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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第3巻 三大女神 地球最大の対決!?
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28 大騒動はまだまだ続く!?

「女神たちのデスマッチ大事件」から三日後の水曜日。わたしはいつもの平穏な日常に戻っていた。


 変わっていることと言えば、トヨちゃんがまだわたしの家にいることぐらいだ。


 トヨちゃんは10年おきぐらいに人間たちのグルメや食生活の変化を調査して、アマテラス様のために作るご飯の参考にしているらしい。前回の調査から6年ほどしか経っていないけれど、葦原中国《あしはらのなかつくに》(人間界)に降りてきたこの機会に、しばらくの間わたしの家に滞在して最近のグルメを勉強したいとのことだった。


 優しいお姉さんみたいなトヨちゃんなら、わたしも大歓迎。他の神様たちみたいに困った騒動を起こさないしね!


「あら? うずめさん、どなたからかメールが届いたみたいですよ?」


「登校前のこんな朝早くに、誰からだろう?」


 わたしがスマホを確認すると、アマテラス様からのメールだった(前に高天原へ行った時、アドレスを交換したのよ)。


『オオクニヌシの胴体、見つかったみたいです。夢の世界に逃げこんでいたアヤトヒメをオオクニヌシのもとで働いているユメミとかいう人間の巫女が発見したそうです』


 おや、オオクニヌシ様の体のパーツ全部そろったのか。良かった、良かった。


 それにしても、夢の世界まで逃げちゃうとか、さすがはかくれんぼ上手のアヤトヒメ。


「でも、オオクニヌシ様にお仕えしている人間の巫女さんが夢の世界で発見したと書いてあるけれど、このユメミっていう子は何者なのかしら?」


「人間の中には、神々と同じように、夢の世界を自由に行き来できる「夢渡り」の能力を持った者が稀《まれ》にいるのですよ」


 トヨちゃんが、わたしにそう説明してくれた。


 へぇ~、夢の中を冒険するって楽しそうだなぁ~。

 あっ、でも、わたしは神様だから、わたしにも「夢渡り」ができるのか? そうしたら、そのユメミっていう巫女さんとも会えるかも?


「うずめさん。アマテラス様のメール、まだ文章の続きがあるみたいですよ?」


「ええと、どれどれ……? 『あと、そろそろトヨちゃんをこっちに返してください。ていうか早く返せバカヤロウ』。

 ……ま、まずい。愛するトヨちゃんが帰って来なくてよほどイライラしているのか、日本最高神の言葉遣いが荒《すさ》んできている……!! トヨちゃん、一刻も早く高天原に帰ってあげて!? じゃないとアマテラス様の怒りが爆発して、また天岩戸《あまのいわと》に引きこもるかも~!!」


 わたしが夏に起きた第二次天岩戸引きこもり事件を思い出して泣きつくと、トヨちゃんは「あらあら、もう少し辛抱してくださると思ったら、困りましたね……」と苦笑した。


「後で『なるべく早く帰るようにします』とメールしておきますわ。……でも、一日に一度は高天原の都へご機嫌うかがいに行っているのですけどね……」


「アマテラス様は寂しがり屋だからなぁ~。あははは……」


 今回の騒動でほとほと疲れたから、しばらくの間は神様関連の事件には巻きこまれたくない。アマテラス様が第三次天岩戸引きこもり事件を起こさないことを祈るしかないよ……。


「うずめ。そろそろ家を出ないと、学校に遅刻するぞ」


 わたしがアマテラス様からのメールに頭を悩ませていると、猿田くんの声がどこからともなく聞こえてきた。


 ほえ? 部屋を見回しても猿田くんの姿はないのに、いったいどこから……。


「ここだ、ここ。ベッドの下だ」


「ふぎゃぁーーーっ!?」


 ベッドの下からぬっと現れた天狗の仮面をわたしは反射的に踏みつけていた。


 どこから出てくるねん!!!


