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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第2巻 日本最凶の姉弟ゲンカですよ、女神様!
36/67

15 みんなで力を合わせて!

「こなくそ~! こ、これでどうだぁ~!」


 わたしの入魂のコサックダンスが終わると、八百万の神様たちは「おおーっ!」という歓声とともに大きな拍手をした。天岩戸からもパチパチパチというアマテラス様の拍手の音が聞こえる。そして、岩戸の中から次の踊りをリクエストするのだった。


「うずめ~。今度はどんな踊りを見せてくれるの~?」


「もう疲れましたよ! チアダンス、盆踊り、ブレイクダンス、ジャズダンス、コサックダンスと色々な踊りを披露したんだから、いい加減、出て来てください!」


 わたしが半ば発狂しながら言うと、岩戸はシ~ンと静まり返り、応答無し。どうやら、わたしのダンスは見るだけ見て、出て来る気はまったく無いらしい。


「そりゃぁ、外の様子が気になったら、あの穴から望遠鏡で見ればいいんだからなぁ~」


 タヂカラオが鼻をほじりながら言うと、オモイカネが「のんきなことを言っていないで、何か策を考えろ!」と叱った。


「え? 無理だって。オレ脳筋だし。そういうのは知恵の神のお前の仕事だろ~?」


「ぐっ……。いい知恵があるのなら、とっくにそれを実行している!」


 オモイカネが焦ってイライラするもの無理はないわ。

 こうしている間にも、地上は暗闇に覆われて人々は混乱し、邪神たちがみんなに不幸をばらまいているのだもの。アマテラス様には、一刻も早く出て来てもらわないと困るよ。


(神様たち、みんな疲れているみたい。わたしはもう体力の限界……というか、踊りのネタが尽きてきたし……)


 何かアマテラス様の興味を引くことがあればいいのだけれど。寂しがり屋なアマテラス様が、天岩戸から出たくなるような何かが……。


(あっ、そういえば猿田くんがこう言ってたな……。「オレたち神もチームワークで問題を解決しているんだ」って)


 猿田くんの言葉をふと思い出し、わたしは自分一人だけではなくみんなで踊ってみたらどうだろうと考えた。


 寂しがり屋のアマテラス様のことだ。みんなでわいわいと楽しそうに踊っていて、自分だけが洞窟の中に引き籠っていたら「わたしだけ仲間外れは嫌ぁ~! 仲間に入れて~!」と考えるかも知れない。


「んー……。でも、みんなで陽気に楽しく踊れるダンスって何があるかしら」


「みんなで陽気に踊るダンス? ……それならフラダンスなんてどうだ」


 オモイカネが急に思いついたようにそう言ったけど、わたしは「残念だけど……」と頭をふった。


「わたし、フラダンスはよく知らないのよね」


「コサックダンスは踊れるのにか。変な踊りの女神だな……。だったら、外国の神様を召喚して教えてもらおう」


「へ!? 外国の神様の力を借りることができるの?」


「ああ、課金をしたらな」


「か、課金? 何を言って……」


「いでよ、神カモーンガチャ!!」


 オモイカネが両手をバッと広げてそう叫ぶと、パァァァとまばゆい光がわたしたちの前で発生し、たくさんのカプセル(人間が一人入れるようなサイズ)が入った巨大なガチャ台が出現した。


 そう、子供たちがよくやっているあのガチャガチャだ。


「えーと、オモイカネさん? これは……?」


「世界中の神の力を借りる時に使われるアイテムだ。このガチャ台にお金を入れると、われら日本の神々だけでなく世界中の神々がガチャ台から出てくる。課金は1回につき500円」


「スマホゲームかよ! わたしはそういうのくわしくないから相場とかわからないけど、1回500円は高すぎるでしょ! 消費者庁に通報するわよ!?」


「本物の神を召喚するのだから、安いぐらいだ。……今週はちょうど『魅惑なダンスであなたを魅了♡ 踊りの女神様どきどき初恋キャンペーン』の最中だから、踊りが得意な女神たちの排出率がアップしている。もしかしたら、ハワイの女神ラカを召喚できるかも知れない」


