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温かい過去の夢を見る

 


 私とニコラが婚約したのは、ニコラが学園を卒業した年である。


 学園は一度の失敗で諦めてはならないという教育目標を掲げており、入学試験も15歳と16歳の2回受験することを認めている。

 ニコラは15歳で入学したので、私と婚約した年は18歳だった。


 お父様の執務室に呼ばれた私は、今朝の朝食の時よりもピカピカの服を何故か着ているニコラと、情けない顔をした父、そんなお父様を呆れたように見やる母の三人に囲また。

 珍しく離れから本邸に来た兄も部屋にはいるのだが、彼はクッキーの缶を片手に笑っている。

 兄は先年結婚して可愛いお嫁さんを迎えたせいで幸せ太りしたので笑うと目が線のようである。元から彼は祖父似で開いているのか分からない目の形をしていたが。


 ニコラと母の視線に耐えかねて父が渋々口を開いた。


「ニコラウスがグレーテと結婚したいって言ってるんだけど、グレーテはどうしたい?お父様は、個人的には、もうちょっと……その、待っても良いかなと思うんだけど」


 父が小声で付け足した一言を聞いて母がカッと目を見開く。


「何をおっしゃっているんですか!旦那様!!こんなに良い話はないですよ!ニコラウスは私達のもう一人の息子のようなものですし、何よりこの抜けたグレーテのことをよく理解してくれる良い子です!爵位も問題ありませんし何を迷っているんです!」


 母は釣り目気味の美人である。黒髪黒目であるので声を荒げると迫力がある。にも拘らず呑気に笑顔で応じるのは社交界広しといえど父くらいだろう。頭頂部が寂しくなったぽっこりお腹の父は大物である。


「だってさ、まだグレーテは12歳だよ?最近は婚約する貴族も少数で、社交界デビューしてからの出逢いから結婚という流れの方が多いんだし……急ぐことないんじゃないかと」


「あなた、社交界というのは良い男から売れていくんです!ニコラウスは凄く良い男ですからきっと人気になります、すぐ嫁ぐわけでもないし婚約は良い話じゃないですか」


 私は目の前のやり取りをポケっとしたまま見ていた。ニコラの方を眺める。小綺麗な格好をした彼は私に微笑んで口を開いた。


「奥様、俺はこうしてグレーテに婚約を申し出ているわけですから、今年社交界に出たところで目移りをするような不誠実な真似はしませんよ。昔行った茶会も嫌いでしたし。社交に興味はでないと思います。それにデビューするには俺はギリギリの歳ですから話題にもなりません。もし、奥様と旦那様に待てと言われるなら待ちます」


 涼やかなニコラの目元が優しく蕩ける。今日もニコラはかっこいい。

 母はニコラの言葉に感激したように手を組んだ。


「いいえ、いいえ!ニコラウス!あなたってなんていい子なの。あなたがグレーテに誠実であってくれるというなら尚更それに胡座をかいて求婚させたまま放置するなんて失礼な真似、この私がさせないわ!それにあなたと私達家族はとても親しいけれど、あなたは侯爵なんですから旦那様にもっと強気に出て良いのよ」


「いいえ、デュマ家の皆様は両親を早くに亡くした俺の恩人ですし。それに今日の俺は侯爵ではなくて、お義父様に娘さんを頂きたいと願い出るただの男なので……」


 視線を下げ、いつになく丁寧な口調で応じるニコラに母は大層機嫌がいい。そもそも母は私たち三兄妹よりもニコラに対して甘いというのもあるけれど。


「まあ、ニコラウス。あなたってなんて素晴らしい……」


「待て!まだ、お義父様と呼ばせる許可なんてだしてないぞ!ニコラウス」


「旦那様!何を足掻いているんですか、こんな良い縁ないですよ」


 そこそこ脂ぎった中年男性なのに父は頬を子供のように膨らませて不満を示している。それに対して母は伯爵家の当主なのだからみっともない真似はやめてくださいと怒っている。

