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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第1巻 ウェディングドレスですよ、女神様!
11/67

10 初デートは食い倒れ珍道中?

今回は、うずめと猿田の初デート回です!

 翌日の放課後、鈴ちゃんの家にまた集まったわたしたちは、


 わたしのアメノウズメとしての記憶をどうやって取り戻すか


 ということについて、話し合った。今日のわたしは、昨日よりは少し真面目だ。


 愛し合っている奏さんとオリバーさんを見て、わたしにもだれかを大切に想う気持ちがあったのなら、それを取り戻したいと考えるようになったのだ。


 ただ、天狗のお面をかぶっている猿田くんにわたしがラブラブ状態になって、目をハートマークにしているイメージが、今のところ、ぜんぜん思い描けないんだよねぇ……。


 猿田くんや神使しんしの半蔵、彦太郎たちは、オモイカネの「結婚式をやる」という提案に乗り気みたいだ。でも……。


「結婚式は、ちょっとなぁ~」


 だってさ、結婚式をやってみて、なーんにも思い出さなかったらどうするの?

 それで、猿田くんのことを「あーなーた♪」とか、若奥様ふうに愛をこめて言えますか?


 そいつは、かな~り難しい話だよ。


 そんなふうにわたしが渋っていると、鈴ちゃんがある提案をしてくれた。


「では、今度の週末にデートをする、というのはどうでしょうか?」


「え? で、デート!?」


「はい。二人きりで一日をすごしたら、昔の記憶が少しは蘇るかもしれません」


 な、なるほど……。デートなら中学生だって普通にやるよね。


 でも、デートなんてしたことがないから、何をどうしたらいいのやら分からないよ。


「うずめ様。そんなに赤くなって照れなくてもいいコケ。僕も、たまにトブトリーナちゃんとデートするけれど、一緒に楽しく遊んで、おたがいの『好き』を確認しあうだけコケ」


 羽を大きく広げた半蔵が、得意げに言った。


「べ、別に赤くなんかなってないわよ」


 く、くっそぉ~。ニワトリに恋愛の先輩面をされるのはしゃくだなぁ。


「いいわ。やってやろうじゃないの、デート。ていうことで、猿田くん。今度の日曜日の朝十時、駅前の時計台で集合ね」


「よし! ファッション雑誌とやらを読んで、今風の男子らしいイケてる服装で来てやるぞ! うずめも、ちゃんとおめかしして来いよ!」


 猿田くん、めっちゃ喜んでいる。顔の表情がお面で隠れていても、全身から幸せオーラみたいなのが出ているから丸分かりだ。


 へ、へえ~。そ、そんなにわたしとデートするのがうれしいの?


 まあ、そこまで喜ばれると、わたしだって女の子なんだし、悪い気はしない……かな?



            ☆   ☆   ☆



 ……と、微妙にデレかけていたわたし。


 デート当日、そんなわたしの気持ちを見事にぶち壊してくださりやがったわけですよ、この男は。


 おめかしして来いと言われたし、わたしも女子としての意地がある。


 だから、恋愛に興味津々の雪音ちゃんからいろいろとアドバイスをもらって、わたしはいちおうオシャレをがんばった。


「え? 何? うずめちゃん、デートするの? 相手はだれ? 教えて! 教えて! おーしーえーてーよー!」


 みたいな感じで、雪音ちゃんの質問攻めにあいながらも、


「わたしじゃなくて親戚の子の友だちのお姉ちゃんから、デートで何着ればいいか悩んでいるって相談されたの」


 そんな苦しい言いわけをしつつ、デート時のファッションとやらを教えてもらったのだ。


「初めてのデートなら、そんなに派手じゃなくて、でも、可愛らしい服が一番ね。男はね、清楚系の女子に弱いのよ。百パーセント、これでイチコロだわ!」


 ……ということらしいので、わたしは、デートの待ち合わせ場所に、白のワンピースを着て来た。ピンクのリボンがついた白いベレー帽もかぶっている。


 初めてのデートだし、変なかっこうをしてきたら猿田くんに悪いと思って、わたしなりにオシャレをがんばったのに……。この男は……この男は……。


「なんでデートの日にまで、天狗のお面をかぶってきているのよーーーっ!!」


「お、落ち着いてくれ。オレは自分に術をかけていて、神通力がない人間には、オレの顔を見ても、お面のことがまったく気にならないようになっているんだ」


「そういう問題じゃないでしょーがっ!」


「で、でも、服装はちゃんとしてきただろ? どうだ? この天狗がプリントされたTシャツ? かっこいいだろ?」


 どんだけ天狗が好きやねん! どんだけ天狗おしやねん!