「女神ラカ? その神様がフラダンスを踊れるの?」


「フラダンスの女神なのだから、当然だ。さあ、課金するぞ! 11連ガチャで勝負だ!!」


 オモイカネは「女神ラカが出ますように……女神ラカが出ますように……」とぶつぶつ祈りながら、ガチャ台に5000円札を投げた。11連ガチャっていうのをやると、サービスで1回だけ余分にガチャを引けるらしい。


「わっ! 5000円札がガチャ台の中に吸いこまれた! ……う、うおおっ!? ガチャ台が白い光につつまれてガチャガチャ言いだしたわ! し、しかも、お星様が飛び交って軽快な音楽まで鳴ってる! なにこれ、演出!?」


 わたしがワーワー言いながら驚いていると、タヂカラオがゲラゲラ笑って「なに言ってるんだよ、うずめぇ~。ガチャに演出はつきものだろぉ~?」と言った。


 知るか、そんなこと!


「おお、ガチャ台からカプセルが出てきたぞい!! このド派手な演出は、きっとSSRじゃ!! わぁいSSR! イシコリドメSSR大好きぃ~!」


 おばあちゃんの見た目のイシコリドメもガチャが楽しいらしく、興奮ぎみにそう叫んだ。


 ……神様にレア度なんかつけて何て罰当たりな人たち……。いや、この人たちも神様だから別にいいのか? でも、外国の神様にもレア度のランキングをつけたら国際問題になるんじゃ……。


 なんて考えていたら、わたしに異変が起きた。


「え? え? わたしの体がピカピカ光り出したんだけど、何なのコレ!?」


 もしかして……と思った直後、わたしはオモイカネたちの前から突然姿を消していた。そして、次の瞬間には、わたしはカプセル状の暗い場所に閉じこめられていたのである。


「ぎゃーーー! 狭い! 暗い! 出してぇーーー!!」


 パニックになったわたしは、ドン! ドン! と内側からたたいた。すると、


 パカッ


 と、意外とあっさりカプセルのフタが開き、わたしは外に出ることができた。


 ……目の前には、がっかりした顔のオモイカネたちがいた。


「出ました! SSR女神、アメノウズメちゃん!! ひゃっほーう!!」


 タヂカラヲたちうずめファンクラブの神様たちだけは盛り上がっていたけれど……。


「お前がガチャ召喚されてどうするっ!!!」


 オモイカネにめちゃくちゃ怒られた。


 仕方ないじゃん! 「踊りの女神様どきどき初恋キャンペーン」なんでしょ!? 踊りの女神のわたしも出てくるに決まってんじゃん!!


 ていうか、自分がガチャの景品になるのって、すごい微妙な気分!


「……くそっ。しかも、うずめ以外はぜんぶ外れだ。本当にこのガチャ、神の排出率悪いな……」


 排出された他のカプセルからは、


「アマテラス様のだじゃれ語録・第1290巻(平安時代後期~鎌倉時代初期編)」


「ギリシア神ゼウスのトキメキ浮気日記帳(ダイアリー)


「日本初の男の娘ヤマトタケルが女装に使った服」


 などといった使い道がよくわからない謎アイテムが出ていた。


 え? 召喚された神様って、わたしだけ? もしかして、レア度が低いのはぜんぶこんな謎アイテムだったりする?

 うわぁ……この神カモーンガチャ、めちゃんこ渋い……。


「気を取り直して、再チャレンジだ! タヂカラオ、今度はお前が金を出せ!」


「え!? オレ? い、嫌だよ、ガチャ運ないもん。もう一回オモイカネが回せよぉ~」


「わたしはすでに5000円も出したんだぞ!? 1回500円とか高すぎるんだよ、このガチャは!」


「さっき『本物の神を召喚するのだから、安いぐらいだ』とか言ってたくせにぃ~」


「早くぅ~! だれでもいいから早くガチャを回してくれぇ~! イケメンの男神が出てきたら逆ナンがしたいんじゃ~!」


 ガチャをめぐってもめまくるオモイカネ、タヂカラオ。その横でよこしまな妄言をたれまくるイシコリドメ。


 何なのよ、この光景は……。


 その後も、他の神様たちが11連ガチャに14回挑戦したけれど、謎アイテムばかりが出てきて神様は一人も現れなかった。


「11連を15回……ぜんぶで7万5000円も金を溶かしたのに、SSRが一回しか出ないなんて! 絶対にガチャの排出率を偽ってるだろ! ちゃんとした確率を公表しろよ、運営!!」


