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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第3巻 三大女神 地球最大の対決!?
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1 ストーカー!?

 読者のみなさん、お久しぶり~! わたし、笑美えみうずめ! チアリーディング部に所属する元気な中学一年生!


 あと、ここだけの話だけれど、神様やってます。


 神様だった頃の記憶はまだぜんぜん思い出せていないんだけれど、アメノウズメっていう女神様らしいのよ。


 しかも、夫持ち(!?)なんだよねぇ~……。


 アメノウズメの夫サルタヒコ……わたしは猿田くんと呼んでいるけれど、こいつが天狗のお面をしているとっても変てこな奴でさぁ~。


 まあ、悪い人間(じゃなくて神様か)ではないし、素顔はわたし好みのイケメンだから、今のところ「友達以上恋人未満」みたいな距離感で仲良く(?)してあげているけれどね。




 なんて、前回の冒頭部分をコピペした手抜きのあいさつをしてみました。


 いや、ごめん。そんなに怒らないでってば。


 実は、わたし、今は気の利いた自己紹介を考えている余裕がないのよね。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 二学期が始まって五日目ぐらいから、登下校中に何者かの視線を感じるようになったのよ。


「ふぅー……ふぅー……ふぅー……」


 今もほら、わたしの数歩後ろからキモチワルイ息遣いが……。


 わたしは、サッと後ろを振り向いた。


「…………!」


 黒い影が、電柱の陰に隠れた。……ような気がする。


 むむぅ~。

 わたしが歩き出したら足音とキモイ息遣いが聞こえて、振り返ったら素早く物陰に隠れる……さっきからこれの繰り返しなんだよねぇ。


「やっぱり……アレかな。ストーカーなのかな。……仕方ないなぁ~。わたし、可愛いからなぁ~。ポッ……」


 などと呟きつつ、わたしは無表情で膝の屈伸運動を始めた。もちろん、強烈なかかと落としを繰り出すための準備体操である。


 まったく……。朝っぱらから美少女中学生を尾行するなんて、困ったストーカーさんだよ。


 ザッ……ザッ……ザッ……。


 む! 足音! 迷いのない足取りでこっちに近づいて来る!


 きっと、ひとけの少ないこの通りで犯行におよぶつもりね!


「ストーカーは犯罪よ! かかと落としでも喰らって反省しなさーーーい!!」


 わたしはくるりと体を回転させると、その勢いのまま、かかと落としを背後のストーカーにお見舞いした。


 喰らえ! お父さん直伝の護身術かかと落としーーーっ!!


「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ!! また鼻が折れたぁぁぁぁぁ!!」


「……へ?」


 わたしのかかと落としを喰らったのは、なんと猿田くんだった!


 猿田くん――人間界で人間のふりをしている時は、猿田彦之進(ひこのしん)という偽名を使ってる――はいつもの天狗のお面をかぶっていて、天狗の鼻がポキリと折れていた。どうやら、わたしのかかと落としをギリギリかわしはしたけれど、天狗の長い鼻に当たってしまったみたい。


「ひ、ひどいぞ、うずめ。声をかけようと思って近づいただけなのに、なぜ殺人技をオレに仕掛けてきたのだ」


「殺人技じゃないよ。か弱い女の子が身を守るための護身術だよ」


「前から何度も言っているが、あの技は絶対に護身術ではない。絶対に、違う」


「武道家のお父さんが『これは護身術だ』って言っているんだから、間違いないってば。……そんなことより、もしかして猿田くんがわたしのことをずっとストーカーしていたの?」


「ストーカー? ストーカーって、アレか。特定の人間を異常なほど固執してつきまとう迷惑なヤツのことだろう? たしかに、オレは、うずめに変な虫がつかないか心配でこっそり後をつけたり、可愛い寝顔を確認するために夜中に部屋に忍び込んだりしているが、ストーカーではない。オレはお前の夫だ。夫として当然のことを……げふっ!」


 わたしは、猿田くんの頭に手刀を振り落としていた。


「てめぇが犯人か、このHENTAI天狗仮面」


「ち、違う! オレはストーカーなんかじゃない! 信じてくれ!」


「さっき、自供してたじゃん! 尾行も、寝室に忍びこむのも、立派なストーカー行為なんだからね! サイテー!!」


「もうしない! もうしないから許してくれ! 毎晩、神社の本殿で一人寂しく寝るのが辛かったんだ! できるだけうずめのそばにいたかったんだ!」


「問答無用! そこに正座しなさーい!!」


「うずめさん。少し落ち着いてください。ストーカーは、別にいるようです」


 わたしが猿田くんをガミガミ叱っていると、いつの間にかわたしの隣にいた鈴ちゃんがそう声をかけてきた。


「わっ、鈴ちゃん。おはよう」


 ちょっと驚いたわたしは声を若干裏返させて、朝のあいさつをする。


 わたしの幼なじみの愛野あいのすずちゃんは、猿田くん(サルタヒコ)とわたし(アメノウズメ)をまつっている神社の娘で、おさげが似合う可愛い女の子だ。わたしのことを友達として、そして神に仕える巫女として大切に思ってくれている。


「おはようございます、うずめさん」


「犯人は別にいるって、どういうこと?」


「はい、実は……。あっ、その前にいつもの日課をやってもいいですか?」


「え? ああ、うん……」


 わたしがうなくと、鈴ちゃんはわたしに二回お辞儀して、


 パン! パン!


