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あの日拾った花は 触れてはならない華だった  作者: 日昇
第三章 争奪編

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九、消えた俊智

後宮では宦官たちが慌ただしく動いていた。

月亮(ユエリャン)賢建(シェンジェン)はその状況を横目で見ながら、皇帝の元へ向かっていた。

(嫌な予感がする。まさか、兄上が?)

月亮の予感は当たっていた。




「兄上が消えた?」

月亮と賢建は思わず大声が出てしまった。

俊智(ジュンチー)は後宮の外にある離宮に隔離されていた。

部屋の外には皇帝直属の護衛が二人見張っており、常に目を光らせていた。

部屋には鍵がかけられており、出入りするたびに必ず鍵をかけていて、護衛たちもその度に確認していた。

昨夜、食事を届けた者が俊智の姿を確認した。しかし、今朝、いつものように食事を届けに行ったところ、俊智の姿はなかったという。


「おそらく手を貸したのは李美華(リメイファ)だろう。俊智一人では逃げ出すことはできない。足取りを追っているが全くつかめていない。二人とも十分注意しろ。何かあったらすぐ報告するように」

月亮は自分のことよりも雪華(シュエファ)のことが心配だった。

「父上、その、雪華は・・・」

皇帝は笑みを浮かべながら、

「月亮、安心しろ。真っ先に伝えてある。(ハン)に伝えたら、お前の護衛を放棄して行ったぞ」

と翰の行動に少し呆れているようだった。

(翰が行っているなら安心だな。しかし、主を放置するのもどうなのか)

月亮は物悲しい気持ちになっていた。




「お嬢様、翰様からもらった櫛、すごく梳きやすいですよ」

雪華は冰夏(ビンシャー)に髪を梳いてもらいながら、楊濤(ヤンタオ)からもらった(ルオ)国の歴史書をひたすら読んでいた。

読んでいくうちに、ふと疑問に思うことがあった。

「何でこの皇后様は名前しか書かれてないのだろう?」

冰夏も雪華の読んでいる書物に目を通した。

「確かに所々名前しか書かれていない皇后様がいますね。他の皇后さまは"高貴な生まれの何々家"とか"何々を広めた"とか細かく書かれてあるのに、この方とか名前すら書かれてないですよ」

(どういうことなのかな。書けない?書いてはいけない・・・知られてはいけない?)

雪華が考え込んでいると、冰夏が月亮からもらった簪をつけようとした。

「冰夏、それはつけないで」

「どうしてですか?お嬢様のために贈られた物なのに」

「それは、その・・・大事な日とかにつけたいから・・・」

少し照れながら言う雪華を愛おしく感じ、冰夏は思い切り後ろから抱きしめた。

「冰夏、ぐるじい」

冰夏は雪華の頬に自分の頬を擦りつけ愛情表現を表していた。 

なにやら雪華の部屋に向ってけたたましい足音が近づいていた。


「雪華ー」

(この声は!)

咄嗟に防御態勢をとったが遅かった。

翰が戸を開け、雪華に抱きついてきた。

「翰兄様、どうしたのですか」

雪華は翰に尋ねながら、引き離そうと必死になっていた。

「雪華、大丈夫ですか。何も変わったことはないですか」

雪華は何のことだかさっぱりわからずにいた。

「もしかしてまだ聞いていないのですか。第一皇子の俊智が姿を消したのです」

雪華は俊智の名前を聞いてなぜか身の危険を感じた。


「なんだ、翰も来ていたのか」

雪華の部屋の戸の前には家豪(ジャーハオ)も駆けつけたいた。

「翰、雪華のことは任せて、後宮に帰れ。どうせお前のことだ。第四皇子に断りもせずに来たのだろう」

どうやら図星だったようで、名残惜しそうに雪華を見ながら、戻って行った。

さすがの翰も父親には逆らえなかった。

家豪は去って行く翰見ながらため息をつき、困った息子だと言わんばかりの顔をしていた。

「雪華、翰から聞いたと思うが第一皇子が姿を消した。お前に接触してくる可能性が高い。護衛の数は増やしている。なるべく部屋を出るな」

(そう言われても最近部屋にしかいないような・・・。以前みたいに襲われても嫌だし、大人しく歴史書を読むか)

冰夏、頼むぞと言って家豪は部屋を出て、護衛の者たちに活を入れてた。

雪華はため息をつきながら、再び歴史書の目を通していた。




「お嬢様、厠に行ってきますね」

「ごゆっくり」

雪華は寝っ転がりながら歴史書を読んでいた。

「ガタッ」

天井から物音がし、雪華は見ていた歴史書を顔からずらし天井を見た。

雪華が見た天井にはありえない光景が広がっていた。

なんと天井に男がへばりついていた。

雪華が叫ぼうとすると、男は天井からおりて、雪華の口を手で塞いだ。

男は雪華に覆いかぶさっており、身動き一つできなかった。

「声を出すな」

口を塞いでいる男は雪華の見覚えのある顔だった。

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