「ださいよ! 涙が出るくらいださすぎるよ! ぜんぜんファッショ雑誌を参考にしていないじゃん! それに……服装のことは目をつぶるとしても、その髪形は何なの?」


 わたしは、前髪が高く出っ張っていて、左右の髪が後ろになでつけられた変てこな髪形を指差した。


「え? これか? 昨日読んだマンガのキャラが、こういう髪形をしていたからマネしてみたんだ。リーゼントっていうらしい。なかなか勇ましいとは思わないか?」


「思うか! あんたは、ひと昔前の不良かぁぁぁーーーっ!!」


「う、うわ~! 何をする~!?」


 わたしは、猿田くんに飛びかかり、彼の髪を両手でわしゃわしゃわしゃー! と、かき乱して、元の髪形に戻してやった。


「ひ、ひどい……。リーゼントにするのに、けっこう時間がかかったのに……」


「そんなところでひざをついて落ちこんでいないで、さっさと行くわよ! フン!」


 こうして、わたしたちのデートは始まったのだった。前途多難すぎる……。



           ☆   ☆   ☆



「まず、どこに行くの?」


 デートなんて初めてだし、完全にノープランだったわたしは、猿田くんに聞いた。


「腹が減ったから、何か食いたいな」


「まだお昼には早いけれど……。じゃあ、クレープ屋さんにでも行く?」


 この間、鈴ちゃん、雪音ちゃんと一緒に行って、すごくおいしかったクレープ屋さんがここから近くにあるのを思い出し、わたしはそう言った。


「クレープ屋だと!? ……ふわふわとした食感と甘美な味がするというクレープの名は、黄泉国よみのくににまでとどろいていたほどだ。まさか、実際に食する日が来るとは……!」


「いやいや、そんな大げさなものじゃないから。たしかに、おいしいけれどさ」


 わたしは、猿田くんをクレープ屋さんに連れて行ってあげた。


「すみません。いちごのクレープください」


「オレも、それをもらおう」


 猿田くんがズボンのポケットから小銭を取り出し……たのだけれど、一円玉や五円玉ばかりで、店員さんに「お客様、お金が足りません」と言われてしまった。


「むむ? 神社のさいせん箱からたくさんとってきたのに、これでは足りないのか。では、この十円玉とやらではどうだ?」


「それでも足りないってば。ていうか、さいせん箱からとってきたらダメじゃない。それって、おさいせん泥棒っていうのよ」


「さいせん箱の金は、神であるオレにささげられた金だ。それを使って何が悪い」


「鈴ちゃんのお父さんが困るからダメなんだってば。今日のデートは、わたしがおごってあげるから、その小銭は後でさいせん箱にちゃんと戻しておきなさい」


 わたしは、子どもに言い聞かせるようにそう言い、店員さんに二人分のお金を払った。


 クレープを店員さんから受け取ると、猿田くんは、早速、むしゃむしゃと食べ始めた。


「うまい! さすがは黄泉国にまでその名がとどろくデザートだ!」


 だからさぁ、食べる時ぐらいはお面を外しなさいよ。天狗の大きな口のまわりがクリームだらけになって、みっともないなぁ。


 仕方ないので、わたしはハンカチでクリームをふきとってあげた。


「うふふ。仲のいいカップルさんですね」


 クレープ屋の店員さんが、ほほ笑みながらそう言う。


 店員さんには、わたしが彼氏の口についたクリームをふきとっているように見えているのね。実際には、天狗のお面をふいているわけですが……。



            ☆   ☆   ☆



 クレープを食べた後も、猿田くんは人間界の食べ物に興味津々。駅前の商店街のいろんな食べ物に夢中になり、食べ歩きを始めた。


 たい焼き、たこ焼き、コロッケ、焼きそば、ラーメン、アイスクリーム、かき氷……他にもたくさん、あんたの胃袋は鉄でできているのかと言いたくなるくらい、食べまくったのだ。


 もちろん、わたしのお金で! 今月のおこづかい、大ピンチだよ!