 ニコラは微妙な顔をして、私はまた夫婦で漫才が始まったと呆れた。

 それまで空気だった兄が咳払いをし仲裁をする。


「まあまあ、父上も母上もニコラウスも、グレーテの意見を無視して話を進めるのはそこまでにしようよ」


 顔がくっつきそうなほど近くで言い合っていた両親がこちらを見た。

 父は母が大好きなのでその最中ずっと脂下がった顔をしていて気持ち悪かった。真面目な話の最中なのに妻に夢中になれる精神はすごいと思う。


「あらあら、ごめんなさいね。グレーテ。勝手に話を進めちゃって」


「お母様……」


「でも、いいでしょう?だってあなたってニコラウスと仲が良いものね。ニコラウスのこと好きよね?」


 私に笑顔で圧力をかけてくる母。母には強引な部分がある。


「ニコラのことは大好きです、お母様」


 話を振られて私は咄嗟に答えた。母の満足いく内容だったようで彼女は鷹揚に頷いた。


「じゃあ婚約の話を進めていいわよね?結婚したいわよね?」


「結婚………」


 というとお茶会で令嬢仲間が憧れると口にする結婚のことだろうか?


 ニコラが私に向かって微笑んだ。

 ニコラは私の両親には丁寧な口調だけど、普段は兄や兄の友人たちよりも大人っぽい口調をしている。姉はぶっきらぼうっていうのよって私に説明するけれど。でも、兄や姉よりも遊んでくれるし、分かりにくいけど褒めてくれるし何よりかっこいいから大好きである。


 でも、結婚……結婚かぁ。

 親友は「結婚は人生の墓場」と言っていたけれど、どうなんだろう。


 私も親友も恋愛小説や、恋愛が題材になった舞台が好きでよく観に行くけれど、何故か私が気に入るのが悉く悲恋ものか、婚家で苛められて出ていく話ばかりなので結婚という言葉の印象も良くなかった。


 いつかはしなければいけないと母からは言い聞かされているけれど……。


 黙り込んだ私にニコラが屈みこんで目を合わせる。私はいつものように彼に抱っこしてもらった。

 姉に大きい赤ちゃんと揶揄されるけれど私は抱っこされるのが大好きだ。親友に抱きつくのも好きだけど。


「グレーテは俺と婚約するのは嫌か?」


 ニコラは父と母の前だから常より柔らかい雰囲気だ。


「嫌じゃないけど、婚約するのとしないのは何が変わるの?今のままじゃダメなの?」


「……そうだな。婚約しないとこういうことは出来なくなるな」


「こういうこと?」


「抱き上げられないし、一緒に遠乗りも行けない。買い物にも二人で出掛けられないし、俺は学園を卒業したらお世話になった伯爵家を出て、実家の建物で暮らすから会う機会もほとんどなくなるだろう」


「え……?」


 母は頷いている。父はなぜかハンカチで目元を拭っているし、兄はただでさえ細い目の形を変な風に眇めて、眉間の皺を揉みながらニコラを見ていた。


「それは困る……私、ニコラと一緒にいるの好きだもん」


「じゃあグレーテは婚約してもいいわよね?旦那様!ニコラウスとグレーテの婚約の書類を用意しますよ!今すぐ!」


 上機嫌な母が父を抱きしめる。母は結構、自分の機嫌で態度を変える人なのでしばらく私に甘くしてくれそうである。

 父は嫌だ……と小さく呟きながら書類ダンスから一枚紙を取り出していた。

 私を抱き上げているニコラは満足そうに私の頭を撫でながら羽ペンを取り出していた。



 その半年後には私はオーガンジー製の天使様のようなふわふわした白いドレスを身に着けてステンドグラスが素晴らしい王都の大聖堂でニコラと婚約式をした。


 貴族でも結婚式にはある程度自由が認められているが、婚約式はあげる男女が年々減少している分伝統的な形式のままで、伯爵位以上は王に書類を提出し大聖堂で式をあげることを義務付けられている。