 と、二回拍手をし、またお辞儀をした。


「昨日も健やかにすごすことができました。ありがとうございます、ありがとうございます。家内安全、無病息災、交通安全、父のイボ痔が治りますように、母が失くしたブランド物の腕時計が見つかりますように、うずめさんが今日もわたしと仲良くしてくれますように。あと、それから、わたしにも姉のような素敵な出会いがありますように。どうかよろしくお願いいたします……」


 手を合わせて、わたしにお祈りをする鈴ちゃん。


 イボ痔か……。わたし(芸能の神様)のご利益で治せるかなぁ……。


 というか、鈴ちゃんがわたしに毎日お祈りをするから、鈴ちゃんちの家族の悩み事をすっかり把握してしまっているわたしがいる。


 鈴ちゃんのお父さんは頭痛持ちで、たまにイボ痔に苦しんでいる。鈴ちゃんのお母さんは、しょっちゅう物を失くすみたい。オリバーさんとめでたく結婚したかなでさんは、夫婦仲は上手くいっているみたいだ。


「……ええとぉ~、そろそろ話の続きをしてもいいかな?」


「はい。サルタヒコ様以外にもストーカーはいる、という話でしたね」


「ちょっと待て、鈴。その言い方は語弊ごへいがないか?」


 猿田くんがそう言ったけれど、鈴ちゃんはスルーして話し始めた。


「わたし、朝っぱらから通学路で夫婦漫才めおとまんざいをしているお二人を見かけて声をかけようとしたのですが……」


「いや、鈴ちゃん。さっきのは別に夫婦漫才じゃないからね?」


「ふと数歩先の電柱を見ると、黒い布のようなもので全身を覆った不思議な人が電柱に身を隠していることに気づいたんです。その黒ずくめの人は、『はぁ……はぁ……』『ふぅー……ふぅー……ふぅー……』と荒い息遣いをしながら、電柱の陰からお二人のことをじーっと見ていました」


「不思議というか完全に不審者だよね、それ……」


 ていうか、やっぱりあそこの電柱に隠れていたのか。


「怪しいなぁと思ったわたしは『あの、すみません。そこのHENTAIさん』と声をかけたのですが、その黒ずくめの人はビクッと肩を震わせると、脱兎のごとく逃げていってしまいました」


「う~ん。やっぱり、そいつがわたしのストーカーなのかなぁ~……」


「わたしは追いかけようとしたのですが……どこからともなくやって来た白いキツネが黒ずくめの人を背中にのせ、天高く空へと駆けあがって消えてしまったのです」


「ほえっ? き、キツネ!? しかも、空を飛んだの!?」


 そのキツネ、あきらかにただの動物じゃないわよね。


 はっ!? ま、まさか……。


「なるほど、分かったぞ。動物を使役しえきしているということは、つまり……」


 猿田くんも不審者の正体に察しがついたらしい。わたしは猿田くんにコクリと頷いた。


「そうね。たぶん、そいつは……」


「サーカスの猛獣使いだな!!」


「ちゃうわ! ていうか、キツネは猛獣じゃないでしょーが!」


 わたしはお笑い芸人みたいに猿田くんにツッコミを入れた。お笑い番組が好きな鈴ちゃんが「ナイスつっこみです、うずめさん! さすがは芸能の女神様!」と喜んでいる。


「え!? サーカスの猛獣使いではなかったら、いったい誰が動物を使役できるんだ?」


「わたしたち神様じゃない!」


 わたしはそう言うと、ピュー! と口笛を吹いた。


「呼ばれて飛び出てコケコッコー!! 神鳥かんどり半蔵はんぞう、参上コケ!!」


 わたしの影から赤いとさかがにょきにょきっと現れ、一羽のニワトリが発射されたロケットみたいに勢いよく飛び出す。わたしの神使でお調子者の半蔵だ。


 半蔵が出現時に巻き起こした風は、わたしと鈴ちゃんのスカートをもろにめくれさせた。そして、勢いあまって猿田くんのあごに激突し、猿田くんは、


「あべしっ!?」


 と変な声を出しながらひっくり返った。


「鈴ちゃんが見たっていう不審者は、きっと、動物たちを御使いにしている神様よ!」







<雑談コーナー:うずめ×猿田>


猿田

「しょっぱなから、オレの扱いがひどくないか……?」


うずめ

「ストーカー行為をしていた天罰よ、HENTAI天狗仮面」


猿田

「そのHENTAI天狗仮面という呼びかた、いい加減やめてくれます!?」


うずめ

「読者に覚えてもらいやすいニックネームがあったほうがいいんじゃない?」


猿田

「そんなニックネーム、嫌だぁぁぁぁぁぁ!!!」

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