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十九話

 店主の死神が、腰を抜かしてる。骸骨のお顔の顎がガクガクだ。

 あたしを見て驚いてるみたいだけど、あたしのこと知ってるのかな。


「お、おおお前リズリリスだろ…! 俺の鎌を奪っていった!!」


 死神の魂が震えている。人間さんにもこんなに怖がられたことないかも。

 あたしの肩を、ロズがちょんちょんとつついた。


「そうなの、リズ?」

「んー?」


 ロズもよく分かってないみたい。鎌を取ったなんて言われたけど、なんでだろ。

 空間のポケットから取り出した鎌を、死神に向けてみる。


「この鎌のこと?」

「ヒッ…。刃先を俺に向けるな!…そうだ。その大鎌、ソウルリーパーだ。とぼけやがって!」


 うん?そういえばこの鎌、そんな名前だったような。どうだったかなー。

 死神に向けてた鎌を引っ込めて、柄をにぎにぎしてみる。


「これは親切な死神がくれたんだよ?」

「そうじゃない。いや、確かに譲渡はしたが、そうじゃない。……まさかお前、俺のことを忘れたのか?」


 んー。もしかして、あの時の死神なのかな。骸骨の顔をよく見てみるけど、骨しかないからよく分からない。

 目の部分を覗き込んでると、また後ずさりされた。


「あの時の死神?」

「そ、そうです!……こほん。お前にソウルリーパーを奪われてから、俺は死神を廃業したんだぞ!!」


 ふーん。大変なんだね。


「…リズ。入学したばかりの頃から、悪魔なのに立派な鎌を持ってるなんて思ってたら」

「うん。そうだった。鎌、とっても役に立ってるよー。ありがとう!」


 ぺこりとお辞儀をした。

 あの時、便利な鎌をくれた死神だったんだね。お礼だけでも言っておかなきゃだ。


「でもこの鎌、確かあたしの魂を狙ったあなたを助けてあげる代わりにもらったんだよね。…今からでも、返して欲しい?」

「い、いや…そんな」


 鎌の刃先を、もう一度死神に向けてみた。どうしようかな。あたしの前に飛んできたシリシーが、胸を張ってる。


「魂の生命体である悪魔と死神の契約を反故にするでございますか?」

「――す、すまん! そんなつもりじゃないんです!!…鎌はリズリリスのものです。店の商品も破格にします!……だから、ひぐっ…許して…殺さないでえ!!」


 怖がらせちゃったみたい。額を床に擦り付けてる。痛かったりしないのかな?

 ロズがあたしから距離を取った。


「……リズ、なんて悪魔なの。…許してあげたら?」

「むー。怒ってないよー。なんでえ…」


 でも、お店の商品を破格で売ってくれるんだって。嬉しいね!

 せっかくだから色んな道具を買っちゃおうかなー。



 珍しいものが置いてあるお店の中を見て回って、魔界道具をいっぱい売ってもらった。

 品揃えがとっても素敵。ほくほくだね。


「マズロー、ありがとう! 良いお買い物ができたから、また来るね!」


 割引してもらったけれど、代金の魔界コインは多めに渡しておいた。

 良い店にはちゃんとお金を払って続けてもらわなきゃって、ロズは良いこと言うね。勉強になるなあ。


「もう来ないで……はい、またの来店を待ってますよ!!…それと俺はマドローです」

「えっと、マドロー。ごめんなさいね」


 空間のポケットに、お買い物の紙袋をしまっていく。

 四次元のお香はこっちで、マボロシの翡翠石はここかな。シリシー、魂の調味料はこっちだよー。


「嬢ちゃんが、リズリリスと一緒に数々の事件を起こしたって話のローゼヘナだったんですね。――サイロン派悪魔完食事件なんて魂が震えたよ」

「あー。あれ、ほとんどリズの仕業よ。ウチなんて一緒にいただけ」

「…そうか、嬢ちゃんも苦労してるんだな」


 時間もかかっちゃったから、そろそろ学園に行かなきゃだね。


「ロズー。学園に行かないのー?」

「はーい。じゃあ、またねマドロー」


 表彰されるかな。報奨もらえちゃうかな。楽しみだな!

 あたしの名前が呼ばれますように!


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