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零の回顧録 〜零の魔術師〜  作者: 朔夜 百舌
第一章 零の魔術師の非日常
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第八話 噂話

 レイは今日も学院内の調査を始めた。真っ先に学院の裏手へと向かったが、何の手がかりも見つからなかった。正直ここばかり調べていても時間の無駄だ。そう思い別の場所へ移動しようとしていたその時、

「あなたは確か、レイ・ワーグナーでしたよね」

 突然声をかけられた。振り返るとウィズリー先生が立っていた。

「こ、こんにちは」

「こんな時間にどうしたんですか?」

「えっとぉ、少し道に迷ってしまって…」

 咄嗟に言い訳した。さすがに調査だとは言えない。

「そうでしたか。確かあなたは編入生でしたよね。はじめは慣れませんよね。ちなみにどこへ行く予定だったんですか?」

「えっとぉ…図書館です」

「図書館ならこのまままっすぐ行って、右に曲がればすぐですよ」

「あ、ありがとうございます」

 調査していることがばれないか、終始冷や汗をかいていた。しかしばれた様子はなかったらしい。それにしても、教員に名前を覚えられているとは。あまり名前を覚えてもらえることのないレイにとっては、素直に嬉しかった。

 自室に戻ったレイはコーヒーを淹れた。コーヒーはレイにとって数少ない楽しみの一つだ。もちろんブラックである。甘いものはあまり得意ではない。コーヒーをちびちびと飲みながら、今日の成果をまとめた。今日もどっと疲れた。授業では炎属性魔法が使えるということにした。今後はほかの魔法は控えるべきだろう。

「にしてもウィズリー先生に名前を覚えてもらってたなんて、嬉しいな」

 まだ悦に浸っていた。


 数日後、レイはいつも通りエリナに連れられて昼食をとっていた。

「そろそろ学院にも慣れてきたころじゃない?」

「そうだね。やっと迷子にもならなくなってきたよ」

「なにそれ」

 エリナはくすくすと笑った。

「そういえば知ってる?最近図書館のあたりで、なんか変な感じがするって言ってた子がいたんだけど」

「変な感じ?」

「うん、なんか方向感覚がおかしくなったとか、気分が悪くなったとか。まあ噂程度の話なんだけどね」

「そっか」

「気にしすぎかしらね。私はそんな感じしなかったけど」

 エリナはそう言ってサラダをほおばった。

 そんな他愛のない会話をしていたその時、レイはふと気がついた。

(もしや…)

 レイはしばらく黙り込んだ。



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