 発狂する八百万の神々たち。


 みんなお金を出すのがだんだん嫌になってきたのか、神様たちは「次はお前が回せよ」「嫌だよ。来月、AKR48のCDを50枚買うんだよ」「握手券のためにそこまでやるか!?」「推しのためなら死ねる!」などと言い争っている。


 もう、だれも回そうとしない……。神様でもお金がからむとケンカするんだなぁ~。神々のチームワークがめちゃくちゃになりかけてますやん。


「どうしよう……。わたしもおサルたちの辻駕籠でお小遣い使っちゃったから手持ちがないしなぁ~」


 わたしが腕組みをしながらウーン……と困り果てていると、トブトリーナ2世がわたしのそばによってきて、


「うずめ様……。どうかわたしのお金を使いください」


 と言って500円玉を差し出してきた。


「えっ、いいの? ニワトリからお金をもらうなんて、何だか心苦しいんだけど……」


「わたしの主アマテラス様がみなさんにご迷惑をかけてしまったのですから、神使として当然のことですわ。どうか、この500円でフラダンスの女神ラカ様をご召喚ください」


 ……本当によくできたニワトリだ、この子。マジでうちの半蔵にもちょっとは見習ってもらいたい。


「ありがとう。気合いを入れて、ガチャを回すね!」


 わたしは500円玉をにぎりしめると、巨大なガチャ台をキッとにらみすえた。


「やい、ガチャ台! いま日本が大変なことになっているんだから、空気を読んで当たりを出しなさいよ!!」


 せいやっ!! と、わたしは500円玉を投げつけ、ガチャ台に向かって猛然と走り出した。


「お父さんが言ってた! 言うことをきかない機械は一発衝撃をあたえてやったら良くなるって! 必殺ジャンピングかかと落としぃーーーっ!!」


 天高く飛んだわたしは、落下していくいきおいにまかせて、かかと落としをガチャ台に喰らわせた!!


「あっ! 馬鹿! 神カモーンガチャが壊れるだろ!」


 オモイカネが慌てて叫んだけど、こんなガチャ台は一度ぶっ壊れて作り直したほうがいい。


 ピカッ! ピカピカピカーーーっ!!


「よし、SSRの演出来た!!」


 ごろん、ごろん、とガチャ台から1つのカプセルが転がり出てくる。


「ふぎゃーーー!!! □@×><*○Ω!!!」


 カプセルの中からよくわからない言語が聞こえる。わたしが急いでカプセルのフタを開けてあげると、中からアロハシャツを着たキレイな女の神様が出てきた。どうやら、ハワイの神様みたいだ。さっきのは英語じゃなかったし、ハワイに昔からあるハワイ語だったのかも。


「あなた、もしかして女神のラカさん!?」


「えっ……。は、はい、そうです。ここは日本の天上界ですか?」


「やったー! 女神ラカ出たぁー! ……あれ? 日本語しゃべれるんですか?」


「ええ。ハワイには日本人の観光客がたくさん来ますし。あの……わたし、フラの新しいふりつけを考えていたらいきなり召喚されてしまったのですが、何かご用でしょうか」


 ラカさんはちょっとおびえながらそう言った。日本の神々の前に突然召喚されてしまったら、まあおどろくよね……。


「ごめんね、ラカさん。くわしい説明はあとでするから、わたしにフラダンスのふりつけを教えて? フラダンスを踊れないと、日本が大ピンチなの!」


「……いったいどういう状況でそんなことになるのかわかりませんが、承知しました。ハワイにお金を落としていってくださる日本人のためですから」


「ありがとう、ラカさん!」


「あっ、ちなみに世界中のみなさんは『フラダンス』と呼んでいますが、わたし的には『フラ』と呼んでもらいたいのですよね。『フラ』にはそもそも『ダンス』という意味があって……」


「ごめん、今はそういう豆知識は聞いているヒマがないの! 早くフラダンスを教えて!」


「だから、フラダンスじゃなくてフラ……」


「早く、早くぅ~!!」


「は、はい……。(日本の神々はヒトの話を聞かないマイペースさんたちが多いから嫌なのよ。ごにょごにょ……)」


 ラカさんが何かブツブツ言っていたみたいだけど、今はとにかくフラダンスを覚えないと!