 昔は大掛かりで何日もかかる盛大な式だったらしいが、今は正装を身に着けて神官様の前で誓うだけだ。正直初めて着たコルセット付きのドレスは苦しかったし、髪型は重かったし、メイクはベトベトして違和感があったので助かった。


 ニコラは私に婚約を申し込んで、この式が行われる間に試験に合格し、見習いとはいえ騎士様になっていたので星章を付けた騎士服を着ていた。凛々しくて精悍でさらに大好きになった。


 式には私の家族が参加してくれた。本来ならニコラの家族もいる場所だったが、彼らは既に亡くなっているので前日に私達は墓前に報告に行った。


 父は号泣して、母は呆れながらそれを宥めていた。父は前日のニコラの両親の墓参りでも泣いていたので目が充血して真っ赤だった。

 兄は相変わらず目を細めて私たちを眺めていた。兄嫁は妊娠中なので式には不参加だったけれど私のドレス選びには積極的に参戦してくれた。

 姉は、妹のグレーテが先に婚約するのが納得いかないと終始愚痴りながらも、ニコラウスみたいな男を引き取れるのは能天気なグレーテだけだから丁度いいんじゃないのと祝福してくれた。



 大聖堂の美しい天使像が見守る中で私はニコラと初めてキスをした。

 とても幸せな記憶だった。





 そう、ニコラと初めて私はキスをした。

 12歳。それまでは額と頬と頭にしかキスしたことがない私の初めての唇同士のキス。


 ()()()()()()()()が私の中で到来した。


 初めてのキスは衝撃だった。

 本で書かれているように砂糖菓子のような甘さも、大人の男性特有の煙草の苦味も、レモンの蜂蜜漬けのような甘酸っぱさもなかった。

 キスをした瞬間に周囲が光輝いて全てのものが美しく感じるなんてこともなかったし、邪悪な魔法が解呪されることもなかったし、私を拐いに天使様がやってくるなんてこともなかった。


 けれど、温かくて、ほとんど無味なのに微かにしょっぱくて、柔らかくて、湿ってて、幸せな気分になるのだ。

 ニコラが生きていて、私と触れ合ってくれているのが分かるから。

 私の大好きなニコラが、私と婚約してくれて、仲良くしてくれて、大好きだって感じられるから。


 キス、最高である。


 数々の恋物語が、最後にキスをしてハッピーエンドだと締め括られるのが理解できたし、恋人が誰かにキスをする場面に出くわして浮気だと発狂する女性の気持ちも理解できた。


 とにかく、キス、最高である。



「グレーテ、止めろ。俺の唇はおしゃぶりじゃないんだぞ」


 ニコラが眉間に皺を寄せ、頭を抱えた。


 その日は私達は二人で遠乗りに行っていた。

 ニコラは私の家を出て、侯爵家に住んでから、大体遠乗りか、庭でのお茶会か、買い物にしか付き合ってくれなくなった。以前は室内で本を呼んだり、ベッドに腰掛けてお話ししたり、パズルで遊んだりしたのに。

 大人になるまで室内では遊べないらしい。小さい頃は維持の為に月何回か通っていた侯爵家のお屋敷で勝手にかくれんぼをして怒られたけれど、もう成長したからそんなことしないのに。変だと思うけど仕方ない。


 室内で遊べないのは残念だけれど馬で遠駆けするのは気持ちがいい。ニコラに乗馬を教えて貰ってから私は外で駆けるのが大好きだ。女の子はあまり一人で馬に乗らないらしいから友達には内緒にしているけれど。


 それで、私の伯爵家所有の森に行って、一緒に木陰で休むのだ。

 話をして、手を握って、隙あらば私はニコラにキスをする。大体膝に対面で乗って、ニコラの薄い唇をハムハムする。グミみたいで面白いんだよね。


 大体ニコラは迷惑そうな顔をして、私を膝から下ろそうとする。


「おい、グレーテ。やめろって言ってるだろ?」


 眉を寄せ、髪をかき揚げるニコラは素敵だ。髪を染めるのを止めたニコラは右側が銀色の神秘的な髪色をしている。その髪と切れ長な目元が相まってとても格好いい。男前だ。

 それにしてもニコラの頬が赤いのはなんでだろう?