「い、痛い! 痛い! や、やめ…………ああ、でも、ここから眺めるうずめのスカートの中は絶景……げふっ!!」


「なんでベッドの下から出てきたのよ!? あんた、もしかして、まだわたしのストーカーを……!」


「ち、違う! 誤解だ! うずめと一緒に登校しようと思って、導きの矛を使って神社からうずめの家まで瞬間移動しただけなんだ。そうしたら、たまたまベッドの下にワープしてしまって……」


「霊力をそんなことで無駄使いするなっ!!」


「げふっ!! ……と、ところで、うずめは毎週水曜日は水色系の下着なのだな。もしかして、曜日によって下着の色をきめ……げぼばべばっ!?」


「なんでわたしの下着のローテーションを把握してんのよ!?」


「お、お前がしょっちゅうかかと落としをしているからじゃないかぁ~!! あんなの、自分からパンツを見せてるようなもの……げごぎがべ!?」


「かかと落とし!! かかと落とし!! かかと落としーーーっ!!」


 わたしが猿田くんに制裁を加えている横で、トヨちゃんは呆れ返ったような目でわたしたち夫婦神を見つめていた。


「あの……お二人とも。そろそろ出かけないと、本当に遅刻しちゃいますよ?」




            ☆   ☆   ☆




「わたしも記憶操作の術を早く覚えて、猿田くんの頭の中からわたしの下着の情報を消さなきゃ……」


「待ってくれ、うずめ。それだけはやめてくれ。愛する妻との記憶をほんの一部でも消されるなんて、これ以上の悲劇はない」


「わたしの下着のローテーションを覚えられていることが、わたしにとっては悲劇なのよ!」


「うずめさん、往来であまり下着、下着と大声で連呼しないほうが……」


 わたしと猿田くん、トヨちゃんが通学路をにぎやかに歩いていると、公園前で鈴ちゃんと出会った。わたしたちが来るのを待っていてくれたらしい。


「おはようございます、うずめさん」


「鈴ちゃん、おはよう! ……あれ? 一緒にいる二人は、もしかして巫女アイドル隊の……」


「おはようございます、女神様! 菜花小学校五年生の小古曽《おごそ》椿《つばき》っす!」


「お……おはようございます……。あ、あたしは、畏れ多くも女神様と同じ中学校に通わせていただいている二年生の名取《なとり》紗枝乃《さえの》……です。呼び方は名取、ゴミクズ、ゴキブリ……どれでもけっこうですので、お好きにお呼び……ください」


 小学生の椿ちゃんは天使の羽がついたランドセルを背負いながら元気な声で、ひたすらネガティブな名取さんはぼそぼそと小さな声でわたしにあいさつをしてくれた。


 対照的な二人だけど、二人ともキラキラと輝く尊敬のまなざしでわたしを見つめている。


「女神様の数々のご活躍を鈴お姉さんからうかがいました! 夏休みに日本中が真っ暗闇になった異常気象も女神様が解決してくださったと聞いて、すっごく尊敬しちゃったっす! わたし、これからも巫女として女神様にお仕えしたいっす!」


「あ、あたしも……こんなゴミクズ以下のあたしでも女神様のためにがんばれることがあると鈴さんから聞いて……死ぬ気でがんばってみようと決心……しました。もしも足手まといになった時は、ゴミクズ以下のあたしなんて見捨てて……ください」


 どうやら、鈴ちゃんに色々と洗脳されてしまっているらしい。二人とも、わたしのためなら死を厭《いと》わない強烈な信仰心を植えつけられているような気がする……。


「す……鈴ちゃん、ちょっとやりすぎじゃないの?」


 わたしが鈴ちゃんに耳打ちすると、鈴ちゃんはウフフ……と悪そうな笑みを浮かべた。


「我が愛野家が先祖代々お仕えしているうずめさん――アメノウズメ様は、前世の記憶が喪失した影響で、いまだ神様の力が安定していません。先日のような騒動が起きた時、うずめさんをお守りする巫女たちが必要なのです。それが、わたしたち巫女アイドル隊……。

 いずれは本格的にアイドルデビューして、人間たちにアメノウズメ様への信仰心を歌と踊りで植えつけたいと考えています。人々の信仰心をたくさん集めることができたら、うずめさんの霊力もパワーアップするはずです。ふ、ふふふ……。うふふ……」


 鈴ちゃんは恐ろしい陰謀……げふん、げふん、壮大な計画を胸に抱いているみたいだ……。


 アイドル活動は応援するから、ほどほどにね? たぶん、あのアイドルのプロデューサーさん、今回の結果に納得できなくてまたオーディションやるだろうし。


「あっ、そういえば! 女神様を苦しめた邪神とそのお仲間も改心して、いい神様になったんですよね? 悪い神様をいい神様に改心させちゃうなんて、さすがはわたしたちの女神様っす!」


「いやいや、椿ちゃん。ウカちゃんとミヤっちはもともと悪い神様じゃないんだよ? ……そういえば、あの二人、自分から高天原警察署に出頭して『しばらく檻《おり》の中で反省します』とか言っていたけれど、今ごろ元気にしているのかな……」