            ☆   ☆   ☆




「みんな! 今度はわたしとラカさんに合わせて一緒に踊って! いーい!?」


 ラカさんからフラダンスを教わったわたしがひたいの汗を腕でぐいっとぬぐいながら言うと、タヂカラオ、イシコリドメ、オモイカネたちが、


「おお! 任せておけ! うずめのためなら何でもするぜ!」


「たまにはお肌の美容のために運動をしてみるのも一興じゃな!」


「失敗しても怒らないから、やってみるがいい! 我々も協力しよう!」


 と、力強い言葉とともにうなずいてくれた。


 そして、他の八百万の神様も「いっちょ踊ってみるか!」とヤル気になってくれて、「えい、えい、おー!」という神々の気合いの入った声は高天原の山々を揺るがすほどのどよめきとなった。


「みんな! ありがとう! わたしたち神々は最高のチームだね! お金さえからまなければ! ……よーし、やるぞー!」


 わたしは頬を両手でパシン、パシンとたたき、気力を振り絞った。


 やらなくてする後悔とやりきった後でする後悔は、やらなかったときのほうが、十倍ぐらい後味が悪いものだ。迷ったときはとにかくやってみることだよ!


 わたしは三回深呼吸すると、たくさんいる神様たち全員に聞こえるように可能な限り大きな声でこう言った。


「フラダンス、スタート!!」


「おおーーーっ!!」


 うずめファンクラブの会員であるタヂカラオは、ちゃっかりとわたしのすぐ隣に立ち、ニコニコ笑顔で踊りだした。


「ずるいぞ、タヂカラオ! みんな、急げ!」


 他のうずめファンクラブの神様たちもなるべくわたしの近くで踊ろうとして集まり、岩戸の前はぎゅうぎゅうづめになってしまった。


「うずめは相変わらずモテモテじゃのぉ~。生きている年数はワシと大して変わらんのにずるいのぉ~。だれかワシのファンクラブをつくってくれんかのぉ~」


 見た目はおばあちゃん、中身は乙女なイシコリドメがそう言いながら男神たちにうっふーんと色目を使うと、男神たちは一斉に顔をそらした。


「イシコリドメ。遊んでいないで、お前も岩戸の前に集まれ。アマテラス様に我々の踊りを見せるのだ」


 オモイカネに叱られて、イシコリドメは「へいへい……」と言いながらオモイカネの横に並ぶ。


「……いったい、どんなダンスが始まるの? ど、ドキドキ」


 岩戸の中で望遠鏡をのぞきながら外の様子を見ていたアマテラス様は、小学生が正義のヒーローのアクションショーが始まるのをワクワクしながら待つような雰囲気で、ダンスが始まるときを待っていた。


「みんな! 私とラカさんの後に続いて踊ってね!」


「もっと腰を! 腰を動かしてください!」


 本当はフラダンスをするときはゆったりとしたパウスカートという服を着るらしいけれど、そんな物を用意している時間は無いので、わたしはチアコス風巫女服のままだ。


 ウクレレなどの楽器も無いため、わたしは「ルン、ルルー、ルー♪」と口ずさみ、リズムを取って行く。


 腰を振ったり、両腕を波のように動かしたり、投げキッスをしたり……。


 得意なチアダンスとはちがってテンポが遅くて少しやりにくいし、フラダンスの女神ラカさんには遠くおよばないけど、わたしは心をこめて踊った。


 そんなわたしのひたむきながんばりが神様たちにも伝わったのか、神様たちも一生懸命に踊ってくれている。


「う、う、う……。みんな何だか楽しそう……」


 心をひとつにしてみんなで踊るフラダンスには、アマテラス様にそう感じさせる不思議な魅力があったのだろう。わたしたちの輪の中に入りたそうにそうつぶやく声が聞こえてきた。


