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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第1巻 ウェディングドレスですよ、女神様!
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8 結婚式をやろう!?

ついに登場した太陽神アマテラス様。

アマテラス様は、うずめの神としての記憶を元に戻すことはできるのでしょうか?


では、続きをどうぞ!

「うずめが人間の子どもになってしまった事情はよく分かった。だが、あと千年は黄泉国から出られないはずだったのに、サルタヒコはなぜ戻って来られたんだ?」


 オモイカネ(本人が呼び捨てにしていいって言うから、お言葉に甘えてそうしている)が、猿田くんにそう聞いた。


黄泉国よみのくに葦原中国あしはらのなかつくにへだてる結界が急激に弱まったのだ。それで、帰って来られた」


「猿田くん。葦原中国って何?」


「人間たちが住む地上界のことをわれわれ神はそう呼んでいる」


 あしはらのなかつくにぃ……? なーんか言いにくそうな名前だなぁ。


「はるか昔、アマテラス様のお父上のイザナギ様が、黄泉国の鬼たちが葦原中国に来られないようにするため、両世界の間に巨大な岩を置き、結界を張ったのだが……。もしかしたら、その結界が弱まってきたのかも知れない」


「それは問題ですね、オモイカネ。葦原中国に、黄泉国の鬼たちがやって来てしまう」


 さっきまでわたしに「プリンとってごめんねぇ~」と泣きついていたアマテラス様が、シリアスな顔をして言った。


「黄泉国の鬼って、葦原中国に来て何をしようとしているんですか?」


「闇夜におおわれた黄泉国の住人である鬼たちは、葦原中国の人間たちをみんな鬼に変えて、この世のすべてを永遠の夜の世界にしてしまおうと企んでいるんです」


「え、永遠の夜の世界!?」


「わたしは日本の総氏神ですから、日本人がみんな鬼になってしまったら、消滅してしまうんですよ」


 太陽神が消滅したら、世界は真っ暗闇……永遠の夜になってしまうというわけか!


「そんなの冗談じゃないですよ! 神様なんだから、何とかてください!」


「そんな耳元で怒鳴らなくても、分かってますよぉ……。はぁ~。みんな、わたしに働け、働けってうるさいんだから……」


 アマテラス様は、ぶつぶつと文句を言いながら、パチンと指を鳴らした。すると、


 ぼふん!


 と、煙が出たかと思うと、頭にピンクのリボンをつけたニワトリが登場したのだ。


「わたしの神使しんし、トブトリーナ2世ですよ」


「うずめ様、お久しぶりです。そちらの半蔵くんはお元気でしょうか?」


 ちょっと色っぽい声をしたトブトリーナ2世は、わたしに愛想をふるまき、そう聞いた。


「あ、ああ。元気だと思うよ。たぶん」


「それはよかった。半蔵くんに、また遊びに来てくださいとお伝えください」


「わ、分かった……」


 半蔵のガールフレンドなのかしら? ニワトリのくせして、いっちょまえに彼女持ちかよ……。


「トブトリーナ2世。葦原中国に黄泉国の鬼が潜入していないか、早急に調べるよう、黄泉国対策係すぐやる課に伝えて来てください」


「はい、かしこまりました」


 アマテラス様に命令されたトブトリーナ2世は、羽をバサバサさせて、洞窟を歩いて出ていった。……さっきは煙とともにさっそうと登場したのに、普通に歩いていくのね。


「わたしたち神は、神使たちがどこにいても、彼らを強制召喚することができる。だが、それ以外の場合は、神使たちは瞬間移動ができないのだ」


 オモイカネが丁寧に教えてくれた。この人、インテリで気が短そうだけれど、案外親切だ。


「……とりあえず、黄泉国の問題はこれでいいとして、次はうずめの問題ですね」


「はい、アマテラス様。うずめは、神としての記憶をさっぱり忘れているため、いまだに自分がアメノウズメだという自覚がなく、オレを夫として認めてくれないのです」


 猿田くんが、泣きつくようにアマテラス様に言った。


 アマテラス様は、「う~ん」と腕組みをしてうなった後、


「わたしの力なら、うずめの記憶を元に戻すことはできるでしょう。でも、神としての記憶を無理に戻すと、今度は人間の笑美えみうずめとしての記憶を失ってしまう可能性が高いです」


 と、とんでもないことを言いだしたのである。


 ええ! それって、お父さんやお母さん、鈴ちゃんや雪音ちゃん、他にもたくさんいる学校の友だちのことを忘れちゃうってこと? そ、そんなの嫌だよ!


