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二十二話

「はは…は。はははは!――弱者の、成り上がりだ!!」


 もじゃもじゃさん、ずっと笑ってて楽しそう。オカネを上に投げるのが忙しいみたい。

 うん。あたしはそろそろお暇しようかな。


 ふよふよと飛んで、窓からお部屋の外に出てから透明になる。


「ご主人ちゃん、また契約できたでございますね。でも、あんまり乗り気じゃなかったみたいだけど、良かったのです?」


 あたしの影から現れたシリシーが、ちょこんとあたしの胸の上に座った。


「うーん。もじゃもじゃさん契約したかったみたいだし、大丈夫、かも? それに、これも試してみたかったんだー!」


 空間のポケットから時飛ばしの望遠鏡を取り出して、シリシーに見せつける。

 さっそく出番が来ちゃったね!


「こんなに良いものをもらうなんて、さすがご主人ちゃんでございます」

「ふへへー。んじゃ、見てみよー」


 望遠鏡を覗いてみると、窓の向こうにもじゃもじゃさん。上のボタンを押して、対象の人間さんを固定してっと。

 それから、ダイヤルを回してみる。んっと、これで七日後くらいかな?


「見えるです?」

「んー。見えたよー」


 望遠鏡のレンズの向こうでは、お酒の前で大笑いしてるもじゃもじゃさん。

 両隣のソファに女の人間さんが座っていて、もじゃもじゃさんに寄りかかってる。


「見せて見せてでございます」

「ほい」


 魂が踊ってて、幸せそうかも。


「思ったよりしっかり俗世にまみれた楽しみ方のようなのです」


 シリシーから返してもらった望遠鏡を覗いて、またダイヤルを回してみる。これで一ヶ月くらいかな?

 レンズの向こうには、ルーレットの前ではじゃいでるもじゃもじゃさん。カジノのお店かな。テーブルに積まれたチップがどんどん増えていってるみたい。


「うん、幸せそうだし大丈夫かも」


 今度は半年後を覗いてみる。もじゃもじゃさん、大きなお店を建てたのかな?

 何人もの店員さんの人間さんに命令してるみたい。あ、他の人間さんを叩いてる。痛そうだなあ。


「うーん。魂がべっとりしてきた。…そろそろ回収したかったなあ」

「回収までの期間が長いと、幸せになれるわけじゃないようでございますね」


 もうすぐ一年が経つくらいのところまでダイヤルを回してみた。

 あれ?魂がどんよりしてる。ルーレットの前でお顔が真っ赤っか。


 しばらく見ていたら、カジノのお店を出て真っ白なお顔でふらふらしてる。これは、早めに行った方がいいかも?


「シリシー、時を飛ばすよー」

「はいです」


 望遠鏡の前と後ろを入れ替えて逆向きにレンズを覗いたら、ぐにゃりと風景が歪んでいく。

 目の前には、さっきまでレンズで見てたもじゃもじゃさんが歩いてた。


「あーーーー。クソッ。…クソッ!! なんでずっと負けるんだよ。確率がおかしい。イカサマだろ絶対!!」

「もじゃもじゃさん、告知に来たよー」


 あたしが後ろから声をかけてみたら、もじゃもじゃさんの肩がビクッて跳ね上がった。

 錆びたお人形みたいに、振り向くもじゃもじゃさん。


「…ギ、ギャィヤアアアアア!!…あ、悪魔!!」

「悪魔だよ?」


 あたしに気づいたもじゃもじゃさんは、すっごい悲鳴を出してから夜道を走って逃げちゃった。待ってー。

 走るもじゃもじゃさんの横をふよふよと飛んでいく。


「逃げられないよー。それに今日はまだ告知だよ?」

「ヒ、ひいいいいいいい!!…た、助けて悪魔だ!――誰か、助けてくれえ!!」


 あたしの声が全然聞こえてないみたい。仕方ないから、走ってるもじゃもじゃさんの前に浮いてみる。


「ギャッ!」

「わあ。大丈夫?」


 尻餅をついて転んじゃった。


「く、来るな、やめろ!……なんでだ。なんでだよ、僕は悪くない。ただ生きてきただけなのに!――僕より出来る姉ばかり可愛がった両親が悪い。失敗しても許してくれなかった周りが悪い。僕を愛さなかったあの女が悪い。運が悪かったんだ。生まれが悪かったんだ。――僕は、悪くない!!」

「んー。今日は告知に来たんだけど」


 地面におでこを近づけて、土下座をするもじゃもじゃさん。どうしよう。


 あれ。後ろから、気配?

 振り向こうとすると、背中から、硬いもので殴り飛ばされた。


「ひゃんっ」


 吹き飛ばされたあたしの体がくるくると回って、壁にぶつかった。壁、崩れちゃった。

 むー、痛いなあ。


「…見つけた。やっと見つけたわ!!――リズリリスゥゥ!!」


 誰だろ?

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