 よ、よし……。あともうちょっとで……。


「お、おわっ! しまった! 足がこんがらがった!」


 巨体のタヂカラオが、自分の右足と左足をからませ、ズデーン! と転倒してしまった。すると、隣近所の神様たちもドミノ倒しの現象で倒れ、わたしとラカさんは危うく神様たちの下敷きになるところだったけれど、オモイカネが「危ない!」と言ってわたしとラカさんを突き飛ばしてくれたおかげで、ぎりぎりで助かった。


「うずめ! みんな! 大丈夫ですか!?」


 岩戸の中でアマテラス様が心配してそう言ったけれど、わたしは「だ、大丈夫! ちょっと膝をすりむいただけです!」と応え、よろよろと立ち上がった。


 そして、アマテラス様に必死な声で呼びかけた。


「アマテラス様。トヨちゃんの身を心配するあまり、天岩戸に引きこもる気持ちはわかります。わたしだって大事な友達が傷ついたら悲しいもの。でも、そんなことしても何の問題の解決にもなりませんよ! トヨちゃんを理由にして神様のお仕事を放棄したら、戻って来たトヨちゃんが自分のせいでこんなことになったと心を痛めるはずです! 友達を傷つけることなんて、心の優しいアマテラス様が一番望んでいないことじゃないんですか!? だから……」


「トヨちゃんはもう戻って来ないわ! ……か弱いトヨちゃんが天の羽衣無しに黄泉比良坂から逃げ出せるはずがないもん!」


 わたしの言葉をさえぎって、アマテラス様は悲痛な声で叫んだ。


 トヨちゃんが戻って来るなんて、気休めを言われているようにしか思えなかったのだろう。でも、わたしはアマテラス様の声よりもさらに大きな声で叫び返した。


「トヨちゃんは、帰って来ます! 猿田くんが必ずトヨちゃんを救ってくれます! わたしのお……お……夫を信じてください!」


「サルタヒコが……? 彼は一度死んで、黄泉国の恐怖を味わっているというのに、単身でトヨちゃんの救出に向かったというの?」


「そうです。……そして、わたしは猿田くんが戻るのを信じて、天岩戸の前で必死に踊り続けていました。猿田くんのことが心配で胸が張り裂けそうでも、わたしは逃げませんでした。そして、八百万の神様たちもアマテラス様のために力を合わせてこうして踊っているんです。たくさんの神様たちがこれだけ懸命になっているのに、アマテラス様にみんなの気持ちが伝わっていないはずがありません。どうか、アマテラス様、逃げないでください! トヨちゃんのためにも!」


「…………」


 とても長い、永遠と思えるほどの沈黙。


 わたしと神様たちは、固唾を呑んで無言の天岩戸を見守った。そして――。


「…………分かったわ」


 アマテラス様がそうポツリと一言。


「や…………やったぁぁぁーーー!!」


 神々たちの間で喜びの声が湧き起り、神様たちは互いに抱き合ったり、手を取り合ったりして騒いだ。わたしも、狂喜乱舞中のタヂカラオ様に「高いたかーい!」とばかりに天高く持ち上げられて、「ウヒャー!」と叫びながら目を回している。


「ただし!」


「えっ?」


 どよめきがピタッとおさまり、アマテラス様は岩戸の奥で恥ずかしそうにこう言うのであった。


「……ち、ちょっとお腹が空きすぎて、力が上手く出せないの。内側から押すから……外側からも岩戸を引っ張ってくれる?」








<雑談コーナー:うずめ×アマテラス様>


うずめ

「アマテラス様は洞窟なんかに引きこもって、平気なの? 中は暗いし、寒そうだし……。ぜんぜん快適じゃないでしょ?」


アマテラス様

「え? ちゃんと照明がありますよ~? それに、冷暖房完備ですしね。あと、テレビやゲーム、ネット回線もつながってますし~。それからサウナもあるんですよ!」


うずめ

(この人の引きこもり癖を直すには、その無駄に整った設備を撤去するべきなんじゃ……?)

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