九、油断が招いた死
食事の準備ができたので、家豪は白竜を呼びに来ていた。
そこにはうずくまって、泣いている白竜がいた。
(まさか・・・)
家豪は白竜に近づき声をかけた。
白竜は泣きながらも文を家豪に渡した。その文は白竜の涙で濡れていた。
家豪は文を見て後宮で何が起こったのか理解した。自分の父が生きていることにどこか安心していた。
(濤と琳琅に両親の死をどう伝えるべきだろうか・・・)
家豪は泣いている白竜の隣で、しばらくの間考え続けていた。
家軍と志偉の暗軍たちは高瑾の件に関わった者たちの家族を皆殺しにしていた。
本来、白き姫の存在は知られてはいけない機密事項である。誰に話したかわからない今、関係者の口を封じる必要があった。
(しかし、皇太子殿下の軍の者は何者だ。下手したら軍部より強いぞ)
将軍の家軍でさえ、志偉の軍に圧倒されていた。
ようやく後宮での悲劇が終わりを迎えようとしていた。
家豪と白竜が部屋に戻ると、濤と琳琅が食事に手をつけずに待っていた。
「家豪様、竜。お二人がお腹空かせていますよ。どうぞ、座ってください」
静宜が食事を並べながら二人を促していた。しかし、二人の様子を見て、剛泰と高瑾の身に何か起こったのだろうと察した。
「家豪様、旦那様と奥様に何かあったのでしょうか?」
静宜の口調は落ち着いていたが、声は震えていた。
「家豪、覚悟はできている。包み隠さず全て話せ」
濤は隣にいる琳琅の手を握りしめて、頷いた。
「わかった・・・」
家豪は文に書かれてあったことをそのまま二人に話した。
濤は泣きじゃくる琳琅を抱きしめ、必死に涙をこらえてた。
静宜は膝をつき、手で顔を覆い泣いていた。
「皇太子殿下が二人の遺体は保管して、楊家に送り届けてくださるそうだ」
「わかった・・・。今すぐ戻りたいが、今は後始末の真っ最中であろう。明日、ここを出発しよう」
濤は琳琅を見ながら決意していた。
(琳琅を守れるのは兄の私だけだ。自分の人生を犠牲にしてでも琳琅を守ろう。母上との約束だ)
濤はさらに強く琳琅を抱きしめた。
◇◇◇二年後◇◇◇
「おめでとうございます、劉将軍」
劉家は祝福の声や笑い声で盛り上がっていた。
「お相手は楊尚書の妹だとか。妹がいることも知らなかったですよ」
家軍は来客の対応に追われていた。
「どうだ?準備は順調か?」
「兄上、入ってきてはだめですよ」
花嫁衣裳に身を包んだ琳琅を濤は見に来ていた。
「家豪にはもったいないな。本当に美しい。婚姻解消するか?」
琳琅は苦笑いしながら、冗談はやめてと返した。琳琅につられて静宜も笑っていた。
琳琅は濤の方に体を向け、
「兄上、父上と母上が亡くなってから私を育ててくれてありがとうございます。私は知っています。兄上が自分を犠牲にしてでも、私のことを優先してくれていたことを。本当に感謝しています。兄上の妹であることを誇りに思います」
濤は琳琅の言葉を聞き、涙が溢れ、顔が濡れていた。
琳琅は微笑みながら、手布を渡した。
それから立ち上がり、濤を抱きしめた。
「今度は兄上が幸せになる番ですよ」
「あぁ・・」
静宜は二人が立派に育った姿を見て、涙を流しながら、空を見ていた。
「劉将軍、良い婚礼だったな」
「皇上、劉家の婚礼に参加してくださり身に余る光栄でございました」
家軍は皇帝趙志偉のところに婚礼時のお礼に来ていた。
二年前まではどこか子供っぽいところがあった志偉も今では立派な皇帝だ。
「ところで、志明様はお元気ですか?」
「あぁ、元気にしているみたいだ。町の暮らしにも慣れ、すっかり平民になってしまったよ。どうやら気になる女もいるようだ。偽名も変わっていてな。"如墨"と名乗っている」
家軍は首をかしげていた。
「志明にとっては意味のある名前なのだろう。女を連れてくる日もそう遠くないかもな」
二人は和やかな雰囲気で会話を続けていた。
家軍は部屋を出て軍部に行こうとしていた。
ここにいるはずのない人物が廊下の角を曲がるところを見かけた。
(なぜあの人がここにいるのだ?)
家軍は後を追っていった。
家軍が追った人物は周りを警戒しながら部屋に入って行った。
(あの部屋はたしか・・・)
その瞬間、頭を鈍器のようなもので殴られる鈍い音がした。
(誰だ!油断していた!)
家軍は殴られた頭を押さえながら振り返った。その瞬間もう一度殴られた。
(なぜ・・・あの人が・・・)
家軍はそのまま力尽きてしまった。
(もう少しで気づかれるとこだったわ・・・)




