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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第1巻 ウェディングドレスですよ、女神様!
13/67

12 奥の手はダブル結婚式!?

再び奏さん登場の今回は、物語が色々と動き出します。


それでは、続きをどうぞ~。

 はぁ~。つ、つかれたぁ~。


 あの後、気絶していた猿田くんが目を覚まし、


「妻が危険な目にあっている時に気絶しているなんて情けない! オレは夫失格だ~!」


 そう言って大泣きし始めたものだから、なぐさめるのが大変だったんだ。


「うん、まあ、その、ねえ? 最初、わたしをかばってくれた時、かっこいいって思ったよ? うん。ちょっとね。ほんのちょっと……」


 あんまりフォローになっていなかったような気もするけれど、わたしがそう言うと、素直な猿田くんは「そ、そうだったか?」と、わたしの言葉を信じて今度は照れ始めたのだ。単純なやつ……。


「ただいまぁ~」


 夕方、家に帰ると、お母さんの「おかえり~」という声がリビングからした。


「うずめ。奏ちゃんが来ているわよ」


「え? 奏さん?」


 リビングをのぞくと、奏さんがソファーに座って、お母さんとおしゃべりをしていた。


「こんにちは、うずめちゃん。今日、オリバーと隣町の遊園地に行ってきたの。うずめちゃん、あそこの遊園地で売っているクッキー好きだったでしょ? おみやげに買って来たよ」


「本当? うわーい! ありがとう! 奏さん、久しぶりにわたしの部屋に来てよ! 見せたいものがあるの!」


 わたしは奏さんの手を引っ張り、自分の部屋に招いた。


 奏さんが社会人になるまでは、わたしの部屋で、わたし、鈴ちゃん、奏さんの三人でトランプやゲームをしてよく遊んだものだ。


「見せたいものって何?」


「これ、これ! チアリーディング部のコスチューム! 可愛いでしょ?」


 わたしは、部屋にハンガーでかけていたチアリーダーのコスチュームを奏さんに見せびらかした。


「おおー、可愛いじゃん。鈴から聞いてはいたけれど、がんばっているみたいね、チアリーディング部。うずめちゃんは、昔から人を応援するのが大好きだったものね」


「うん。まあ、それぐらいしかとりえがないんだけれどさ。あはは……」


 ごく普通の人間の子どもだと思っていたこの間までは、がんばっている人の応援をしているだけで満足しちゃっていたけれど……。


 わたしは、本当は女神様らしい。それなのに、人を応援することしか能がないのだ。


 なんかすごい神様パワーで、奏さんとオリバーさんを結婚させてあげることもできない。女神様なのに、それでいいのかなぁ……。


「うずめちゃんらしくないなぁ、そんな後ろ向きの発言をするなんて。人を応援するって、すごいことだと思うよ?」


 奏さんが、妹の鈴ちゃんとそっくりの黒く美しい瞳でわたしを見つめ、優しくほほ笑んだ。


「そうかなぁ」


「人間はね、だれかに応援されたり、君はがんばっているよと認めてもらえたりしたら、それだけで勇気がわいてくるのよ。特に、うずめちゃんのその笑顔で応援されたらね」


「笑顔……?」


「そうだよ。うずめちゃんが、太陽みたいに明るい笑顔で応援したら、人はみんな笑顔になれるのよ。わたしが大学の入試を受けに行く日の朝、わざわざ神社まで来て『がんばってね!』って激励してくれたでしょ。それに、鈴が小四の時に病気で入院したら、毎日病院に通って、あの子を元気づけてくれたじゃない。わたしも、鈴も、うずめちゃんの笑顔に救われたんだから。あなたの笑顔には、つらい気持ち、悲しい気持ちを笑顔に変える力があるわ」


