二十一、合流
万昌を先頭に翰、月亮、賢建は雪華の救出のため全力で馬で駆け抜けていた。
「兄上、兄上の護衛はついてこなくてよろしいのですか?」
「えっ?翰がいるから大丈夫だろ」
賢建は、何を今さら言っているんだという顔をしていたが、月亮は護衛の心配をしていた。
護衛は基本、皇子たちと共に行動をする必要がある。護衛の職務を怠ると皇帝からの叱責がある。
賢建は昔から自由奔放なところがあり、何人もの護衛が痛い目にあってきている。
(今回も父上から叱責されるのだろうな)
月亮は兄の護衛の者を憐れんでいた。
月亮は先頭を走っている男のことがずっと気になっていた。
「翰、あいつは誰だ?」
「殿下はお会いしたことなかったですね。羅国一の富豪、万家の嫡男、万昌ですよ」
「万家か・・・。なぜ、万家の者が雪華の行先を知っているんだ」
「それは・・・わかりませんが、少なくとも雪華と関りがあったのでしょう」
翰は万昌が劉家の屋敷をうろついていた件を父より聞いた時から、雪華と接触してくることの予想はついていた。しかし、昔から知っているため危害を加える男ではないことは理解していた。
(おそらく万昌は・・・)
四人は後ろから馬の駆ける音が近づいていることに気づいた。
「万昌、後ろから誰か来ています。一旦止まりましょう」
遠くから叫ぶ声が聞こえてきた。
「兄上にも伝わるように手配していますが、それにしては早すぎますね」
四人は一応、いつでも戦える準備をしていた。
「翰兄ー」
後ろから追いかけてきてたのは忠だった。
「忠?」
翰は忠に向って走り出した。
「忠、どうしたのですか?なぜここに?」
「翰兄、雪華に何かあったんだよね?」
「なぜそれを・・・。なるほど」
翰は雪華の誕辰の時に首にかけていた笛のことを思い出した。
「忠、雪華のいる方向がわかりますか?」
「こっちだよ」
忠は北西の方向を指でさした。四人が進んでいた方角は真北だったため少しずれていた。
忠も四人に合流した。
(・・・どうしてここにいるんだ)
万昌は地図を広げ、説明しはじめた。
「私たちが今向かっているのが山北というところです。なぜ私が敵の潜伏先を知っているのかは、また後で話します。今は私を信じてください。それで、いくつかここへ行く経路があるのですが、どうやら、雪華お嬢様を連れ去ったやつらは私でもわからない道を行っているようです。金で雇われているだけのやつらです。やつらはお嬢様に危害を加えるかもしれません。どうすれば・・・」
翰は忠の背中を叩いた。忠は痛がりながらもやる気に満ちた表情をしていた。
翰は目を見開き、皆の顔を見て、話しはじめた。
「私、忠、四殿下は雪華の行方を追います。忠には雪華のいる場所が正確にわかりますから。万昌は三殿下とおそらくもうすぐ兄上が合流するので兄上も一緒に。万昌、頼みます」
翰と万昌はお互いの顔を見て頷いた。
「翰兄、毅兄の馬の音がする」
皆は耳を澄ましたが何も聞こえなかった。皆が不思議な顔をしている中、翰だけが忠の言葉を確信していた。
翰たちは先に雪華の行方を追った。
翰たちが去って、そんなに経たないうちに毅がやってきた。
万昌と賢建は忠が言っていた通りだったので、顔を見合わせながら驚いていた。
毅は二人がなぜ驚いているのか理解できなかった。
(それにしてもこの二人に私を同行させるとは。これは貸しにするぞ、翰)
「三殿下と万昌だったでしょうか?父上が待っているはずです。急ぎましょう」
再び、万昌を先頭に馬で駆けだした。




