七、娘である証
後宮に戻った日の夜、皇帝と劉家豪は二人だけでお酒を飲んでいた。
この夜は満月であり、月明かりが二人を照らしている。
いつもならば、会話が弾み、普段一切笑わない家豪の大きな笑い声が響き渡る。
二人でお酒を飲むときだけは、皇帝と将軍という立場を忘れ、昔のような友の関係に戻るのである。
しかしこの日は違った。
家豪はお酒を手に持っているが一切口つけず、深刻な顔をし、うつむいている。
しばらく沈黙が続いていたが、皇帝が口を開いた。
「家豪、あの町で何を見たのだ。目の前に槍が飛んできても、眉一つ動かさないお前が、あれだけ驚いた顔をするとは」
将軍劉家豪と言えば、顔を見れば、敵国の将軍も戦わずに逃げてしまうほど恐れられている、最強の大将軍である。
今の皇帝が即位してすぐ、領土奪還に貢献したのも家豪である。当時はまだ齢十六だったにもかかわらず、 敵を次々と降伏させた。その時から向かうところ敵なしだった。その将軍が恐れるものなどあるだろうか。
ようやく家豪が重い口を開いた。
「皇上、実は・・・」
家豪はまた黙ったが、皇帝は家豪が口を開くまで待った。
「皇上、十五年前にさらわれた、娘の雪華を見つけたかもしれません」
あまりにも衝撃的な告白に、皇帝は飲もうとしていたお酒をこぼしてしまった。
それは本当なのかという皇帝の問いかけに、あれは娘で間違いありませんとはっきり答えた。
しかし、顔を見たわけではないという。
では、なぜわかったのだと言いかけた時、皇帝にも、なぜ家豪が自分の娘だとわかったのか思い当たる節があった。
「家豪、まさかその娘は・・・」
「皇上が考えている通りです。私の娘、雪華は、私の妻、琳琅と同じで髪が白髪です」
媛おばさん、帰ったぞと勇敢の元気な声が小蘭の家に響き渡る。
小蘭の家は来蘭亭の反対側にある。店から入っても家に入れるが、家用の入口もある。
奥から早かったわねと言いながら、母がやってきた。母は布なんか巻いてどうしたのと言って、私の頭から布をとった。一瞬で、母の顔が硬直した。
私の髪が白髪に戻っていたからだ。
母が何か言おうとした時、勇敢が横から、
「行ってる途中に雨降ってきて、でも媛おばさん、大丈夫だよ、誰にも見られてないから安心して」
と私の代わりに言ってくれた。
母は、勇敢がそういうならとすんなり受け入れた。勇敢がなぜそこまで母に信頼されているのか謎だ。
勇敢はそれより聞いてよと言って、私が、十八になったら俺に嫁ぐって言ってくれたと母に伝えていた。事実が捻じ曲げられている。訂正するのも面倒だから放っておいたら、二人で盛り上がっており、母が勇敢の応援をしていた。
小蘭は怪訝な顔で二人を見つめていた。