「ねえ、猿田くん。ちょっと食べすぎじゃない?」


 せっかくの人生初のデートだというのに、食い倒れ珍道中なんて勘弁してほしい。そう思ったわたしは、半ばあきれながら言った。


「もぐもぐ、くしゃくしゃ、ごっくん……。そんなに食ったか? 昔は今ほど食いしん坊ではなかったのだが、なにせ二千年もの間、絶食していたからなぁ。食に飢えているのだ」


「ええ!? 二千年間、絶食!? 何も食べていなかったっていうこと? な、なんで? 黄泉国には食べ物がないの?」


「黄泉国の食べ物を食べてしまったら、呪いがかかり、鬼になるのだ。そうすると、完全に黄泉国の住人となってしまい、うずめのもとには永遠に戻れない。だから、絶食していた」


「そ、そうなんだ……」


 二千年という気が遠くなるほど長い月日を暗闇におおわれた黄泉国で一人すごし、愛する人と再会するためにいっさい食事をしなかったなんて……。


 わたしは、記憶を何も思い出せないのに……。何だか申しわけなくなってきたかも……。


「ごめんね、猿田くん。わたし、何も覚えてなくて……」


「うずめがあやまることはない。おまえを二千年間も一人ぼっちにしていたオレが悪いんだ。……それに、今日のデートも、食べることに夢中になってしまって、申しわけない」


 猿田くんはそう言い、逆にわたしにあやまった。


 猿田くんって、神様のせいか、ちょっとずれているところがあるけれど、基本的には真面目で誠実な人なんだね。


 お面にまた食べ物のカスをつけていて、ふざけているように見えちゃうけどさ。でも、そういうぬけたところが猿田くんの可愛いところなんだと思う。


 今まで、「オレはおまえの夫だ」なんて言われて、「なに言っているのよ、こいつ」みたいにムキになってケンカ腰になっちゃっていた。


 けれど、こうやって、猿田くんの優しいところ、一途なところ、面白いところを知っていって、わたし、彼の「好き」な部分を見つけることができたよ。


 そういえば、半蔵が言っていたっけ。デートはおたがいの「好き」を確認し合うんだって。


 ニワトリのくせして、案外いいことを言うわね、あの子。


 そうだよね。せっかくのデートなんだし、もっと楽しんで、わたしが猿田くんのどういうところが好きかを確認しなくちゃ。


 そう考えたわたしは、猿田くんを遊園地に誘ってみようと思いついた。


「ねえ、猿田くん。これから一緒に遊園地に……」


 わたしは少しドキドキしながら、そう口を開いた。でも、「行こうよ」と最後まで言い切る前に、急に体がぞくっとしたのだ。


「な……何? この嫌な感じは……?」


 言葉ではうまく表現できないけれど、とても危険なものが近づいて来ていることが感覚で分かったのだ。


「うずめも感じたか。今まで人間の娘として生活してきて神の力を体内に封印させていたのが、オレや高天原たかまがはらの神々と接触したことをきっかけに、神通力が少し復活してきたのだな」


 猿田くんはそう言うと、周囲を見回した。


「うずめ。あそこの店の看板の下だ。見てみろ」


 猿田くんに言われて、恐るおそる見てみると、黒いフードを頭からかぶり、死神みたいに全身黒づくめの服装をしている少女がじっとこちらをにらんでいた。


「……まちがいない。あいつは黄泉国の鬼だ。やはり、葦原中国あしはらのなかつくにに侵入していたのか。……逃げるぞ!」


 猿田くんは、わたしの手をにぎると、全速力で走り出した。


「黄泉国の鬼って、あの子が? 神様のあんたが逃げなきゃいけないぐらい強いの?」


「黄泉国の鬼の戦闘能力はあなどれない。戦いが苦手な神は、やつに勝てないだろう。本来のオレの実力なら、逃げる必要はないのだが……。『よみがえりの術』でほとんど力を失った今のオレでは、勝ち目がない」


「な、何だか、ものすごいスピードで追いかけて来てるよ!」


「あれは歩いているだけだ。黄泉の鬼の足はとてつもなく速い。向こうがこっちをからかって、ゆっくりと追いかけている間に神社に逃げこむぞ。神社の結界内には入れないはずだ!」


「わ、分かった!」


 も~う! ようやくいいムードになりかけていたのにぃ~!

<うずめの一口メモ>

児童小説ということで、子どもたちが喜んでくれるような、ピュアな恋愛要素を入れたくて作者のアキラはがんばったわけですが……。

悲しいことに、作者は女の子とデートしたことがないのだよ……。

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