「あ、アマテラス様。わ、わたし、神様だったころの記憶なんて……」


「落ち着きなさい、うずめ。あなたが嫌がることを無理やりしたりはしないわ。サルタヒコ、うずめのこの動揺を見なさい。あなたにとって、うずめは大切な妻だということは分かります。しかし、それと同じように、今のうずめには絶対に忘れたくない家族や友人がいるのです。それを忘れさせてしまうのは、残酷なことだとは思いませんか?」


「……で、では、オレはどうしたらいいのですか? 愛する人に忘れられる孤独は、二千年の月日を死者の世界ですごした孤独に勝ります。悲しみのあまり、胸が張り裂けそうです!」


 さ、猿田くん……。そこまで、奥さんのことを……アメノウズメを愛しているんだ……。


 でも、申しわけないけれど、わたしは何も思い出せないんだよ。まだ、わたしはアメノウズメっていう女神様なんかじゃないって、そう思っちゃっているんだよ……。


「根気よく、うずめが自然と思い出すのを待つしかないですね……」


 アマテラス様が、猿田くんを気の毒そうに見つめながらそう言うと、オモイカネが、


「わたしにひとつ考えがあります」


 と、言いだした。猿田くんが、オモイカネの言葉に食いつく。


「おお! さすがは知恵の神! それで、その考えとは?」


「大昔にやった、うずめとサルタヒコの結婚式は、天津神あまつかみ国津神くにつかみの国際結婚ということで、大いに盛り上がった。あの時のことを覚えているか?」


「もちろんだ。あの日、オレはアマテラス様と八百万の神々の前で、うずめに永遠の愛を誓ったのだからな」


「天津神? 国津神? 国際結婚? いったい何のことよ」


 さっぱりワケワカメのわたしが首をかしげると、オモイカネがまた丁寧に教えてくれた。


「天津神とは、われら高天原たかまがはらに住む天上の神々のこと。国津神は、サルタヒコのように葦原中国にいた地上の神々のことだ。当時、ほとんど交流がなかった天津神と国津神は、おたがいのことをまだよく知らず、あまり仲がよくなかった。だから、天津神のうずめと国津神のサルタヒコの結婚は、国籍がちがう者同士が結ばれる国際結婚のようなものだったんだ。二人の結婚をきっかけに、天津神と国津神は仲良しになったと言っていい」


「へぇ~。それで、その結婚式の話をなんで急にしたの?」


「うむ。これはオレの提案なのだが、結婚式をもう一度やってみたらどうだろう」


 え? 今、何と言いました? け……けけけけけ結婚式ぃぃぃ!?


 わたしと、猿田くんがぁ~?