「やめるの?でも楽しいよ。温かいし。止めなきゃだめ?」


「だめだ、膝から降りろ。……上目遣いしてもだめだぞ。益々だめだ………ったくお前は何故そう無自覚なんだ………。俺が折角気を遣って………。はぁ………」


「ため息つかないでよ、ニコラ。だって久しぶりに会えて嬉しいんだもん。お仕事頑張っているニコラは素敵だよ?私の家から出ていくのも侯爵家を継ぐから仕方ないのは分かってる。でも平日は会えなくて寂しいの。くっついてたい!」


 膝から降りて隣に座り、頭をニコラの肩に預ける。ニコラの服は石鹸の匂いがした。


「結婚したら嫌でも毎日会うんだぞ?」


「え?私はニコラに毎日会えて幸せだろうから嫌になることなんてないと思うけど……。

 ニコラは嫌……?」


「別にそうとは言ってない。……はぁ。グレーテ。お前、俺が王都外に配属になったら寂しくて死なないか?」


 私は驚いてニコラの顔を見る。


「え?!騎士様って勤務は王城だけじゃないの?!」


「そこから知らないのか………俺は幹部候補生として試験受けたから、若い内に色んな部署に配属される。国境の警備も行くことになるぞ、一年かそこらだが」


「国境……?!」


 私はあまりの遠さに卒倒しそうだった。一年間国境にいたら今みたいに毎週末デートなんて出来ないだろう、国境に派遣される人が帰ってくるのは半年に一回かそこらだ。


「私もついてく」


「そりゃあ結婚した後なら好きにすれば良いけど、どうせお前が学園行ってる期間だろうし無理だろ」


「休学するよ!それでついていくの!」


「そんな下らない理由で休学する生徒はいない。お前は子供なんだからしっかり勉強しろ。結婚すれば嫌でも学生生活が恋しくなるぞ」


「子供じゃないもん、婚約者だもん」


 私が頬を膨らませるとニコラは私の頬を手で潰した。ニコラの手は剣胝や、肉刺がゴツ

 ゴツしている。昔から剣の訓練はしていたから硬い掌をしていたけれど騎士団の一年間の訓練生期間で更に逞しくなった。

 ニコラは巨人のように大きいわけではないけれど筋肉質で、努力家で本当に尊敬する。

 私は厚くて硬い掌に頬を擦り寄せた。


「そんなに甘えるのは子供か猫くらいだぞ、まったく……。本当に仕方がないな……」


「大好きだからしょうがないよ、ニコラ」


「はいはい、……頼むから早く大人になってくれ」


「この間13歳になったよ。パーティーしたもの。エスコートしてくれてありがとうね。嬉しかったよ。贈ってくれたドレスも素敵だった!ブルーグレーの大人っぽいやつ!お気に入りよ」


「13歳じゃまだまだだ。せめて社交界デビューができるくらいの歳になってくれ。……俺はこのままじゃ騎士団で幼女趣味だって噂になる…」


「ん?最後何て言った?」


「なんでもない」


 帰り道も馬に乗って帰った。ニコラは私の屋敷に来た後、我が家の馬に乗ってきたので伯爵家に二人で帰る。

 肌寒くて震えたらニコラがマントを貸してくれた。裏が起毛の黒いマントで、良い匂いがした。


 屋敷に帰ると兄と姉が玄関で二人で待っていた。姉は兄を側にいるとイライラすると評して滅多に近くに寄らないけれど、私がデートから帰る時にはそこそこの確率で一緒に待っている。


