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兵器創造の領域支配者【2026/1/1〜コミカライズ配信中!】  作者: 飛楽季 【兵器創造 コミカライズ配信!】
4章 死者への哀悼、死者冒涜

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黒騎士と少女、そして柳 6

 黒が、すべてを覆った。


 視界も音も奪われ、上下の感覚すら消え失せる。

 まるで世界そのものに包み込まれ、押し潰されているようだった。


 肺が締め付けられ、呼吸ができない。

 意識が、じわじわと削り取られていく。


(……終わり、か)


 そう思った瞬間、手に感触があることに気付く。


 爺さんの胸に当てた手。

 そこから――握り返される感触。


 確かな、心臓の鼓動。


 その鼓動は手から伝わり、やがて自身の胸へと流れ込んでくる。


「……感じるか、小僧」


 耳ではなく、直接頭に響く声。


「儂の魂じゃ。今は、お主と共にある」


 次の瞬間、胸の奥が熱を帯びた。


 心臓を中心に、何かが共鳴するように震え始める。

 二つの脈動は重なり合い、一つの大きな鼓動となって響いた。


(これが……魂乃共鳴——)


 黒い空間が、軋む。

 まるで拒絶するかのように、空間が揺れ、歪み始めた。


「今じゃ、灰間暁門……儂と共に叫べ」


 歯を食いしばり、胸の奥から声を絞り出す。


「——うおおおおおおッ!!」


 魂の奥底から溢れ出した光が、胸から噴き出す。


 青白い、生命の輝き。


 それは黒を押し返し、裂き、砕いていく。


 闇に亀裂が走る。


 ——そして。


 ガラスが砕け散るような音と共に、黒い空間は内側から崩壊した。




♦︎




 レティーは勝利を確信したように、細く息を吐いた。


「……少し驚かされましたが、これで終わりですわ。あとは、あの忌々しいサポートを――」


 その瞬間だった。


 黒い空間に、乾いた音が走る。

 ガラスに爪を立てたような、不快な亀裂音。


「……は?」


 視線の先で、闇そのものに一本のヒビが入っていた。

 そこから、あり得ないはずの青白い光が漏れ出している。


 ヒビは止まらない。

 一つが二つに、二つが無数に増え、黒い空間全体を這い回る。


「い……一体、何が?」


 次の瞬間――


 砕け散る音と共に、闇は完全に光に呑まれた。


 光が消えたあと、そこにあったのは黒い空間ではなかった。


 地面に横たわる、柳道唯。


 そして、そのすぐ傍で。


 肩で荒く息をし、今にも倒れそうになりながら立つ――灰間暁門の姿。




 それを見て、レティーは息を呑んだ。


 ゆらり、と。


 まるで糸を切られた人形のように、暁門が動き出す。


 足取りは覚束ない。

 それでも確実に、こちらへ向かってくる。


「……っ」


 レティーは反射的に一歩、後ずさった。

 あり得ない。勝敗は決していたはずだ。


 それなのに。


 暁門の身体から青白い光が滲み出している。


「……あれから、強くなったと思っていた」


 声は低く、震えている。


「強くなった俺なら、魔物でも人でも……全部に打ち勝って、そして……全部を守りきれると、そう思っていた」


 一歩、また一歩。


「だが、違った……」


 歯が、ぎりと鳴る。


「……俺は、弱い」


 それは自嘲ではなかった。

 ただの事実確認のようだった。


「黒騎士とも、あんたとも……まともに戦えたのは、爺さんだけだ」


 拳が、ぎゅっと握り締められる。


「オレは……何も出来なかった。手も足も出なかった……!」


 視界が滲む。

 喉の奥が焼けるように熱い。


「……沙生さんに会うまでは、泣かないって……そう、決めてたのに」


 暁門は、ゆっくりと顔を上げる。


 青白い光を宿し、涙を浮かべた瞳がレティーを射抜いた。


 その視線にレティーの喉から、かすれた悲鳴が零れ落ちた。


「ヒッ……」


 慌てて黒い球を灰間暁門へ向けて放つ。

 だが、暁門の身体を包む青白い光に触れた瞬間、それは音もなく霧散した。


 一歩。

 また一歩。


 静かに、確実に距離が縮まっていく。


「爺さん……悔しいよな」


 低く、抑えた声だった。


「家族が殺されて、さらに死んだ愛佳ちゃんまで利用されて……」


 胸の奥が焼けるように熱い。

 それは怒りだけではなく、悲しみも混ざり合った感情の痛みだった。


「今なら分かる。爺さんの魂が……痛いほどに、オレに教えてくれる」


 レティーの顔が恐怖に染まる。


「お前らにも“魂”があるのなら――」


 青白い光が強く脈動した。


「オレが送ってやる。地獄に」


「ふざけるな! 何故、人間ごときに――!」


 レティーの叫びと同時に、暁門が呟く。


「兵器創造」


 右手に現れたのは、青白く輝く刀。

 柄を握った瞬間、空気が張り詰める。


「チッ……ここは一度引いて――」


 レティーが闇を纏い始めた、その瞬間。


 暁門は腰を落とし、静かに居合の構えを取る。


「――『終良全良』」


 世界が時を止めた。

 闇がざわめき、空間が軋む。


 そして。



「『満開』」



 青白い一本の線が、夜を切り裂いた。


 瞬きほどの一瞬。


 気がつけば、暁門はレティーの背後に立っていた。


「……え?」


 レティーの身体が、胴からゆっくりとずれ落ちる。


 断面から溢れた青白い光は、やがて柳の花のように舞い上がった。


「人間……ごときが……」


 その言葉を最後に、レティーの身体は黒い塵となり、溶けるように消えていく。





 ——静寂。


 暁門の握る刀が消える。


「……見てたか、爺さん」


 胸の奥にあった温もりが、静かに薄れていく。


 膝が折れ、視界が揺れた。

 そして、そのまま暁門は地面へと倒れ込んだ。


 青白い残光だけが、その場に残り——やがて、消えた。



ピッコマ様にてコミカライズ掲載中です。

良かったら見てください。


面白い、続きが読みたい!と思ってくれた方、⭐︎評価していただけると大変喜びます。


よろしくお願いします。

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