「結婚式という、夫婦にとっての重要イベントをやったら、うずめもあのころのサルタヒコに対する気持ちを少しは思い出すかもしれない」


「それはいい考えだ! ぜひやろう!」


「ちょっと待てや、HENTAI天狗仮面! 中学生で結婚式なんて冗談じゃないわよ!」


「まあまあ、うずめさん。落ち着いてください。狭い洞窟で暴れたら危険ですから……」


 トヨちゃんがわたしを止めようとしたけれど、プッツン切れたわたしは、右足を大胆に上げてかかと落としの態勢に入った。その時――。


「うずめ~! うずめはどこだぁ~?」


 わたしを呼ぶたくさんの声が、洞窟の外からわいわいと聞こえてきたのだ。


「え? 何? 何なの?」


 ビックリしたわたしは、洞窟から出て、外の様子をうかがった。


 百人……いや、何百人か分からないぐらい大勢の神様が、わたしを探しているみたいだ。


「あ! いた、いた! おーい、みんな! あそこにうずめがいるぞ!」


 そう言ってわたしを指差したのは、高天原の都の門番をやっていたアメノイワト。


「おお! 本当だ! うずめだ! うずめが帰って来たぞ~!」


 たくさんいる神様たちの中でもひときわでかくて筋肉ムキムキの男の神様が、ドタドタと地ひびきを立てながら、こっちに走って来た。


「な、何よ。何なのよ。いったい……」


 動転して、逃げることも忘れてしまったわたしが、あわあわ言っている間に、マッチョの神様はわたしの目の前に立った。


 そして、その巨木のようにたくましい両腕でわたしを赤ちゃんみたいに、


 高い、たかーい!


 といった感じで抱き上げ、ワハハハと笑いながらぐるぐると回転したのだ。


「うわ~! やめて~! 目がま~わ~る~! あ、あんた、いったい何者よぉ~!」


「おいおい。オレの顔を見忘れたのか? 怪力の神、天手力男神あめのたぢからをのかみだよ。アマテラス様が天岩戸に引きこもった時、力を合わせてアマテラス様を外に出した仲間じゃないか!」


「わ、分かった! よく分からないけれど分かったから、お、降ろして! ぎもぢわる……」


「タヂカラヲ。うずめが目を回しているぞ。いい加減、やめておけ」


 アメノイワトがそう注意すると、怪力の神のタヂカラヲは、「あれれ? 悪い、悪い」とわたしにあやまり、ようやく地面に降ろしてくれた。


「うずめ、よく戻って来てくれたな! 十年以上も会えなくて、さびしかったぞ! 今から、うずめ復活を祝した宴会をみんなでやろうと思うんだ。一緒に来てくれ! あっ、サルタヒコもいたのか。久しぶりだな。ついでにおまえも来いよ」


 アメノウズメっていう女神様は、よっぽど神様の仲間たちに好かれていたのね。十数年ぶりの再会をこんなにも喜んでくれるんだもん。ていうか、猿田くん……。


「オレは二千年ぶりだというのに、『ついで』あつかいなのか……」


 何だか落ちこんでいらっしゃる様子。ちょっとかわいそうかも?


「オレたちのアイドル的存在だったうずめと結婚できたおまえは、一万年分の運を使い果たしているんだよ。あと八千年は戻って来なくてもよかったのに」


 アメノイワトが猿田くんをギロリとにらんで、そう言った。


「ちょっと、ちょっと。あんまりいじめたらかわいそうよ」


 猿田くんが「どうせオレなんて……オレなんて……」とぶつぶつ言いながら、いじけ始めたので、わたしは気の毒に思い、フォローを入れた。


「またそうやって、人前でサルタヒコといちゃつこうとする~! 『リア充爆発しろ』とはこのことだぜ!」


 タヂカラヲが野太い声でそう言った。神様のくせして、おかしな日本語を使わないでくれます?


「うずめとサルタヒコの帰還を祝う宴会なら、わたしも参加しないといけませんね!」


 仕事をほったらかして宴会でどんちゃん騒ぎがしたいのだろう。アマテラス様が、ウキウキしながらそう言った。でも、オモイカネがアマテラス様の肩をポンとたたき……。


「ダメですよ、アマテラス様。この書類の山をすべて処理するまで、ここから出さないと言ったじゃないですか」


「ええ~!? そんなぁ~! 人間だって、仕事中に休憩をはさむのに~! トヨちゃん、オモイカネがいじめます。何とかしてくださ~い!」


「アマテラス様、がんばってください。晩ご飯は、わたしが腕をふるって、おいしい料理をたくさんアマテラス様のために作りますから」


 優しい姉が妹をなぐさめるように、トヨちゃんはアマテラス様の頭をなでた。

アマテラス様は、「ぐす、ぐす……。分かった。がんばる~」と泣きべそをかいている。


 何だか、夏休みの間、宿題をずっと放置していたけれど、夏の終わりごろになって親に叱られて、必死こいて宿題をやっている小学生みたいなんですけれど……。

<うずめの一口メモ>

神様がたくさん出てきてにぎやかになってきたね~!

次回もお楽しみに!

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