかだから余計に」


と私をぐっと強く抱き締めて言うと、未練を振り切るように出て行ってしまう。時間を見ると、もうギリギリの時間だった。


「いってらっしゃ~い」


のんびり何をしようかと思いながら見送って。



私は和希さんの好きなバスボムでも作ろうかと考える。アロマオイルはバラの香りとレモングラス、どっちにしようかと考えたりしながらのんびりと家事を片付けていた。


それからカロリーを気にする和希さんと一緒に食べられる洋食のレシピなんかを探して。私としてはビーフシチューが好きだけど、カロリー高めだから何か工夫が必要かもしれない。


「なにしようかな…」


それまでがダブルワークの生活だから、ヒマになってしまって仕方ない。とりあえず牛肉でもカロリーの高いのはバラ肉でカロリー低いのは赤身だってことは分かったんだけれど… たまにあるチートデーという日に合わせれば食べてくれるかな。


「チートデー… そもそもダイエット必要なのかなってくらい細いのにな」


だけど、私が一緒にダイエットしようとすると反対してくる。女の子のダイエットは危険が多いからって怒ってくるんだから不思議。筋トレくらいならいいらしいけど。


「買い物くらい行こうかな」


なんだか落ち着かなくてしかたない。夜でもやってるスーパーで朝ご飯の材料でも揃えよう。私はそんなに料理が得意じゃないけれど、簡単にお浸しやあえ物を作るくらいならできるし。


うまくすればお魚が安くなってるかもしれない。食事は家にいる間ずっと和希さんが作ってくれているけれど、たまにはゆっくり休んでほしいよね。いつも私よりずっと早く起きて、きれいな和食を作ってくれるけど。


「よし! お買い物に行こう」


昔みたいに地味にしていれば分からないかな? 出かけたらいけないとは言われてないしね。


そうと決まったら落ち着いてなんかいられなくて。急いで着替えて出かける支度をしてしまう。そして、戸締りをきっちりして駅前のスーパーまで早歩きで向かう。時間は6時半だけど、秋だから真っ暗だ。


和希さんはあまり好きじゃないけれど、デニムのミニスカートにハイネックのセーターとジャケットにスニーカーを合わせて。これは和希さんの前じゃできないお気に入りのコーデだ。…こんな時もたまにあっていいよね。


駅前のスーパーはちょっとお高めでハードル高かったけれど、和希さん曰くお魚がおいしくてお気に入りらしい。


秋だから時季外れだけどタラの美味しい所とかあったら喜んでくれるかな。それとも秋鮭がいいのかな? こんな時の為にもっとしっかり料理しておけばよかった。


そんなことを考えながら良さそうなのを選んでいると、後ろから急に腕をつかまれる。


「美鈴!? やっぱり美鈴か…!」


その声に聞き覚えがあって。振り返ると、懐かしい人がそこに立っていた。切れ長の目をした長髪のイケメンがそこに立っていて。


「カイル兄さん…!?」


私より30センチくらい背が高いから窮屈そうに背をかがめて抱き締めようとしてくる。咄嗟に和希さんのことが浮かんで…


「やっ… もう私は大人になったから、そういうのは…!」


胸を突き飛ばして拒みながら言うけれど、通用するわけがない。つかんだ腕を強引に引っ張られて片腕で抱き締められながら、


「君が同族でなくなったと聞いて、びっくりして駆けつけるところだったんだよ。うまく見つかってよかった」


どこまで本当なのか分からないことを言ってのける。それより放してほしいんだけどな。それにどこまで家のことがバレているんだろう。家を出る時、お母さんに口止めしておいたのに。


「カイル兄さん、放して! 私、今付き合っている人がいるの!」


「聞いている。はっきり言うよ。君を連れ戻しに来たんだ」


そう言いながら片腕で私を抱き寄せたまま頬に触れる。いつもどこか繊細な仕草で触れてくる和希さんと違って、カイル兄さんのはまるっきり幼い子供にするのと同じだ。私だって成長したのにな。


「君が誰と交わっていても構わないよ。俺はそれ以上のことができるからね」


その言葉が意味することを察して、背筋を怖気が走った。


カイル兄さんのことは子供の頃から好きだった。もちろん淡い初恋をしたことだってある。純血であるカイル兄さんとは格が違いすぎるんだけれど、そんなのお構いなしに王子様みたいにいつもキレイなイケメンでいるカイル兄さんが好きだった。


「美鈴、君は血族に戻る方が良い。俺と交わって契りを交わそう。そうすれば元のクォーターに戻れるよ。格の低い魔女なんかとの契約を無効にできるんだ」


私を昔のようにやさしく抱き締めてくれるのに、昔のように優しい声でぞっとするほど恐ろしいことを言ってのける。そんな狂ったとしか思えない日が来るなんて、誰に分かっただろう。


「さあ、俺の家に帰ろう。君を歓迎するよ。可愛いクォーターの君」


昔のように甘く低い声で告げるのは変わらない。惹きつける女性たちをものともせず、私だけを見ていてくれる。なのに… 私の気持ちをこんなに分かってくれない時が来るなんて…!!

お待たせしました( ^^) _旦~~ 新キャラの登場です。

カイルくんですね。色々と悩みました(-ω-;) 書き慣れるまでにも苦労しましたし。苦労しないで書けたのは美鈴ちゃんくらいでしょうか。まあ、そんな感じで楽しんでくだされば幸い。感想くださればもっと幸いです。

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