 警察署といっても、ウカちゃんが赤レンガの立派な建物を爆破しちゃったから、今は急ごしらえで建てた小さな建物らしいけれど。


「アマテラス様のお話では、

『元凶はスサノオなんだし、数日で出してあげる予定です。二人の罰を軽くするかわりに、スサノオには反省文10万文字を書いてもらうことにします。期限は三日。一日遅れるごとに10万文字追加し、内容がめちゃくちゃだった場合は30万文字追加します』

 とのことでしたので、もしかしたらミヤっちさんは今日か明日には出所するかも知れません。あの方はほとんどウカ様に利用されていただけですし」


 トヨちゃんがそう言ってくれたので、わたしはちょっと安心した。スサノオ様は……まあ自業自得ということで。


「ミヤっちとは近い内にまた会いたいなぁ~。昔のわたしとの思い出とか、もっと聞かせて欲しいし」


「きっとすぐに会えるさ。オオミヤノメ殿は昔からお前のことが大好きだったんだ。わだかまりが消えた今は距離を置く必要もないのだし、毎日のように会いに来るかも知れないぞ。はははは」


「ミヤっちも神様の仕事があるし、毎日はさすがに無理だろうけれど、また姉妹みたいに仲良くできることを楽しみにしているよ。うふふふ」


 なんて、わたしと猿田くんは笑い合っていたわけですが……。




            ☆   ☆   ☆




「うずめお姉様、おはようございます!!」


 学校に行くと、教室に制服姿のミヤっちがいた。


「うええ!? ミヤっち、もう出所できたの?」


「はい。つい15分ほど前に」


「じ、15分前に出所して、なんでもう人間界の学校にいるわけ!?」


「天のはしごを猛ダッシュで駆け下りて来ました! 一刻も早くお姉様にお会いしたかったので!」


「しゅ、しゅごい行動力……」


 ミヤっちは気弱で泣き虫だけど、どこまでも真っ直ぐで純粋な女神様だ(思いこみが激しいとも言うけれど)。本当にわたしに会いたい一心でぶっ飛ばして走って来たのだろう。


「真っ先にわたしのところに来てくれたのは嬉しいけど……その制服はどうしたの? まさか、今日からここの生徒になるとか言わな……」


「今日からここの生徒になります!」


「うわー、やっぱりー……」


「お姉様の双子の妹――笑美《えみ》宮子《みやこ》という設定で、学校のみなさんの記憶は改ざん済みです♪」

 

「で、でも、ミヤっちにはアマテラス様の侍女のお仕事やチーム稲荷大神としてのお仕事があるんじゃないの?」


「もちろん、自分の仕事はちゃんとこなしますのでご心配にはおよびません。それに、うずめお姉様のおそばにいることはアマテラス様やウカ様からのご許可もいただいているのです」


「えっ、そうなの?」


「はい。人間の娘として転生してしまったうずめお姉様と蘇ったばかりのサルタヒコ様……いいえサルタヒコさんは、霊力がまだ完全に復活していません。そんな弱った状態のお二人に、もしも今回のような暗殺者が襲いかかってきたら、一大事です」


 いや、暗殺者はあなたとウカちゃんだったでしょうが。なに他人事みたいに言ってんねん……。


「最近では黄泉国《よみのくに》の鬼ヨモツコが葦原中国《あしはらのなかつくに》(人間界)に入りこんで悪さをした事件(1巻参照)がありましたし、お二人には霊力が万全になるまでの間はボディーガードが必要でしょう。そう考えて、『わたしにお二人のボディーガード役をつとめさせてください』とアマテラス様に願い出たのです。……うずめお姉様が元の力を取り戻すまで全力でお姉様を守る、これがわたしの新たな目標なんです!」


 たしかに、わたし言いました。新たな目標を持ってがんばればいい、って。

 そして、ミヤっちは目標のためならば全力でがんばる真面目な子……。過激なほどに真っ直ぐで、極端で……。


 も、もしかして、わたしを守るために、わたしのそばに365日いるつもりか!? ミヤっちの愛が重いよぉ……!


