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魔法講義

「アイリ様、随分と上達されましたね。」


王宮にある魔法研究所の訓練室で私は魔法の特訓をしていた。


私が使える幻想魔法は実体を持たない物が創造できる。

3D映像が機械なしで作れるみたいなものだ。


魔法はイメージ。


私の幻想魔法はイメージすることが最も重要だ。

私のイメージが曖昧だとぼやけた物しか出てこない。

なので、正確性を上げる特訓をしている所だ。


「モーリス先生のおかげです。」

「勿体なきお言葉です。」


彼は魔法研究所に勤める副所長のモーリス・ブリューゲル。

ダークグレーの髪をオールバックにした40代後半の落ち着いた男性だ。

伯爵家の嫡男だったのに魔法を研究することにのめり込んで弟に爵位を譲り魔法研究所に住み込みをしている言わば魔法オタク。

研究することが大好きで魔法以外には興味がないらしい。


そういう人って研究以外に時間を取られることを嫌がりそうなので、私の魔法の講師を勤めているのも実は不服かもしれない。


「アイリ様がお使いになる幻想魔法は珍しいので、アイリ様の特訓にお付き合いすることも私の研究の一貫なのですよ。」


私も研究対象だった。


「アイリ様の幻想魔法、殿下の物理に作用する魔法、4属性魔法以外にもこのような魔法があるとは・・・。研究のしがいがありますな。」


そう、この世界の魔法は地水火風の4属性が主流だ。

ルイスみたいに水魔法の上級になる氷魔法を得意とする人もいるけれど、私やお父さんみたいに4属性魔法以外を使う人は希らしい。

王様が得意なのも火の魔法と聞いた。


「過去の文献には4属性魔法以外の魔法の記述がありますので、きっと何か原因となるものがあるのでしょう。」


それを究明するのがモーリスの仕事らしい。


魔法とは無縁の世界で育ったので知らないことだらけだ。


「モーリス先生は地の魔法が得意と聞きましたが、他の魔法も使えるのですか?」

「ええ。地の魔法以外には風魔法が少し使えます。魔法というものは相性があります。私は地の魔法と相性がよかったので難なく使えていますが、風魔法は特訓を重ねて自分の周囲に風を起こすことが出来るぐらいです。」

「私も練習をしたら4属性魔法を使えるようになりますか?」


せっかく魔法が存在する世界なんだ。

ゲームみたいにかっこよくファイヤーボールとかエアーカッターとかしてみたい。


「アイリ様、魔力を感じることは出来るようになりましたか?」

「・・・えっと」


幻想魔法はできるようになったものの、魔力を感じることは未だによくわからなかったりする。

空気中にある魔力を感じろと言われても目に見えないし空気は空気じゃないか。

空気中から魔力を感じろって、空気から酸素だけを感じろってことでしょ。

そんなのわかるわけないじゃん。


「殿下も風魔法をお使いできるので、アイリ様も練習次第ではできるようになるかもしれませんが・・・。」


へー、お父さん、風魔法も使えるんだ。

物理魔法も使えて風魔法も使えるとかお父さんチートだな。


「そもそも魔力とは空気中に漂う魔力の源、魔素の集合体のことです。我々は魔素を体内に取り込み体内で魔力として練り上げ魔法を行使します。なので魔力を感じることは魔法を使うことにおいて必要なことなのです。」


モーリスの言ってることは前に読んだ魔法の本と同じ内容なので覚えてはいるのだけれど、それなら何故、魔力を感じない私は魔法を使えているのだ?

そもそも魔素を取り込んで魔力として練り上げるってなんだ?

呼吸をするのに酸素を取り込んで二酸化炭素を吐き出すのを意図的にしろってことでしょ?そんなの無理だ。だって体の仕組みがそうなっているんだから。

だから勝手に魔素を取り込んで勝手に魔力として魔法が使えるんじゃないのかなって思うんだけど、

もしかしてこっちの世界の人は呼吸も意図的にできたりするのか?


