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十六話

 メイドの人に叶うよって伝えてあげたんだけど、伝えてあげたら考えこんじゃった。

 お喚(よ)ばれされたんだけど、決められないのかな。


「叶うんだ…。私が、家族になれるんだ。悪魔さんと契約すれば…できるんだ。でも、契約したら私は死んじゃうってこと…? それなら、やる意味なんて…」


 ずっと悩んでるみたい。魂もとっても揺れてる。

 空間のポケットから出した玉でシリシーと玉回りをして遊んでたら、メイドさんはガバッと顔を上げた。


「ひょ! ビックリしたでございます」


「契約したら、私はすぐに魂を取られるの?」

「ううん、あたしは幸せな魂を回収したいんだー。だから、メイドさんがなるべく幸せを感じられるように、すぐには回収しないよ?」


 すぐに魂を回収しなくても、契約規則も問題ないしね。


「それなら…待って、でも悪魔さんって人間を騙すものなんじゃ……。それに、すぐにって言っても数日で魂を取られるかもしれない…。どうなの、リズリリス」


 メイドさんは、とっても揺れてるみたい。悪魔は嘘吐けないのになー。


「大丈夫だよー? 悪魔は契約に於いて嘘を吐けないし、そうじゃなくても魂の生き物だから嘘を言わないよ。悪魔契約基本の五ヶ条っていうのがあるんだー」


 それからあたしは、メイドさんに悪魔契約基本の五ヶ条を教えてあげた。どうかな?


「…リズリリス。契約の代償の、願いの大きさに応じた契約者の魂って、魂を全部取らないってこともできるの?」

「できるけど、あんまりおすすめしないよー?」

「ご主人ちゃんは、何でも教えすぎなのです」


 でもその条項、悪魔にとっては良いことだって習ったけど、幸せな魂をあまり回収できなくなるんだよね。


「そうなの…。なんで?」

「人間さんが幸せにならないから、かな。魂ってあなた自身なんだよ。……生涯、あなた自身が欠けた状態ってどうなると思う?」

「……分からないよ。だって、それでも死んじゃわないってことじゃない」


 うんうん、人間さんからするとそう考えるのかも。


「うーん。それで問題ないなら良いけど、あたしはおすすめしないよー。契約する?」

「……やめとく。リズリリスがそう言うって、なんか……よっぽどな気がする」


「そっかあ。契約する? やめとく?」


 またメイドさんは下を向いて、考え始めた。どうしよっかなあ。


「やめちゃえばいいのです。ご主人ちゃんは言わないけど、アナタの魂、悪魔からしてもそこまで契約したいってわけじゃないでございます」


 そうなんだよね。もう少し待ってダメそうなら、帰ってもいいかな?


「……そう、なんだ。ねえ、リズリリス」

「んー?」


 あれ?メイドさん、なんだか瞳が座ったみたい。魂の揺れも止まっちゃった。なんでだろ。


「契約する。私を家族にしてくれないこの家のみんなが、私をここの一員だと…家族だと想ってくれるようにして」

「いいの? 願いを叶えたら契約成立だよ。取消も変更もできないよ?」


「…いい。契約する」


 もうダメかと思ってたけど、急に上手くいっちゃった。指先にあたしのチカラを集める。


「汝の願い、聞き届けるよー。――ほいっ」


「…これで、願いが叶ったの?」

「叶ったよー」


 うんうん。今回は、回収まで何ヶ月か待った方が良さそうかも。


 部屋の外から、ドアを叩く音がした。メイドさんの肩がビクッとなった。


「ラトリア! そこにいるのか? 出ておいで。パパだぞ!」

「だ、旦那様…?」


 ビクビクしながら、メイドさんがドアを開けると、さっきのお腹のおじさんがいた。


「旦那様なんて、他人行儀な呼び方はよしてくれ。パパとお呼び。――さあ、ママもカイレもレイラも待ってるよ。お昼にしよう」

「はい、……うん。パパ」


 メイドさんはすっごく嬉しそうに笑って、お腹のおじさんに手を引かれて部屋を出ていった。

 良いことしたなあ。

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