「笑顔……。そっか。笑顔は、力になるんだ」


 高天原でトヨちゃんが、アメノウズメは「人を笑わせること」を神様の目標にしていたと言っていた。


 あの時は、何じゃそりゃって思ったけれど、笑顔って本当に大事なものなんだね。


 だって、めそめそと暗い顔をしていたら、がんばりたいことがあってもなかなかがんばれないじゃない。どよーんとした気分じゃ体に力が入らないもん。


 心の底からワハハハ! と笑って、お腹の中にたまっている不安や悩み事を吹っ飛ばすことができたら、勇気百倍だ。


 わたしは――アメノウズメという女神は、笑顔で人の心を癒し、応援する神様なんだ。


「ありがとう、奏さん。おかげでスッキリしたよ。わたしは、今の自分を貫けばいいんだね。わたし、奏さんがオリバーさんと無事に結婚できますようにって応援するから!」


 元気になったわたしがそう言うと、今度は、さっきまでほほ笑んでいた奏さんの顔がくもってしまった。


「そうだね……。結婚できたらいいなって……ううん、絶対に結婚したいと思っているけれど……。お父さんが認めてくれないから、いつになったら結婚できるか……」


「奏さん……」


 奏さんと父親の雄介さんは、昔から仲のいい親子だった。雄介さんは、長女の奏さん、次女の鈴ちゃんのことを目に入れても痛くないぐらい可愛がっている。


 そんな仲のいい親子だからこそ、奏さんは、自分が好きになった人を雄介さんに認めてもらいたいのだ。


「お父さんは、とにかく頑固なのよ。『神社の娘が外国人と結婚するなんて、アメノウズメ様とサルタヒコ様がお認めになるはずがない。罰が当たるぞ』とか言うんだもん」


 アメノウズメとサルタヒコの本人たちが、国際結婚みたいなものなんですが……。


 わたしと猿田くんが、奏さんの国際結婚をダメだって言うわけがないじゃない。第一、縁結びのご利益がある神社の神主さんがそういう頭の固いことを言っていていいの?


「アメリカ人のオリバーが日本に留学しなかったら、わたしは、はるか海の彼方に住む彼とめぐりあうことはできなかったわ。わたしたちの出会いは、神様がくれた奇跡なのよ。わたしは、この出会いを大切にしたい。結婚をあきらめたくない……」


 そうだよね。わたしもそう思う。オリバーさんが日本に来なかったら、奏さんは今の恋を知らなかったんだ。それが、二人が出会い、恋が芽生えたんだから素敵なことだよ。


 ……わたしと猿田くんも、奏さんとオリバーさんみたいに素敵な出会いをしたのかな?


