間章 第二話 起源魔法
ルーネン王国東部に位置するノルトレン伯爵領は、ルーネン王国の中でも広大な領地だ。周辺には巨大な山脈が連なり、そこには多くの魔獣が生息している。そのためノルトレン伯爵領では魔獣災害が頻繁に起こっており、領地を守る騎士たちは精鋭ぞろいで知られていた。
しかし今回は違った。
「誰か!こっちの救援はまだか!」
「どこもかしこも魔獣だらけで手いっぱいだ。こっちはこっちで何とかするしかない!」
「誰かー!助けてえええ!」
街中に悲鳴と兵士たちの怒号が飛び交っていた。今回の魔獣災害は過去100年に類を見ない規模だった。熊型、犬型、鳥型と様々な魔獣が100体以上押し寄せ、街は阿鼻叫喚の様相を呈していた。
そして最悪なことに、13体の飛竜まで姿を現したのだ。
飛竜は魔獣とは一線を画す存在だ。魔獣が凶暴な野生動物に過ぎないのに対し、飛竜は魔法を行使する。さらに分厚い鱗に覆われているため、物理攻撃はもちろん魔法の効きも悪い。飛竜一体を倒すのに騎士が最低20人は必要とされている。それが13体ともなれば、もはや壊滅的な災害だ。
「終わりだ…もうこの街は持たない」
人々が絶望を口にするその時、一つの朗報が舞い降りた。アハトマギアの一人が派遣されたとのこと。その名は零の魔術師。
「早く終わらせて帰らないと間に合わないよな」
レイは独り言のようにそう呟くと、身の丈ほどもある豪華な杖を街へと向けた。
心の中で静かに言葉を紡ぐ。
《第一起源魔法》
途端、街の上空に巨大な魔法陣が展開された。
《炎帝の鉾》
刹那。
無数の炎の槍が空から降り注いだ。それは正確に、そして無慈悲に、魔獣たちの頭を次々と貫いていく。一瞬の出来事だった。100を超える魔獣と13体の飛竜が、瞬く間に絶命した。
「た、助かった…のか?」
「救世主だ!救世主がやってきた!」
人々は口々に安堵の声を上げた。
ノルトレン伯爵領は、たった一人の魔術師によって、一瞬にして救われたのであった。




