第5話 やっと始まる最高の人生
すべての事件が解決した後、ミサロッタは侯爵家の領地で新しい生活を始めた。
王太子は王族としての能力を問われ、王位継承権を失った。
チェリーヌは虚偽の告発と証拠捏造の罪で裁かれ、人を惑わす力を二度と使えないよう独房に入れられた。
王妃の派閥も解体され、侯爵家を利用しようとした貴族たちは、それぞれの罪を問われることになった。
一方、セレアは聖女としての役目を果たしつつ、休日にはミサロッタと一緒にお茶を楽しんだり、おしゃべりしたりと自分らしい人生を歩み始めている。
二人は、もう物語に縛られることなく、自分たちの意思で未来を選べるようになったのだ。
そして、ミサロッタにはもう一つ、どうしても叶えたい夢があった。
それはもちろん、チョコモナカチャンピオンの再現である。
彼女は侯爵家の料理人たちを集め、チョコレートとアイスクリーム、香ばしいモナカの開発に取り組んだ。
温度管理には魔法を利用し、保存には氷属性魔法を応用する。
試行錯誤を重ねた末、ついに完成した。
サクッ。
モナカが心地よい音を立てる。
パリッ。
チョコレートがパリッと割れる。
冷たく甘いバニラアイスが、口の中でゆっくりと溶けていく。
「これよ……! 私が食べたかったのはぁぁ」
ミサロッタは一口食べて、涙を流した。
セレアも一口食べ、目を輝かせた。
「……これ、懐かしい。私も大好きで、よく食べてた味だわ!」
二人は夢中で食べ続けた。
そして、この菓子は王都でも売り出すこととなった。
侯爵家は菓子の製造と販売を手がける商会を設立。
その人気は爆発的に高まり、商会は王国有数の大企業へと成長していった。
ミサロッタは莫大な財産を手に入れ、孤児院や医療施設を支援し、領地の発展にも力を注いだ。
彼女が作った菓子は、やがて王国の名産品となる。
一方、王太子はその人気を聞きつけ、ミサロッタに復縁を申し込んできた。
しかし、返ってきたのは、たった一枚の手紙だった。
『お断りいたします。なお、当家の菓子は予約制となっておりますので、ご購入をご希望の場合は商会を通じてお申し込みくださいませ』
王太子は愕然とした。
かつて自分が断罪した悪役令嬢が、今や王国中の人々に愛されている。
その事実を、彼は受け入れるしかなかった。
ミサロッタは手紙を暖炉に放り込み、満足げに微笑んだ。
「さあ、明日は何を作ろうかしら?」
「あなた、もう少し恋愛に興味を持ったら?」
セレアが呆れたように言う。
ミサロッタは胸を張った。
「嫌よ。チョコモナカチャンピオン以上に愛するものができそうにないわ」
二人は顔を見合わせ、笑った。
こうして、悪役令嬢と聖女は、与えられた物語の筋書きを打ち破り、自分たちの人生を手に入れた。
そして、あの菓子は、王国の経済を支えるほどの一大産業へと成長していく。
恋愛より自由。
運命より友情。
そして、どんな世界に転生しても、チョコモナカチャンピオンは譲れない。
それが、元悪役令嬢ミサロッタと聖女セレアの紡いでいく新しい物語だ。