 奏さんとオリバーさんが、雄介さんに認めてもらえて、アメノウズメとサルタヒコみたいな国際結婚ができたらいいんだけれど……。


「……うん? アメノウズメとサルタヒコみたいに……結婚……?」


「どうしたの、うずめちゃん。首がボキッて折れちゃうくらいに、首をかしげたりして」


「…………ひらめいた!」


 わたしは、突然、大声を出し、指をパチンと鳴らした。


 奏さんはビックリして、目をパチクリさせている。


「な、何をひらめいたの?」


「神様が認めたら、奏さんのお父さんも結婚をオーケーしてくれるんでしょ? だったら、わたしにいい考えがあるわ!」


「え? ど、どういうこと?」


「奏さん! わたしに任せて! 必ず結婚をさせてあげる! ただし、何が起きてもビックリしないでね!」


「それ、どういう意味? ……ち、ちょっと、うずめちゃん。どこに行くの⁉」


「ちょっくら高天原たかまがはらまで!」

 わたしは、奏さんをわたしの部屋に置き去りにして、家を飛び出した。



            ☆   ☆   ☆



 猛ダッシュで走り、日が暮れるまでに神社に到着したわたしは、サルタヒコがまつられた本殿の屋根の上で居眠りしていた猿田くんをたたき起こした。


「猿田くん! 高天原まで一緒に来て! オモイカネの提案通り、結婚式をやるわよ!」


「な、何!? うずめ! ついにその気になってくれたか!」


「それで記憶が戻るっていう保証はないけれど、試してみる価値はあるわ。それに、奏さんに幸せな結婚をしてもらうための奥の手を思いついたの」


「それが、オレたちの二度目の結婚式と何か関係があるのか?」


「その話は、天のはしごを登りながら言うわ。とにかく、急ぎましょ!」


「わ、分かった!」



            ☆   ☆   ☆



 というわけで、わたしと猿田くんは天のはしごで高天原へと向かった。


 そして、高天原の都の門番をしていたアメノイワトに、


「至急、アマテラス様に会いたいの! アマテラス様が今どこにいるか教えて!」


 と、頼んだ。


「アマテラス様なら、まだ天岩戸でお仕事中だ。アマテラス様がだらけて仕事がなかなか終わらないせいで、オモイカネの機嫌がめっちゃ悪いから注意しろよ」


「ええ~。まだ缶詰中なわけ? 分かったわ。とりあえず、天岩戸に行ってみる。あんがとね!」


 アメノイワトにお礼を言うと、わたしと猿田くんは、天岩戸まで急いだ。


 わたしたちが星の流れる川を渡り、天岩戸の中に入ると……。


「うずめ~! サルタヒコ~! 仕事がぜんぜん終わらなくて絶体絶命なんです~! 助けてくださ~い! オモイカネに叱られまくって、ストレスで死にそうですよ~!」


 日本で一番偉い女神様が、泣きべそをかきながら抱きついてきた。


 アマテラス様、わたしの服に鼻水をつけないでください!


「……ストレスで死にそうなのは、わたしのほうです。アマテラス様……」


 目に黒々としたクマをつくった、知恵の神オモイカネが、フッフフフ……フフフと不気味に笑いながら言った。や、やべえ……。壊れる一歩手前だよ……。


「わたしたちに手伝える仕事なら手伝いますけれど、その前に、わたしの話を聞いてほしいんです。……あの……わたしたち、もう一度結婚式をしようと思うんです」


 もう一度と言っても、人間の笑美えみうずめとしては初めての結婚式だけれど。


 ……そういえば、これって、法律的には大丈夫なのかな? わたし、中学生なのに。


 まあ、神様であるわたしは、本当は十三歳じゃなくて数千年(?)単位の年齢なんだからオーケーとしておこう。それに、本当の結婚式は大昔にすでにやっちゃっているわけだしね。


「おお。ついに決心したか。ならば、アマテラス様の仕事が終わり次第、挙式を……」


 オモイカネがそう言うと、わたしは「ちょっと待って」とさえぎった。


「ただ、この結婚式は、わたしと猿田くん。それに、もう一組のカップルを加えたダブル結婚式にしたいんです。その許可をアマテラス様にもらいたくて、お願いに来ました」


「もう一組のカップルって、だれかしら。最近、結婚のウワサがあった神っていました?」


「いいえ。神様じゃなくって、人間です。わたしの友だちのお姉ちゃんの奏さんとその彼氏のオリバーさんです」


「な、何!? 人間だと? 神が、人間のカップルとダブル結婚式をするというのか!?」


 ビックリしたオモイカネが大声を上げてそう言った。


 その通り! 奏さんとオリバーさんの結婚を認めてもらえる奥の手とは、神様のカップルと人間のカップルのダブル結婚式なのだ!


 奏さんのお父さんの雄介さんは、「神様が認めるわけがない」って言い張っているわけでしょ? それなら、わたしと猿田くんが神様だと名乗り、


「結婚していいよ! 高天原でダブル結婚式しましょ!」


 と、誘っちゃえば、雄介さんも、


「神様がそうおっしゃるのなら、二人の結婚を認めよう!」


 って、納得するはず! これですべては解決! バンザイ! と、なるのだ!


「どう? ナイスアイディアでしょ?」


 わたしが、ピースをしながら自信満々で言うと、


「んなわけあるかーーーっ‼」


 オモイカネの怒鳴り声が洞窟内にひびきわたり、おどろいたわたしはずっこけてしまうのだった……。

<うずめの一口メモ>

物語が色々と動き始めました。次回も見てね!

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