二十、暗号の意味と雪華の危機
「父上、どうしたのですか。僕、もう寝ようと思っていたのに・・・」
眠い目をこすりながら、忠は家豪の部屋に来ていた。
そこには毅もいた。
「忠、すまない。何恩が怪しい者を見かけてな。そいつがこれを落としていったらしい。私にはわからん」
家豪から渡された紙を毅と忠は見た。
「父上、これは暗号ですか?難しいですね。こういうのは翰だとすぐわかるのですが」
「翰は第四皇子の準備があるだろうし、明日会うだろう。最悪わからなかったらその時、聞けばよい」
毅も顎に手を当てながら必死に考えていた。
忠は暗号がわかったのだろう、はじめは得意げな顔をしていたが、意味を理解したのか深刻な顔に変わった。
「父上、明日雪華を狩りに同行させるのはやめましょう」
「忠、何かわかったのか」
忠が暗号の解読の説明をはじめた。
「父上、毅兄、これは同じ発音でも声調が異なる言葉を表してます。それに当てはめて、意味が理解できる言葉に変換すると・・・」
「血は雪、花は華で・・・。これが答えです」
『雪 華/ 狩/ 攫/ 符 号/ 烟 火』
「つまり、雪華を狩りの時に攫う。合図は花火。」
「ようやく動き始めたようだな。わざわざ暗号にしたのは落として見つかってもわからないようにしたのだろう。毅、忠、計画を練り直すぞ」
忠は自分で解読したがどこか腑に落ちない点があった。
(この"火"だけはなぜそのままなのだろう。どうも引っかかるな)
「忠、どうした?」
「いえ、何も」
忠が家豪に暗号の紙を渡した時、微かに柑橘の香りがした。
「忠、柑橘のものを食べたのか」
「食べてませんよ。ん?」
忠は暗号の紙をくんくんと嗅いでみた。
「父上、香りはこの紙ですよ」
(なんか意味があるのか?逃げた者が柑橘を食べたのか?まぁ、暗号とは関係ないだろ)
三人は遅くまで雪華を守るための対策を話し合っていた。
「忠、白狼、白竜、雪華を頼むぞ」
家豪たちが昨夜話し合った結果、雪華を劉家に残していくことに決めた。
馬車には琳琅と雪華のふりをした侍女の冰夏が乗っていた。
雪華が馬車にいるふりをするため、あえて劉家の警備を手薄にした。
家豪は忠に雪華を任せることにした。家豪は忠が"無能な三男"と言われていることも知っていた。
実際、剣の腕は毅と翰に比べたら劣っていた。しかし、忠には目には見えない強さを感じていた。いざという時は妹の雪華を守ってくれると確信していた。
雪華は見送ることもできず部屋の中にいた。
部屋の外には、白狼と白竜が鬼のような形相で誰もいない屋敷の庭に睨みを利かせていた。
忠は庭をうろつきながら木刀を振っていた。
(暇だ・・・。冰夏でもいれば話し相手になったのに。厠に行くか)
雪華が厠の方へ歩いていたら、後ろから白狼と白竜が怖い顔で周りを見渡しながらついてきていた。
雪華は後ろを振り返り、
「あの、さすがに厠の前におられると出るものも出ませんので・・・」
二人は、失礼いたしましたと厠が見えない場所に移動して、何かあったら声をかけてくださいと言っていた。
(しかし、私は何者なのだろうか。母上はいつになったら教えてくれるのだろう・・・)
用を足し終わり、厠を出た瞬間、背後に動けないほどの圧を感じた。
「劉雪華だな。声を出すな。殺しはしない。ただ、下手なことしたら、足の一本でも折らせてもらうぞ」
雪華は口を塞がれ、屋敷の裏手の方へ連れて行かれた。雪華ははじめて恐怖を感じた。本当に怖い時は声も出ないのだと実感していた。