「できません。そもそもアイリ様のおっしゃるサンソとかタンソがなんのことかわからないのですが。」


んー、魔法が発達していると科学が進まないってのはテンプレだね。

向こうは科学が発達しているから魔法は非現実的な扱いだし。


「アイリ様の魔法は異世界出身だからなのかもしれませんね。それか時空の歪みに触れたことが作用しているのか。・・・時空の歪みが原因なら殿下の魔法もそれで説明がつくやもしれません。」

「・・・時空の歪みってあれなんなんですか?」

「時空の歪みはまだ研究段階ですが、おそらく魔力の掃き溜めだと推測しております。我々は魔素を取り込み体内で魔力に練り上げておりますが、魔法として行使されなければ魔力は自然に体外へと四散されます。幼少期に初めて四散された魔力を魔法の片鱗と呼んでおります。この四散された魔力が一カ所に大量に集まって出来るのが時空の歪みではないだろうかと思っております。王宮にはたくさんの人がいますので四散された魔力が集まりやすいのでしょう。」

「へー、それじゃ、また四散された魔力が集まったら時空の歪みができるかも?」

「そうですね。何年かかるかわかりませんがその可能性はあります。殿下が行方不明になられて18年で再び魔力の掃き溜めができるのは異常なので他の力が作用している可能性もなきにあらずですが。まだまだ原因の解明には至っておりません。」





「アイリ?どうした?浮かない顔をしているが。」

「んー・・・ちょっと考え事。」


モーリスとの魔法講義を終えた私は王宮の庭園でルイスとお茶をしていた。

私は魔法やら王族やらの講義。ルイスは公務とそれぞれ忙しくしているが、毎日のお茶は欠かしていなかった。

というか周りから強制的にルイスとの時間を取るように言われている。

仲を深めろってことなんだろうけど、その辺は放っておいてほしい。私達には私達のペースがある。


「今日の講義は難しい物だったのか?」

「んー、難しかったっていうか、魔法と時空の歪みの話をしていたんだけど、・・・時空の歪みが短期間でできるものじゃないってわかって、本当に向こうの世界に帰れないんだなーって改めて実感したというか・・・。」


時空の歪みが18年でできたのも異常だってモーリスは言っていた。


「アイリは帰りたいのか?」

「帰りたい?んー、帰りたいというか、駅前のタピオカミルクティーがまた飲みたいなーとかあの漫画の続きどうなんっただろうなーとか、たまにはドレスじゃなくてもっとラフな格好で町を歩きたいなーとか、あとは・・・友達に会いたいなーって。」


春菜には会おうと思えば会えるって言われたけど、やっぱり異世界じゃ無理かもしれない。


「でも、時空の歪みができて向こうに行けたとしても、こっちに帰ってくることができなかったら困るから行かないけどね。」

「・・・そうか。」


あれ?今度はルイスが考えこんじゃった?


「ルイス?」

「…アイリには悪いが、俺はアイリを手放すことはできない。」

「えっ…と…なんの話?」

「アイリが向こうの世界に帰りたいと言っても帰せない。」

「えっ?帰らないよ?」


向こうの世界に未練がないとは言えないけれど、私はこの世界で生きる覚悟をした。

行って帰ってこれないのなら行く気はない。


ルイスが私を手放せないと言うのなら、私もルイスから離れるつもりはない。


「私はルイスと一緒にいるって決めたんだから。」


今日はたまたま向こうの事を思い出したから感傷的になってるだけ。

それで私が向こうに帰りたがってると思われるのは心外だなー。


「ルイスも私と一緒に居てくれるんでしょ?」

「あぁ。当然だ。」


その答えに笑みを浮かべると当然のようにルイスも笑みを返してくれた。




タピオカミルクティーも探せばこの世界で見つかるかもしれない。

漫画の続きは残念だけど、こっちの世界にも面白いお話はたくさんある。

いつかこっそりラフな格好をしてお忍びで町に出ればいい。

この世界だって悪くない。


春菜に会えないのは寂しいけど、それは仕方ない。

いつか時空の歪みが出来たら手紙だけは送ろう。

そのために今から春菜宛ての手紙を書きためて行こうと思った。



この世界の魔法についてをまとめてみたかっただけ。

矛盾箇所については後々修正予定。

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