「そ、そそそそそうなんだ。今朝届いたアマテラス様からのメールにはそんなこと一言も書いてなかったけど……」


「それは、アマテラス様からご許可をいただいたのがついさっきだったからでしょう。高天原警察署の留置所から出て2分でアマテラス様の御殿《ごてん》に行き、3分でアマテラス様を説得、それから5分で学校に到着、残りの5分はクラスメイトのみなさんとおしゃべりしながらお姉様がいらっしゃるのをお待ちしていました」


 実質、留置所を出てから10分でここに来たのか……。アマテラス様を3分で説得したとか言っているけれど、アマテラス様がたじたじになるほどのものすごい気迫で要求したんだろうなぁ……。


「で、でもさ、今はトヨちゃんがそばにいてくれるし、それほど心配はしなくても……」


「トヨウケビメ様は人間たちの食生活を調査し終えたら高天原にお帰りになるのでしょう? …………もしかして、わたしがそばにいるのは嫌……ですか?」


 うるるっと瞳を潤ませ、今にも泣きそうになるミヤっち。あわわ、し、しまった!


「ち、違うの! い、嫌じゃないよ! で、でも、わたしを守るためにミヤっちが傷つくのは嫌だから……。ミヤっちは戦闘向きの神様じゃないでしょ?」


 それを言ったらトヨちゃんも戦闘向きの神様じゃないけど、「トヨちゃんに少しでも手を出したら、アマテラス様に全力で殺される」というお守り(?)がトヨちゃんにはあるからね……。


「それならば、ご心配はいりません! いざとなったら、周囲の人間さんたちを盾にしてでも、お姉様をお守りいたします! すでに、この教室の生徒さんたちは買収済みですし、何かあったらお姉様のために体を張ってくれることでしょう」


「な、なぬ!? ば……買収!?」


 わたしが「買収」という穏やかではない言葉に驚くと、すでに教室にいた雪音ちゃんがわたしに話しかけてきた。


「おはよー、うずめちゃん! うずめちゃんの妹のミヤっちって、太っ腹だよねぇ~。親戚の富豪からもらったデパート商品券10万円分をクラスのみんなにプレゼントしてくれるんだもん! 何か困ったことがあったら、言ってね? デパート商品券10万円分をもらった恩は必ず返すから!」


 他の生徒たちも、続々とわたしにニコニコ笑顔で話しかけてくる。


「笑美《えみ》さんの家って、お金持ちだったのね! わたしも笑美さん姉妹のためなら、何でも力を貸すからいつでも声をかけて!」


「ありがとうな、笑美! お前の妹からもらった商品券で好きな服や靴が買えるよ! この恩は忘れねぇ! 笑美姉妹のためならばたとえ火の中水の中でも駆けつけるぜ!」


 ……デパート商品券10万円分で芽生える熱い友情。い、嫌すぎるぅ~!!


「み……ミヤっち、友達を金目のもので買収するとか、良くないよ……」


「え? 最近の子供は、友達に毎月お金を渡しているとかネットで見ましたけど? 友達料金という制度なのですよね?」


「どこ情報だよ!! ミヤっち、いくら思いこみが激しいからって、ネットの情報を鵜呑《うの》みにしすぎぃぃぃぃぃ!!」


 わたしが全力で叫んでツッコミを入れている横で、猿田くんが「人間界にはそんな制度があったのか……。世知辛い世の中なのだな」などと呟いていた。わたしの相棒も人間界の常識が無さすぎる……!


 と、トヨちゃん何とか言ってあげて……あっ、「わたしは無関係ですので」と言わんばかりに横向いてる……。


「む、むむぅ……。困りました。ミヤっち様は『百合キャラ』という点でわたしとキャラがかぶってしまいます。うずめさんの『ゆるゆり』担当はわたしなのに……。あっ、でも、ミヤっち様はどちらかいうと『ガチゆり』なので、すみわけはできるかも知れませんね。良かった、良かった……」


 よく分からないことを一人で悩み、勝手に自己解決している鈴ちゃん。 


 だ、誰か、ミヤっちに人間界の常識を教えてあげ……くっ、やはりわたしがこの子の面倒を見るしかないのか……!


「やれやれ、世話の焼ける妹ができて、これからも大騒動が続きそうだよ。トホホ……」


「これからもよろしくお願いいたしますね、うずめお姉様♪」


 無邪気に微笑みながら、ミヤっちはわたしに抱きついた。豊かな胸がわたしの貧にゅ……慎ましやかな胸に当たる。


 ひとつだけ言わせて欲しい……。

 双子の姉妹という設定なのに、妹のほうが圧倒的におっぱいがでかいのは嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!




         うずめちゃんの神様days 第3巻おわり!

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