十九、謎の暗号
家豪が見たものはどれもこれも第一皇子俊智を次の皇帝へと嘆願するものばかりだった。
おまけにその中には第四皇子月亮の許嫁を俊智に嫁がせるべきだともある。
月亮と雪華の婚姻の件はまだ公にはされていないはずだ。
「この内容の上奏が多数見つかってな。しかもこれらすべて、俊智がいた北の地方からだ。あからさまに俊智が言わせているようなものだろ。何がしたいのだ。皇上が許すわけなかろう」
「間違いなく俊智が仕組んでいます。義兄上が言うように意図がわかりません。しかし、目的がわからない以上、雪華の周りを警戒するしかないようです」
二人はあれこれと俊智の目的を考えていたが答えが出なかった。
「近々皇上が催す狩りがある。おそらく今回は雪華も同行になるかと。皇族もそろって参加する。注意を怠るな」
「義兄上、ありがとうございます」
楊濤は雪華の言葉を思い出し、
「家豪、いずれ父上と母上の話もしないといけないな。十五の娘には酷な話だ。しかし、話さない訳にもいかぬ。琳琅が頃合いを見て話すだろう。あの時の琳琅は今の雪華より子供だったからな」
二人は当時のことを思い出したのか悲しげで悔しい表情をしていた。
「父上、母上、何の準備をしているのですか?」
家豪と琳琅は朝から服や弓などを用意していた。
「雪華、明日は皇上が催す狩りがある。皇族の皇子たちも皆参加する。私たちもだ。雪華も同行だぞ。さすがに狩りをさせるわけにはいかないから琳琅と一緒に見てろ。この時期の鹿は美味いぞ。明日の夜はご馳走になるな」
雪華はご馳走よりも皇子たちが参加するほうが気がかりだった。
家豪は雪華の様子から察した。
「雪華、心配するな。今回は皇子たちと一緒になることはない。安心しろ」
雪華はその言葉を聞いてどこかほっとした。
「第一皇子とは関わらないでほしいが、第四皇子とは仲良くならないとな」
雪華は目を逸らし苦笑いをしていた。
その夜、家豪は、毅、翰、忠を呼び出し狩りの時の行動と役割を確認していた。
「いいか、予定通り行く。毅は雪華から離れるな。翰は第四皇子の護衛をしながら第一皇子の動きも見張れ。忠は屋敷に残り何か仕掛けられないか見張れ。何もないかもしれないが用心に越したことはない。頼りにしてるぞ」
三人は力強く頷いた。
「皇上も第一皇子を警戒している。おそらく雪華に関係することだろう」
「父上、第一皇子を捕らえられないのですか?本当は知ってはいけないことを知っているのでしょう」
忠の意見に翰が呆れながら答えた。
「忠、皇族は簡単に捕まえることはできませんよ。まして、秘密を知っているとはいえ今は何も手を出していないのですし。今の段階では何の罪も犯してませんから。私からしたら、雪華に近づいたことが罪ですが」
雪華のこととなると、第一皇子と言えど本気で殺しそうな翰に忠は別の意味での恐怖を感じた。
家豪というと、今まで女に全く興味を示さず、第四皇子の護衛のため宦官になってもよいと言っていた翰がここまで妹に執着する姿を見て将来が心配になっていた。
翰は第四皇子の準備があるため劉家を出ていった。
毅と忠も明日の準備のためそれぞれの部屋に戻っていった。
家豪が一息つこうとした時だった。
何恩が走って家豪の部屋まで来ていた。
「何恩どうした?」
「旦那様、先程、門の近くに怪しい者がいましたので、声をかけたところ、逃走しました。その男はこんな紙を落としていきました。ですが、何が書かれているのかさっぱりわかりません」
その紙にはこのように書いてあった。
『血 花/ 守/ 覚/ 福 好/ 言 火』
家豪はしばらくの間この暗号らしきものとにらめっこしていた。
(翰を呼び戻すか・・・あいつならすぐわかるだろう。しかし、第四皇子の準備も大変だしな。とりあえず、毅と忠を呼ぶか)
家豪は毅と忠を部屋に呼び戻した。




