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天空聖戦 ドローン.ストライク  作者: シマリス
生まれ出ずる星、去り散り行く星。
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空(パラドス)の箱は巫女の手に渡る。04





ロイヤル三世、治世暦、四年【AB-04】







《シャンソニア領.マナトリア街道》







シャンソニアの連山から昇る暁の太陽が眩しく石畳のマナトリア街道を照らしている。




車輪を(きし)ませながら走る黒馬車。



四角い窓から見る景色は、いつの間にか、荒野から森林へと変化していた。





(((ヒヒヒヒーーーーン)))




シャーマンのラビが手綱を引き、馬車を緑葉城(マナトリア)の門前で停めた。



『姉上、着きましたよ。』



月読みの巫女は、魔剣サザンクロスを手に持ち、馬車を降りた。



『ラビよ、先を急ぐならば、行くがよい。』



『わたしは、ここで少し滞在してゆくつもりだ…』




『姉上、しばしのお別れでございます。』



そう言って シャーマンのラビは巫女に手を振り、馬に鞭を入れて馬車を走らせた。



ラビを見送った巫女は、門前に立ち魔剣サザンクロスを持つ手を高く(かざ)した。




朝日に光る剣の輝きに気が付いた門番兵士が、急ぎ大臣のコマターニャへ、知らせの伝令に走った。



『大臣!、門前に、月読みの巫女が来ております。』



コマターニャ大臣は、知らせを聞くと直ちに、王座の間へ駆け出した。




『こまったーにゃ!……こまったーにゃ!』




慌てた様子で入って来た大臣の姿に王座に座るドンデン王が声を掛けた。



『どうしたのじや。何をそう、慌てておるのじゃ…』



大臣は弾んだ息を静めて、ドンデン王に答えた。



『王様、月読みの巫女が門前に来ております。』



『我らの同盟破棄の(しらせ)が、早くもエマール王国に漏れたのではありますまいか!』



狼狽(うろた)えるコマターニャ大臣は、自分の後ろに視線を送るドンデン王に気付き、ゆっくりと振り向いた。




『ドンデン王様、お久し振りで、ございます。』




王座の間に立つ月読みの巫女に驚く大臣。



『いつの間に、来ておったのじゃ!』




月読みの巫女は、大臣を横目で(にら)み王座の前へ進み出た。




(かね)てより、王様が、欲しがっておられた品をお持ちしましたぞ。』




『国主の剣、サザンクロスにございます]




『お約束通り、(パラドス)の箱と引き換えにお渡しいたします。』




ドンデン王は、顔をしかめて、呟いた。




『サザンクロスは、喉から手が出るほど、欲しいが、なにぶん、(パラドス)の箱は、わしの持ち物ではない。』




『あれは、妃が、このシャンソニアへ嫁いだ折りに、持参したもの。』




『亡国、マナトリア王朝から引き継がれた宝物と聞いておる。』




月読みの巫女は王座の後ろにある朱色のカーテンの影に気配を感じていた。




『ドンデン王様、今が正に、好機でございますぞ。』




『このサザンクロスは、テラ大陸の長の証でございます。』




『属領の縛りを解き放ち、あなた様が新たな大陸の皇帝を名乗る時にございます。』




『エマール王国は、もとより、ロゴス帝国も、荒野デリアサスの戦いで疲弊し守りに入っております。』




『あなた様の、軍隊は高い科学兵器を備え、また兵士も無傷にて温存されておられるとのこと。』




『今こそ、ドンデン王様が皇帝として台頭する時代にございます!』




『漁夫の利を逃してはなりませぬ!』




朱色のカーテンに視線を移しドンデン王が震える声で呟いた。




『妃よ、わが、願い叶えてはくれぬか…』




カーテンの影から、(パラドス)の箱を手に持ち姿を現したサフラン妃。




『わたくしの、(あるじ)であり夫でもある王様の願い、叶えぬ訳には、いきますまい。』




サフラン妃はドンデン王に(パラドス)の箱を手渡した。




それを、上目遣いで見た、月読みの巫女は、王座の前に進み出て、国主の剣、サザンクロスを差し出した。




側近の大臣コマターニャが、これを受けとり王座の前にある円卓へと運んだ。



続けて、ドンデン王の手から(パラドス)の箱を受けとり月読みの巫女へ手渡した。




『流石、約束を違える事なき名君、ドンデン王様。』




『シャンソニアの未来は明るく、輝かしいものとなりましよう!』




月読みの巫女は(パラドス)の箱を抱え含み笑いをして、王座の間を後にした。




コマターニャ大臣が門前に馬車を用意して巫女を待っていた。




『巫女殿、最後に、ひとつ、お聞きしたい…』




『この大陸を納める王は、わが(あるじ)ドンデンに、相違ございませぬな。』




巫女は馬車に乗り込み、大臣の方を向いて質問に答えた。




『ドンデン王の後ろに、彼の女が付いておる限りシャンソニアには、誰も手出しはできないであろう。』




『彼の女とは、誰の事を言っておられるのか?』




((ビシッ))




巫女は、、馬に(むち)を入れた。




『わたしの口からは、申し上げられませぬな…』




走り出す巫女の馬車、その背中を見おくる大臣。




彼は、山裾を走るもう一台の馬車に目を止めた。




『あの金馬車は王妃様、御用達のはず……』




『誰が、走らせておるのやら…方角からして、あの先は……』




『桃源郷。』





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