「お姉様!お兄様!」


 私は馬丁に愛馬を預けた後で二人に抱きついた。


「相変わらずグレーテは大きい赤ちゃんね。馬を乗りこなすお転婆赤ちゃん。はい、おかえり」


 姉は深紅の上品なベルベットのドレスを着ていた。うっすらと化粧をしていつにも増して美人だ。首に手を回して再度抱きつく振りをして小声で聞く。


「お姉様も今日はデート?今日のお姉様とっても素敵」


 姉は耳を熱くして小さく頷いた。姉には超大金持ちで姉のことを溺愛する平民の恋人がいる。母は姉が苦労するだろうからと平民に嫁ぐことを反対している。だから姉はこっそり恋人に会っているらしい。私と兄にだけこっそり教えてくれた。


「もう、今は私のことはいいのよ。それよりグレーテ!変なことをされてない?!」


「変なこと?」


 首を捻る私にお兄様が腕を広げて近づいてきた。


「はい、グレーテ。お兄様にはハグしてくれないの?」


「お兄様にはお義姉様がいるでしょ?もう、しょうがないなぁ」


 お兄様は私とかなり歳が離れている。最近腹回りがお父様に似てぷにぷにした感触がする。私が小さい時は優しそうでハンサムなお兄様だったのに……。

 今の幸せそうなお兄様ももっと優しそうで悪くないけどね!


「うーん、今日も妹が可愛いなぁ。キャラメル食べる?美味しいよ。グレーテにあげようと思って取り分けたんだ」


「まあ、美味しそう!ありがとう、お兄様。でも、お義姉様からダイエットしろって云われてなかった?」


「ははは、頭脳労働派だから甘いものがどうしても食べたくなっちゃうんだよね。内緒にしてね。はい、賄賂」


 お兄様はそう言って流行のお菓子屋さんのキャラメルボックスを私の掌においた。クリーム色に猫の模様が描かれた小箱に上品なボルドー色のベロアのリボンが結ばれている。


「しょうがないなぁ」


「お兄様に甘くて可愛い妹がいて俺は幸せだよ」


 私が兄と話している横で、姉とニコラの会話がヒートアップしていた。

 普通なら姉といえど異性と婚約者が会話するのは嫌らしいけれど姉とニコラは犬猿の仲なので私は一切心配していない。


「あんたみたいな、凶悪な顔した男が、ちょっとお馬鹿だけど可愛い可愛い私の妹と婚約していることを神に感謝なさい………何もしなかったでしょうね?」


「こんな狂暴な性格の姉がいるのにグレーテが優しい子に育ったのは奇跡だな。………キス以下しかしてない」


「なによそれ!!キス以下って!!グレーテ、今すぐ婚約破棄しなさい。あんたはボケボケのうっかりなんだからずっと実家にいなさいよ。良いでしょ、お兄様。一人くらい養えるわよね?」


「まあまあ、ニコラウスとグレーテは両思いなんだからそれくらいにしなさい。一人くらい養う甲斐性はあるけど二人のことなんだから、口出ししないの」


 キャラメルを口の中で溶かしながら兄が諌める。しかし、姉は止まらない。強気なところは母に似ていると思う。


「もうこの子の年代に王子がいれば絶対に王子に嫁がせたのに!!………なんでこんな、よりにもよって粗暴で細目で冷たい顔の侯爵なんて!!!………グレーテ、あんたなんで趣味が悪いの………もっと格好いい男なんて山ほどいるじゃない………」


「悪かったな、悪女顔の伯爵令嬢」


「あんた、言ったわね!言っとくけど私は社交界の薔薇よ!!」


「棘だらけのな。自分で言ってて恥ずかしくないのか?」


 顔を真っ赤にして応戦しようとする姉と真顔で応戦するニコラ。

 私と兄は顔を見合わせてキャラメルを食べることで、なんとなく誤魔化した。こうなると誰も仲裁できないのだ。

 騒ぎを聞き付けた母が姉に淑女らしくないと雷を落とす三分前の話だった。



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